紡ぎゆく物語

初投稿から1年 今から綴られるは過去のお話

𝟏𝒔𝒕 𝑨𝒏𝒏𝒊𝒗𝒆𝒓𝒔𝒂𝒓𝒚 🎊 𝑺𝒑𝒆𝒄𝒊𝒂𝒍 𝑬𝒑𝒊𝒔𝒐𝒅𝒆𝟐 🎉

「よくぞ聞いてくれた！その名も王様ゲーム！！」
「・・・・は？？？」
　この場にいた全員が声を上げると同時に疑問符を頭に浮かべているだろう。
　てっきり殺し合いをゲームと称してさせられると思っていたからだ。
　それなのに王様ゲーム？なんで？
「何で王様ゲームなんだ？」
　煌は質問を続ける。
「ちょっとした退屈しのぎだ。こっちも暇なんでな。」
「ちなみに王様ゲームをしてくれたら元の世界に返してやるよ。約束する。」
「それじゃあな。楽しくやれよ。」
「待て・・・！」
　そしてまるで何もなかったかのように影は消えた。
　残された俺たちはテーブルの上に割り箸の入った入れ物があるのに気づいた。
　影がいなくなり静まり返る空気の中、最初に口を開いたのは零餓だった。
「王様ゲームをやるのか？それともやらないのか？」
　次に口を開いたのは燈だった。
「でもあの影のやつの罠かもしれないでしょ？」
　次に皐月が意見を出した。
「やってみないと分からないじゃない。なら王様ゲームしましょう！」
　確かにそうだ。皐月の言う通りやってみないと分からないな。
　結局、俺たちは皐月の意見に従い王様ゲームをする事になった。
　その後どうなるか知る由もないまま・・・。
　みんなで中央にある机を囲む。
　割り箸をみんなで持ち掛け声と共に一斉に割り箸を引いた。
「「「王様だ～れだ！」」」
　言ったのは俺と零餓と斗真だけだった。何でみんな言わないの？新たないじめですか？
　それぞれ自分の引いた割り箸の先端を確認する。
「王様は僕ですね。」
　最初の王様は燈だった。
「最初というのはやりにくいね。う～ん。どうしようかな～。」
　燈はしばし悩んだ後、決めたのか顔を上げた。
「それじゃあ無難に1番が自分の黒歴史を言う。」
　確かに無難だな。最初を飾るにはちょうど良い。
　でも俺は3番だ。ということは誰だ・・・？
「1番は俺だな。」
　手を挙げたのは煌だった。
「黒歴史か・・・。一つだけ。」
「実は昔、授業で寝てしまってそれが先生に見つかって頭をぶっ叩かれたんだけどそこからが問題だった。」
「そのあと。叩かれて飛び起きた拍子に思いっきり椅子が後ろに倒れて頭を打って気絶したんだよね。」
　割とガチな黒歴史だったため思わず笑ってしまった。
　みんなが腹を抱えながら笑っている中、煌だけ恥ずかしそうにしていた。
　さて次の王様ゲームだ。割り箸を引くぞ！！
「「「王様だ～れだ！」」」
　またもや女性陣は掛け声を言わなかった。なんか悲しくなってくるな。
「次の王様は私ね！」
　次は天音か・・・。
　見るからにドSなためどれほどきつい命令を出すのだろうかと不安になる。
　冷や汗をかきながら天音の命令を待つ。
「決まったわ。とんでもない恥ずかしい命令を！心して聞きなさい！」
「3番が5番の手の甲にキスをする。」
　うん？意外とキツくないぞ？天音のことだからディープキスぐらい言ってくるもんだと思っていたのだが。
　俺と零餓そして斗真はもしやと思い天音に聞いた。
「ディープキスじゃないのか？」
　その言葉を聞いたからか見る見るうちに天音の顔が赤くなってきていた。
「バカ！ディープキスなんてしたら赤ちゃんができるかもしれないでしょ！」
　なんてベタな・・・。高校生にもなってキスで赤ちゃんが出来ると思っているだなんて純粋すぎるだろ。
　先生とかに習わなかったのだろうか？そうでなくても親から教えられていそうなものだが。
　それはそうと命令は実行しなきゃだな。王様の命令は絶対だし。
「5番は私ですね。」
「3番は私です。」
　5番が奈津で3番が皐月だった。
　2人とも恥じらいながら命令を実行する。なんか見ていて微笑ましかったのは内緒である。
　そして三度目である。
「「「王様だ～れだ！」」」
　またもや3人。もはや慣れた。
「来た～！」
　次の王様は煌だった。
「王様も3人目だからそろそろきついものを言おうではないか！」
「4番と7番は水着に着替えゲームの終わりまでそのままでいること！」
　命令をした途端、批判の声が上がる。主に女子から。
「バカ！何てこと命令してるのよ！」
「しかも水着なんてここにあるわけないでしょ！」
　ギャーギャーと女性からの抗議を聞いているといつの間にか机の上に何かが置いてあった。
　見るとそれは水着だった。しかも『ありますよ！』の一言を添えて。
　でもよく見ると男子用と女子用の二種類がある。
　と言うことは・・・。
「4番は俺だな。」
「7番、私なんだけど！」
　4番は零餓で7番が天音だった。
　にしてもあの影のやつ。遊んでやがる。
　2人は別室に消え着替えている。
　零餓は受け入れすぐに行ったが天音は最後まで愚痴をこぼしていたな。
　おっと着替えも終わったようだな。どんなもんか見てみようではないか！
　扉が開く。すると恥じらいながら2人が出てきた。
　零餓の方はカラフルな海パンだった。
　天音の方はスクール水着だった。
　何だこれ？あの影の好みなのか？あいつはスク水が好きなのか？
　意外な奴の好みを知ってしまったところで改めて続きと行こうか。
「「「王様だ～れだ！」」」
　今度は天音も言ってくれた。
　やる気というより水着姿にされた仕返しをしたい感じがするのは気のせいだろうか？
「次は俺だな・・・。」
　海パン姿の零餓だった。
「海パン姿にされた恨み。ここで晴らさでおくべきか・・・。」
「2番の人はみんなの目の前で好きな曲をフルコーラスで歌うこと！」
「！！！？？？」
　まじか！？これは絶対やりたくない！
　俺は急いで自分の番号を確認した。
　・・・結果は幸運にも7番だった。
「やりたくないです！」
「嫌です！」
　悲痛の叫びを漏らしたのは奈津だった。
「というか超下手ですよ。それでも良いんですか！？」
　奈津は断固として拒否していた。もうなりふりなど構っている暇もない様子だ。
　そこで斗真がいらん一言を言った。
「でもお前。いつも暇があれば何かしら歌っているだろ？聞いていてもうまかったが。」
　奈津は驚いた顔で斗真を見た。
「聞いていたんですか！？というか何言ってるんですか！？」
　いまなお叫んでいる奈津の肩を叩いた零餓は奈津に無慈悲な一言を突きつけた。
「斗真のお墨付きなら大丈夫だろう。それに・・・。」
「奈津。王様の命令は？」
「・・・絶対。」
　結局、奈津は諦めた。
　歌う前になんか斗真を睨んでいる気がしたが気のせいだろうか？
　そして奈津は立ち上がり好きな曲をフルで歌った。
　奈津の顔を見るとどんどん赤くなっていることに気づいた。湯気でも出るじゃないかと思うほどに。
　やっとの思いで歌い終わり座ると拍手をされた。
「奈津ちゃん。超美声だったよ！」
　皐月をはじめほぼ全員が感嘆した。
　褒められると思っていなかったのか奈津は恥ずかしそうに笑っていた。
　・・・一体あと何回やれば元の世界に帰れるのだろうか？
　いまだに影からはなんの返答もない。ということはまだやれということなのだろうか？
　仕方ない。次だ。
「「「王様だ～れだ！」」」
「来た～！次は俺だ！」
　斗真だった。やっと王様になれたからかすごい喜んでいる。
「じゃあ6番は王様がいいと言うまで王様の肩を揉む事を命ずる！」
「さぁ。6番は誰だ！」
「6番は俺だな。」
　またしても煌だった。
「煌か。さっさと揉むがいい！俺がいいというまで！」
　煌は斗真の後ろに回り込むと一言言った。
「どのくらいの強さでやれとは言われてないからな。」
「え・・・・・？」
　斗真が驚いたのも束の間、煌の体から凄まじい量の熱気が出てきた。
　確か煌の能力は熱を利用し体の身体能力を向上させることができるだったよな？
　だとしたらやばくないか？
　そして次の瞬間、リビングに斗真の絶叫が響いた。
「痛てぇ～！煌！やめろ！もう終わっていいから！」
　すると煌は笑みを浮かべながら再度、斗真に言う。
「遠慮すんなよ。お前も疲れているだろ？気がすむまで肩を揉んでやるよ。」
　それから数分間は斗真の絶叫が木霊するのだった。
　肩揉みも終わり煌が元いた場所に座った。
　斗真は倒れている。ちゃんと息はしているようだ。痙攣もしているが大丈夫だろ。
　でもまさか王様が被害を受けることになるとはな。次からきちんと明確な命令を出さないといけないな。
　俺たちは倒れている斗真を無理やり起こし割り箸を引かせた。
「「「王様だ～れだ！」」」
「次は私！」
　歓喜の声の主は皐月だった。
「それじゃあね。2番が3番にしっぺする！」
　3番は俺だ。
　すると2番は・・・。
「2番は僕だね。」
　2番は燈か・・・。
　見た目から言ったらあまり力が強くない感じがする。
　これは楽勝だな。
　俺はそう思い躊躇なく腕を差し出した。それがフラグになることも知らずに。
「ドゴォっ！！！」
　ん？なんか鳴ってはいけない音がしたような・・・？
　数秒後、沸き上がってくる痛みに俺は苦悶した。
「力つよ！なんでそんな力あんの！？」
　叩かれた場所を押さえつけながら聞く。
「戦いに備えて普段から鍛えているからかな・・・？」
　この時というかやる前から気づけという感じだが改めて思った。
　能力者どもに痛みが伴う系の罰をさせてはならないのだと。
　まだ痛む腕を押さえながら新たに割り箸を引く。
「「「王様はだ～れだ！」」」
「やった～。ついに来ました。私です～！」
　勢い良く立ち上がったのは奈津だった。
「ふふふ。さぁ斗真くん。仕返しです。」
　仕返しってさっきの歌のこと暴露させれたことまだ根に持っていたのかよ。
「仕返しって言ったってな。俺の引いた番号なんて分からんだろ？」
　そして斗真の一言。
　まぁ見るからに優しい奈津だからな。そんな酷い命令は来ないだろ。
　そう誰しもが思っていた。
　でも奈津から告げられたのは予想外のものだった。