異世界転移したけど王様がクズなので旅をします。〜邪神に選ばれし男は神へと至る〜

悪鬼さん

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古の島編

美味しい食事

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食事が始まって、ゼパロが料理の説明をしてくれた。
「スープはバーフル豚のハムと採れたてのキャベツとキャロットのスープ、サラダは採れたての新鮮な温野菜にクイーンコッコのゆで卵に特製のソースを使っています、肉料理はアキラ様が仕留めましたワイルドボアのソテーでございます」
なるほど…なんか高級そうなのは分かった、異世界の食べ物だからよくわかんない食べ物ばっかりなんだよな。
ミインはスープが美味しいのか、スプーンを使ってかちゃかちゃと音を立てながら、目を細めてスープを食べている。
「アキラ、これ、美味しいよ」
あまりにミインが喜んだ顔をするので俺もスープから食べることにする。
「うめぇな、これ」
「ねっ、そうでしょ」
ミインは共感を喜んで顔を綻ばせる、可愛いミインを見ると俺も自然と顔がにやけて…おっといかん、俺はロリコンじゃないしミインはロリじゃない。
「口に合ったようで良かったよ」
ゼロはこちらを見て微笑みながらそう言い、サラダのきゅうりの様ななにかをフォークで刺し、口に運んだ。
…なんか、俺とミインを見るゼロの目が兄妹を見るような目なんだよな…俺が小さい頃、親父が同じような目で俺と妹を見てたんだがそれにそっくりだ。

…今頃親父、なにしてるかな…まあ、仕事か?俺がクラスメイト共々行方不明になってるから、極度に気が弱いし心配性だからって心臓止まってねえよな?
いくらなんでもショック死してないよな?うちの親父ならマジであり得るから不安だ…。

「ゼロさん、そんな生暖かい目で俺を見ないでください、今俺が持ってるミインへの感情も相まってメンタルキツイので…」

泊めてもらう立場だから敬語は忘れず、意図が伝わるように苦情を言う。…ミインにバレてないよな?

しかしミインは何のことか分からないという風にこっちを見て首を傾げている、というか完全に分かってない、これはバレなかったことを喜べばいいのか?それとも伝わらずに気にもされないことを悲しめばいいのか?

「それは済まないな、後、敬語は使わないで欲しい、仕えてる訳でもないのに敬語を使われると敬遠されてるようで嫌なんだ」 

それに対してゼロも苦情を返してくる。
「いや、でもほぼ初対面でしかも泊めてもらう立場なんだから敬語は必要だと思うんですけど」

流石にコミュ障の俺にこれ以上はキツイぞ、これでもロクに会話しないせいで皆無の会話力を駆使して頑張って話してるってのに、俺の会話力をこれ以上に進化しろと言うのか!勘弁してくれ……いやでも本人が望んでいるんだよな…どうしよう…。

「頼むよ、客人は久しぶりで対等に話せる相手が殆どいないんだ、寂しい人の助けだと思って」

かぁ……そう言われるとなぁ…一時期やってた人助けと言う名のヒーローごっこを思い出してしまう。

別に正義感がある訳じゃない。
別に人助けがしたかった訳じゃない。
別に俺が正義という訳じゃない。
別に正義が正しいとも思わない。
別に悪が間違っているとも思わない。
別にそれが俺のやるべきこととは思わない。
だが、

一度でも始めてしまったことは、自分が満足するまで続けること。

『最後までやり切れ、途中の挫折は許さんぞ』

それが世界一嫌いで、世界一かっこよくて、世界一強い、俺の憧れで俺の宿敵の沢山教えてくれた事の一つ。あの正義は、ヒーローごっこは、自分の為だったけれども、まだ満足はしていない気がする。
……もうちょっと続けても、良いかもな。
「分かった、これで良いか?」

大丈夫だよな?これで良いんだよな?向こうから申し出たとはいえ、馴れ馴れしすぎないよな?いや敬語使ってない時点で馴れ馴れしすぎる気がするが。

「ああ、ありがとう」
良かった、これで正解みたいだ。…ミインさん?こっちが会話してるのガン無視でめっちゃ食ってません?少しは気にしてくれないですかね…。
「…うん?」

ミインが俺の視線を感じたのか、食べるのを中断し、俺の方を見る。
俺はさっと目線を外した、それを見たミインは首を少し傾げた後、すぐに食事を再開してしまった。
「……食うか」
ミインのことを見てていてもなんだか居た堪れないので俺も食事を再開することにした。

************************************

食事を終えてリアに寝室まで送られた。

「では、ごゆるりとお休み下さいぃ………無いと思いますけどぉ、静かにお休みしてくださいねぇ……他にお客様は居ませんですしぃ…従者の部屋も遠いですけどもぉ、臨時の時のために私だけは近くの部屋におりますのでぇ…くれぐれも、お静かに!お願いしますよぉ…」

リアはものすごい剣幕で俺に詰め寄り、静かにという単語を強調し、忠告してきた。怖い、可愛らしい見た目してるけど凄い怖い。



「ではぁ…私は隣の部屋で寝ていますのでぇ…何かあったらお呼び下さい…ミイン様、変なことされたら叫んでも良いんですよぉ?」

えぇ…マジで?ほぼ初対面なのに信用ねえなぁ俺、まあ向こうにいたときから信頼なんてなかったからなぁ。

俺は人を全く頼るなんてしてこなかったし、人との関わりなんて敵意を持つ対象としかなかった。

あそこでは、一部を除けば、人間なんて悪意を持った他人だった。

まあ、あんまり人を頼りに出来るような環境じゃなかったし、信頼することもされることも出来なかったし、しょうがないが。
「…ん、わかっ、た?」
当のミインはもう半分眠っているし…いくら眠いとはいえ男と相部屋ですぐ寝れる状態になれるのは何故に?
「ミイン様ぁ、ベットの上で寝ましょうねぇ、こっちですよぉ」
リアは目を閉じかけて、もう立ったまま寝てしまいそうなミインの腕を引いてベットに誘導する。
それを見て俺もベットに入って横になる。なんやかんやで泊まることになったが、本当にただの親切心や話し相手が欲しいとかいう理由でここまで手厚くしてくれるか?
 てか、なんでここまでそんな疑問が出なかったんだ?……ん?なんだか少しずつ違和感が…。
「灯消しますねぇ」

リアはミインをベットに寝かせて毛布をかけた後、部屋にある二つのランプの摘みを回し、灯を消した。あれ魔石灯か、城の個室にも置いてあったけど形がこっちの方がなんかオシャレだな。

リアは机の上に小さな魔石灯を置いて灯をともし、静かに部屋を出て行った。

「では、おやすみなさいませぇ…」
……さて、どうするか…逆になんでここまで俺の警戒心が消え失せてたのか謎なんだよな…まあそれはそれとして…ミイン抱えて窓から逃げるか?いや、リアが隣の部屋にいるからバレる…。ここはファンタジーな世界だからな、人狼とか吸血鬼だったとかあり得る。

色々考えていると、さっきリアが机の上に置いていた魔石灯が急に強い青色の光を放った。
「はぁ!?なんだ!?」
青色の光はどんどん強くなり目を開けるのも辛くなっていく。
「クソっ!」
俺は何がなんだかわからないが、咄嗟にベットから飛び出してミインへと手を伸ばした、しかし手が届く前に俺のことを囲むように、地面から光が飛び出した。

その瞬間、俺の目には広大な青い海が広がった。






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