異世界転移したけど王様がクズなので旅をします。〜邪神に選ばれし男は神へと至る〜

悪鬼さん

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古の島編

森の番人、トレント

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「よし、このまま直進で大丈夫だ、着くぞ」
「……」
ミインは返事は無いものの、静かにゆっくりと頷いた。どうやら術式を構築しているようで、黙って集中していた。 
何となく肌で凄まじい魔力を感じられる。

「居るな…」
ミインの魔力とは他に、塔の方向にある強大な気配は相変わらずで、近付くにつれてそれはどんどん強くなる。
「…やりたくねぇー」





暫く移動すると、塔に着いた。
しかし番人の魔物らしき姿は見えない、しかし気配はしっかりと感じることが出来る。
「…チッ、気配がデカ過ぎて絞れない、大まかな場所までが限界だな」
「準備、完了」
「おう、どれくらいキープ出来る?」
「あと数分くらいなら…問題無い」
「よし、索敵を…」
ギシリと音を立てて、塔の扉が開いた。開いた扉を見ると、塔の中から人型の木が出てきた。
人型と言っても形は歪で、腕や脚である木には隙間があり、所々に葉や蔦が生えていた。頭には葉が生えており、目の当たりは赤く光っている。全体のサイズは晃よりも数回り大きく、人と比べれば巨大と言える大きさであった。

…塔の前に居るんじゃ無かったか?
「あれか?」
「分からない…でも、森エリアの番人は、植物を操るって言ってた」
ミインは警戒しながらいつでも魔法を放てるよう構える。
見た感じはよくファンタジーに出てくるトレント、確かにアレから感じられるオーラは先程まで感じていた番人らしき気配である。
「ギゴl_(a(ar7l_j4:|2テtc(〆-1て?」
トレントはこちらを見て理解出来ない言葉を発する。
そして木で作られた右腕をこちらに向けて来た。
「何をして…ッ!ミイン!」
「んう!?」
晃は異変を察知し、ミインを抱き抱えて横に跳躍する。突然の事に驚きの声を上げる。
そして先程まで二人が居た場所に地面から二本の鋭い木の槍が勢いよく生えて来た。

「あっぶね!」
「んっ…ありがと」
「おう…さて、一気にいくぞ、“身体強化Ⅶ”」
「んっ」
ミインは術式に魔力を流し始め、魔法陣を作り出す。晃は“縮地法”を使い、トレントが突き出していた右腕の真ん中辺りにアッパーを喰らわせた。続けて回し蹴りを膝の辺りに叩き込む、しかしただの木では無い様で硬度は高く、効果がある様子はない。
「我が魔力よ、爆ぜし炎となり、天を焦がし、地を灼き…」
ミインは詠唱を始め、魔術の最終準備を開始する。
「コイツも硬えな、しかも怯まねえか、しっかりとした体幹の様で!」
愚痴を叫ぶとトレントはこちらを睨み、左腕を振りかぶって叩き付けてくる。こちらも左腕で防御するが、あのゴリラを連想する程のパワーがあり、吹き飛ばされてしまった。
「痛っ…ヤベッ!?」
木にぶつかった事で、晃の動きが止まってしまう。それを見逃さず、トレントは植物を地面から生やしてくる。

数本の蔦の鞭のようなものが四方から襲い掛かってきて、晃は逃げ場を無くす。しかし晃は数の少ない方に走り出した。
「“縮地法”!」
右足で踏み切って“縮地法”を使い、蔦同士の隙を抜け、危機を脱する。
「今だ!」
「んっ!」
十分に距離を取れたことを確認し、晃はミインに指令を送る。ミインはそれを了承して、魔法を発動した。

五重魔術クインタプルマジック煉獄魔炎爆プァーガトリーエクスプロージョン!」
紅く広い魔法陣がさらに浮き、前に見たように無数の炎の球が降り注ぎ、幾つもの炎の球が爆発を起こす。
「うおっと…」
案外魔術の発動位置が近く、何度も来る爆風に吹き飛ばされそうになる。小石やらも飛んで来るので、当たらない様に距離を取り、ミインの元に辿り着く。

「ナイス、やっぱりとんでもない威力だな」
「うん…でもこの程度で倒せるか不安…」
「…しまった、鑑定し忘れたな」
「トレントなら炎が弱点だと思ったから使ったけど、しっかり弱点を見てからの方が良かった」
「まあ、猪の時と違って余裕無かったから仕方ないだろ、一応警戒しとけ」
「うん」
相変わらず爆音で声が聞こえづらいが、お互いの顔を近付けて話してお互いの声を聞き取る。しかし顔は近いのは何だか少し…という感じだが。
 
ミインは爆発が終わる前にまた術式の構築を開始する。
「っと、気配察知使えば良いじゃねえか」
“気配察知”…っ!
「ミイン、信じたくはないが…あの爆発でまだ生きてる、これ以上耐える様なら何とか隙をついて鑑定して弱点を探す」
「ん、分かった、基礎術式だけ構築して待機する」
それから数十秒後、魔法陣から出る炎の球が止まり、爆風が晴れていく。
そこにはなんてことないと言うように立っているトレントが居た。
身体の一部が消し飛び、焦げていたが、失った部分から植物が生える様に再生していった。

「っし!」
晃は縮地法で距離を詰めて今度は顔面と思われる箇所に上段蹴りをぶち当たる。しかし高い防御力によってダメージは少ない、それどころか効いているかすら怪しい。
「“生物鑑定”」

『無し』 ジョブ 無し LV 0 種族 黄昏の樹人ダスクトレント年齢???
攻撃力 28000
防御力 26000
俊敏力 800
魔力 30000
魔防力 34000
《固有スキル》植物支配プラントドミネーション
《スキル》 樹木操作LV10 魔法耐性LV6 魔力操作LV7 植物成長LV7 巨大化LV6 水耐性LV5 毒耐性LV6 麻痺耐性LV10 再生LV8 
《称号》古の魔物 

何だこりゃ…もっと詳しく鑑定しないとな…。

黄昏の樹人ダスクトレント
古の時代に生きたとされる樹人、数多の植物を自由自在に操り、それらの性質すら改変する事が出来る。一瞬で植物を成長させることも出来、こと森林内などでは無類の強さを持つ。火が弱点。

火弱点かよ!あんなに炎の爆発受けてたのに…簡単に再生されたぞ、しかも魔法に対する防御力が高いな…これはおれの戦技を使うしかないか?

「ミイン!火がじゃくて…うおっ!」
暫くして再生が終わったのか、もう一度蔦を生やし、晃は足を縛り付けられる。それだけでは無く、太い木の根が生え、晃にそれが叩き付けられる。
「がっ…」
「アキラ!」
ミインは魔法の風の刃を放ち、蔦を切り裂こうとする。しかし蔦は傷付くだけで切れる事は無かった。
「チッ!」
晃はそれを見て腰に付けていたナイフを持つ。根の攻撃の衝撃で落とさないようにしっかりと握り締めて蔦を斬りつける。何とか切れた様で、もう一本の蔦も切り、何とかその場を離れる。

「…クソ、厄介だ」
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