最弱な奴が実は最強？

行方

　ネメシスと名乗る女がテレビ局をジャックしカメラを前に宣言をしてからもう二週間が経つが今のところ何の音沙汰もない。
　今、学校にいるのだが登校している時も街の状況は平和そのものであった。
　嵐の前の静けさとはこのことを言うのだろう。不気味であることこの上ない。
　しかし気になることをできたのもまた事実である。
　それは最近になって急増した能力者の行方不明事件である。
　この学校にも被害者が数名いるとの噂だ。
　最近多発しているこの事件。ブレエドとは無関係と考える方が不自然であろう。
　今のところは何一つ分かってはいない。
　きっと上層部の誰かが調べてくれるだろうと考えながら自身の机にうつ伏せになっていると奴が来た。
　奈津である。物凄く嫌な予感がする。逃げろと俺の本能が告げた。
　その直後、俺は椅子から立ち上がりドアに向かって走った。
　だが時すでに遅し。服を掴まれ思いっきり引っ張られた。
　力強いな！なんだこいつ？本当はパワー系の能力じゃあないのか？
　サポート系の能力とは思えないほどの強い力に困惑してしまった。
　ゴリラか？と言おうとしたが目の前にある奈津の拳が硬く握られてあるのを見てやめた。
　ここまで来たらもう黙って奈津の話を聞くしかなかった。
「能力者の行方不明事件。私たちで調査しましょう！」
　嫌な予感が的中した。
　「怠い」の一言に尽きる。俺は何とか拒否しようと言葉を発した。
「行くなら一人で行ってくれ。俺は行きたくない。」
　そんなことを言うと奈津は反論してきた。
「何でですか？せっかくの依頼なのに。」
　少し威圧的な言い方になるかもしれないが仕方がないと思いながらも俺は喋った。
「また前みたいに負傷したらどうするつもりだ？その任務は少なくとも俺たち弱者が行く様な依頼ではない。」
　流石に諦めたかと思っていると不意に奈津が叫んだ。
「分かりました！では私一人で調査してきます！」
　珍しく怒っている様子だった。それと何か焦っている様な感じがした。
　ドアを開き立ち去る奈津を見て俺は呆然とするしかなかったのだった・・・。
　私は主に犯行が行われるのは深夜であるとの情報をもらったので0時過ぎぐらいに街の様子を観察しようと徘徊していた。
　昼に斗真君と口論したのを思い出し少しだけ胸が痛んだ。
　だが言った以上、一人で成し遂げてみせると張り切っていた。
　少し広い公園にまで足を運び自販機でお汁粉を買いベンチで一休みしていると不意に鳥肌が立った。
　それは殺気だった。今まで怖いものを見て鳥肌が立ったことはあるが今回のは訳が違う。「死」への恐怖によるものだった。
　逃げようとするも遅かった。首筋に衝撃が走り私の意識は暗い闇の中に落ちていったのだった・・・。
　次の日、俺はいつも通り学校に登校しクラスに入ると煌がものすごい剣幕で捲し立ててきた。
　そして俺は知った。奈津が行方不明になってしまったことを・・・。