異世界転移したけど王様がクズなので旅をします。〜邪神に選ばれし男は神へと至る〜

悪鬼さん

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古の島編

ミインとの闘い。

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「うおっ!?」
ミインの手の平の魔法陣から風魔法が放たれた。俺は咄嗟に腕を交差させ、防御する。その風魔法は風の斬撃などでは無く、単純に俺を吹き飛ばそうとするだけだった。しかし突風の力は強く、踏ん張り切れずに吹き飛んだ。

「ミイン!?」
晃は唐突なミインの攻撃に驚きと叱責を混ぜた声でミインの名を叫んだ。ミインはその声に少し驚いた表情を浮かべた後、もう一度手の平に術式を、構築し始めた。
「…あんまり、怪我はさせたく無い、けど、後で治してあげるから」
ミインは意味合いを変えたらヤンデレみたいになる発言をして、手の平の魔法陣から小さな竜巻を発生させた。
その竜巻はどんどん大きくなり、ミインが俺のほうにそれを横に倒すように向けると、俺を呑み込むように迫って来た。

「なっ…おおおっ!?」
先程とは比べ物にならない勢いの風に、踏ん張る隙も無く吹地面から引き離される。しかし晃を呑み込んだ竜巻は俺を閉じ込めたまま呻り、辺りの木を薙ぎ倒しながら暴れ回る。暫くそれが続き、地面に叩き付けられた。

「っ…!」
晃は地面に大の字になる事になったが、直ぐに飛び起きる。しかしミインはその隙にまた術式の構築を完了しており、右手に浮かぶ青い魔法陣をこちらに向ける。晃はそれを見て脚に力を込め、魔法の攻撃に備える。
ミインの右手からはねじれ渦の様な水の槍が三本飛び出した。三本の水の槍は一本は真っ直ぐ正面から、あと二本はカーブしながら左右に広がって迫って来た。

正面と左右からの攻撃で、回避する場所と方向はだいぶ限定されてしまった。水の槍はかなりの速度でどんどん近付いて来るのであまり考えてる時間は無い。水の槍が回避出来る場所を潰し、晃は迫る水の槍を飛び上がって回避した。
「…おい、マジか」
晃が飛び上がると、それを読んでいたかの様な素早い動きで、ミインが術式を構築し終えて魔法陣を浮かべたを空中に居る晃に向けた。

「マジ、かっ!?」
しまった、空中に迂闊に跳ぶべきでは無かった…。
晃は防御の姿勢を取ろうとするが、ミインの魔法の発動には間に合わなかった。ミインは左手から雷を放った、魔法の雷は晃に命中し、全身を焼かれる痛みにみまわれた。
「あ゛ぐっ!ガァァッ!?」
晃は全身を雷に焼かれ、地面に落ちる。服は焼き焦げて所々が黒焦げになる。
「…ぁ、ごめん、ね?やり過ぎちゃった…?」
「ぁぁぁああ…ミイン…?何故雷をチョイスしたぁ…」
いや本当に何で雷なんだよ…アレって痺れとかは何だが、刺されるみたいな痛みが全身に回るのは慣れない。
「…す、素早く攻撃出来てダメージも考えると、これが一番良いと思って…」
ああ、ナイスな判断だが、やって欲しくは無かったな…と言うか、いきなり闘いを始めないでくれよ…。まあ、それはそれとして…隙を殆ど作らずに魔法での高速攻撃、しかもそれを連続で行ってこちらの隙も作れる戦術、そして威力も強力。

「ミイン、俺と闘えるぐらい強いのは分かった、いや何となく闘う前から分かってたが…まあ、この身で魔法も受けたし…一緒に戦うのを本心から認める」
「んっ…分かってくれたなら、良い」
二度と闘うのは御免だがな、精神的に辛い。
「…一先ず洞窟に戻るか、日が暮れる」
「うん、分かった」 
取り敢えず洞窟に戻るか…もう疲れた。

**********************************
  
「あの…ミインさん?何をしてらっしゃるので?」
「…お詫び?」
洞窟に戻ると日は暮れて、外は真っ暗になっていた。植物を適当に摘んで作ったベッドに晃は寝そべった。そうするとミインが近付いて来て、晃の頭を膝に乗せた。
「…..いや、いやいや、可笑しくないか?」
「嫌?」
「…ノーコメントで」
面向かって嬉しいですとか言うのは恥ずい、そしてこの体制で会話するのも恥ずい、にしても…何だかこの感覚、覚えがあるような…。

「ーー♪ー♫ーーー♩♬」
このミインの唄う鼻唄も聴き慣れたな、この歌を聴いていると相変わらず眠くなる…ミインは道中やら暇な時にはいつもこの歌を唄ってるよな。後は、何かを考えるようにブツブツと呟いてるな、アレは何をしてるんだろうな。

っと…まだ寝ちゃ駄目だろ
「ミイン、このままだと寝そうだからコレで終わりな」
「…ん、分かった、何かするの?」
晃は重いまぶたを無理矢理開き、ミインの膝から頭を離した。
「明日用に解体して肉を確保しねえと…」
「解体?でも刃物は無いよ?」
ミインは当然の疑問に周囲を見回して首を傾げる。
「あー、コレを使うんだよ」
晃は適当に土魔法を詠唱して適当に岩石のナイフを作ってミインに見せる。
「…それで出来るの?」
「いや、ほぼ無理だ…鋭利さも切れ味も悪過ぎて毛皮をどうにか削って無理矢理食えるようにしてんだよ、骨は邪魔だがどうにも出来ないし、肉は不味い」
「味とかはどうにも出来ないけど……」
ミインは術式を構築し始め、魔法陣を両手に展開した。
そしてその魔法陣同士を近付ける、そうするとそこから青い電気の様なものがぶつかり合い、何かを型取り始めた。
ミインに何をしているか聞こうと思ったが、集中している様なのでやめておいた。

「んっ…んー、コレで……うん、出来た」
「…え?ナイフ…は?」
ミインの手には綺麗に装飾された短ナイフが握られていた。晃はそのナイフを受け取って観察する、どこから見ても本物の刃物で、これがあれば解体も相当楽になるだろう。
「どうやって…?」
「生成魔法って言う魔力を物に出来る魔法があるの、既存の物より劣化してるし、使うのに結構集中しないとだし燃費も悪いけど、便利」
へぇ…凄えな、魔力から物を作るってのは確かに便利だ。
「サンキュー、これで解体という名の皮剥ぎが捗る」
「ん…頑張って」
「おう、先に寝てて良いぞ」
「…ううん、眠くなるまで見てる」
「そうか?」
  
解体を続行すると、ミインのくれたナイフは先程の岩石のナイフとは比べ物にならない程の効率で解体は進んでいった。
「アキラ、ナイフ貸して」
「ん?おう」
唐突にミインがそう言い、俺は素直に渡す。
ミインはナイフを持つと何かをブツブツと呟く、そうするとナイフの柄の辺り魔法陣が浮き上がる。青い魔法陣がナイフに付いたと思うとそれに重なる様に赤と緑の魔法陣もナイフに吸い込まれていった。
「できた」
「今度は何やったんだ?」
「付与魔法、身体に属性耐性とか属性を武器に付与したり、味方の能力上昇させたり出来るんだけど、私はそれよりも物に性質を与える方が得意」
…ミインは万能だなぁ。
「マジックアイテムか、本で読んだな…て、片手間でマジックアイテム作れるのか…」
「うん…?あ、コレは魔導具マジックアイテムじゃ無いよ」
「え、違えの?」
「うん、術式を組み込んだんじゃ無くて、魔法を掛けただけ、術式を組み込んで作ると魔導具マジックアイテムになるの、それに付与魔法には制限時間があるし」
ほーん…つまり、このナイフで例えると、“物を切れる”って性質を作るのが魔導具マジックアイテム。作られたナイフに性質を加えると付与魔法ってことか?

ナイフの切れ味は先程より遥かに良くなっており、滑る様に毛皮を剥げるようになった。


結局ミインは俺が解体を終わらせるまで寝ることは無かった。

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