最弱な奴が実は最強?

レン

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余裕

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 俺はネメシスを追っていた。
 ネメシスは奈津を殺した後、すぐにその場を立ち去ったからだ。
 階段を登り重厚感のある扉を押し開くと屋上に出た。         
 そしてそこにはネメシスがいた。
「ここにいたのか」
 俺はネメシスに言った。
 するとネメシスは余裕のある表情で答えた。
「ここは私が一番好きな場所です。夜空が綺麗でしょう?」
 確かに。見上げるとそこには満天の星空が広がっていた。これから始まる事にはあまりにも似つかわしくなかった。
「それにしても貴方の中で何があったのですか?」
「何だ?変なこと聞くな。」
 正直に言うと私は驚いている。目の前の男の変化に。
 外見な先ほどと変わりはない。ただ「何かが変わってる」と言う確証だけがあるのだ。
 殺意は感じるのだが先程感じた燃え盛る炎のような 殺意ではない。
 冷静を保ちつつもその心は激しい闘争心を宿していた・・・。
「雑談はこれくらいにして始めますか?」
「そうだな・・・。」
 俺は持ってきていたナイフを構えた。ネメシスも戦闘準備をしていた。
 最初に飛び込んできたのはネメシスだった。
 多分、先程の攻防で俺に勝てると確信しているのだろう。
 確かに負けるかもしれない。力の差があった。けどそれはさっきまでの話だ。
 俺はネメシスの拳を難なく受け止めた。そして持っていたナイフでネメシスの顔面めがけて突きを繰り出した。
 腕を振り解かれ距離を取られた。
「女の顔に傷をつけるなんて最低ですね。」
 ネメシスの頬が少し切れてそこから血が垂れていた。
「それにしても予想外です。先程までとは比べ物にならないほど速くなりましたね。」
「仕方ない。私も能力を使いましょう。」
 するとネメシスの体が宙に浮いた。
「私の能力は『顕現させる能力』です。」
「そうですね。例えば『剣山』なんてどうでしょう?」
 次の瞬間、俺の足元から大量の剣が出現した。
「くっ・・・。」
 致命傷は免れたものの所々、切られてしまったが気にするようなことでもない。
 なるほど。そう言うことか。言葉通り口にしたものを顕現させているのだ。
「次は『雷電』と『火炎』。」
 その言葉を放ったと同時に空に暗雲が立ち込め雷が降り注いできた。
 そして俺の周りには炎が燃え上がる。
 それを俺は造作もなく避けた。先程は喰らってしまったが来ると分かっていれば避けるのは容易い。
 にしても手を抜いているな。ネメシスほどの奴ならこれ以上の数のものを一度に顕現できるはずだ。
 それをしないと言うことは様子見でもしているのだろう。
「さて。様子見は終わりました。本気でいきます。」
「『炎剣』と『雷剣』。」
 ネメシスの手に炎と雷を纏いし二つの剣が現れた。
 見たところ直に当たるのはやばそうだ。即死とまでは行かなくとも致命傷を負わされることだろう。
 でもそんな危機的状況に陥っていても依然として俺の心には余裕があったのだった。
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