魔王を倒して還ってきたら、ヒャッハ―な世界に変わってました(涙)

梅田遼介

文字の大きさ
上 下
1 / 21

1話

しおりを挟む
「……大丈夫かっ?!」

「これしき、なんともないわい」

 魔王の宮殿、玉座の間。
 俺たちは魔王ベリフィスと最後の戦いをしている最中だ。
 部屋中をもうもうと覆っていた土煙が次第に晴れてくる。
 俺の声に髭面で頑強なドワーフのジムドが応えた。
 相変わらずの頑固そうな声に安心する。


対魔法障壁アンチマジックシールドが間に合いました。あと一息です」

 顔立ちが美しく美脚な女エルフのミレイナも返事を返す。
 クールでそっけないが、実は心の奥底に熱い思いを秘めていることを知っている。
 ミレイナのお陰で魔王が放った爆炎魔法にみんな耐えることが出来たようだ。
 俺たちも傷ついているが魔王も満身創痍、もはや体力も残っていないはず。
 決着がつくまであと少しだ。

「フェリシア、行けるな?」

「はい、コウヘイ」

 俺は背後のフェリシア姫に声を掛け、フェリシアはそれに頷いた。
 パーティーで回復魔法を担当する大人しげで爆乳な彼女はこの国の麗しき王女。
 穏やかな性格で高貴な身分にかかわらず、ここまでよく耐えてくれている。

「ボクも大丈夫だよ?」

 俺の横でパタパタと羽を動かして浮かんでいる小さなドラゴンのバルサもいる。
 そうだ、みんなで力を合わせて魔王を倒すぞ!

「よし、止めを刺す。みんな、時間を稼いでくれ!」

「おうさ」「はい」「いいよ?」「お任せください」

 フェリシアが『聖加護ホーリー』の呪文で皆を包む。
 ジムドが大槌で『地響き』のスキルを発動して魔王の移動を阻害する。
 ミレイナは『精霊の戒め』で攻撃を封じ、バルサは灼熱のブレスを放った。

『魔破斬』――

 俺は聖剣を天に掲げて究極スキルを発動する。
 周囲から大量のエーテルが流れ込んでくるのを感じる。
 全身にみなぎるパワーを聖剣に流し込む。
 その力が最大限に高まったところで、俺は身動きを封じられている魔王の懐へ一直線に飛び込んだ。

 ――ザバアッ!!

 俺の剣は見事に魔王を捉え、魔力の乗った聖剣が魔王を袈裟懸けに斬り捨てる。

「おのれ、おのれ……勇者め。あと一歩で……我が野望……だが……このままで……憶えていろ……いつか……必ず……」

 魔王ベリフィスは苦しみ、倒れた。
 俺たちは魔王を倒し、今まさにこの国に平和が訪れたのだ。




 
「……行ってしまうのですね、コウヘイ」

「ごめん、俺には帰る世界があるんだ」

「そうですね、分かっていた事です。でも……」

 王女のフェリシアは涙を隠すように顔を伏せた。
 俺はそれに気付いていながら敢えて何も言わなかった。
 王女の後ろでドワーフのジムドは仏頂面でそっぽを向いている。
 その横で女エルフのミレイナは静かに俺を見つめていた。

「そろそろ時間だ。さよなら、フェリシア、みんな。アレを上手く使ってくれたら嬉しい」

「コウヘイ、ありがとう。アナタのお陰でこの世界は救われました。私はアナタを――」

 フェリシアは顔を上げ、俺に向かって手を伸ばす。
 俺は光に包まれた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...