異世界転移したけど王様がクズなので旅をします。〜邪神に選ばれし男は神へと至る〜

悪鬼さん

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序章

思い出を夢見る

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〈とある千葉の町の路地裏〉
「おいおいおい、何調子乗っちゃってくれてんのデブ野郎?」
「ひっ…、ぼっ、僕調子に乗ってなんか…」
「いやいや、俺らに財布出すの断るとか、調子乗ってんだろ~」
茶髪の男と黒髪の男の二人組が制服を着た太った男の周りに立ち、睨みつけている、茶髪の男の手にはペーパーナイフが握られており、刃を太った男に向けている。
「で、でもお金なんか…」
「はぁ?お前の意見なんか聞いてないんだけど?」
茶髪の男はペーパーナイフを少しずつ近づける、ジリジリ、ジリジリと…。
「うひっ…」
「ぶはははは!今の変な声聞いたかよ!」
「ははは!ああ聞いたぜ、気持ち悪い!」


「嗚呼、気持ち悪い」
「あ?」
「ん?」
笑っていた男達の背後で知らない男の声が聞こえた。
「ただし、お前らがな」 
そこには黒のズボンと灰色のパーカーを着て、フードを被った男が立っていた。
「おいおい、何お前?」
フードの所為で顔がよく見えず、覗き込むようにフードの男の顔を見ようとする、しかし路地裏のなので薄暗く、フードの男の顔はよく見えない。

「まあいいや、で、何の用?」

「用って言うか、ヒーローごっこ?」 

「はぁ?」

「なんだこいつ?アレか?カツアゲしてる俺らが悪者で、それを倒すお前が正義のヒーローってか?」

「まあ、そういうことになるかな」

「じゃあそのフードはヒーロの仮面か、ぶはははは!」

「やっぱ、その笑い方気持ち悪いな」

「あぁ?ふざけてんじゃねえぞ?」

「てか、お前何歳だよ?」

「今は中三だ」

「おいおい!俺らは高二だぜ?勝てると思ってんのかよ」

「ええ、まあ」

「あー、そうか、じゃあ」

茶髪の男が後ろに下がり、黒髪の男が殴りかかった…
しかし、フードの男は飛び上がり、顔面に蹴りをお見舞いした。

「なっ、ガァッ!」

黒髪の男は足が地面から浮き、そのまま後ろに倒れた。

「は?」

茶髪の男は唖然し、蹴り飛ばした後立ち止まっているフードの男を見た、フードの男は腰を抜かし動けない太った男と茶髪の男を見て、茶髪の男の方に歩き始めた。

「この野郎!くたばれ!」

それを見た茶髪の男は持っているペーパーナイフを振り下ろした…が、フードの男に顔面を掴まれ、力を込められる。

「うっ、がっ…」

顔から少しずつメキメキと音が聞こえ始め、ペーパーナイフを落とし、茶髪の男が唸り始める。

「危ねえなぁ…」

フードの男は呟き、そのまま少しづつ男を持ち上げる。

「や、めっ…」

茶髪の男は呻くが、フードの男は無視し、顔を見続ける。

「オラっ!」
ドゴン!
「うギゃッ!」

そして、顔を掴んだまま勢いよく地面に叩きつけた。

「はぁ…つまんねえな」

「ひっ…」

立ち上がって溜息をついたフードの男を見て、太った男が小さく悲鳴を上げる。

「ん?ああ、早くどっか行きな、次は絡まれないようにな」

「うっ、は、はいぃ!」

太った男は慌てて立ち上がり、そのまま路地裏の外に逃げるように走って行った。

「はぁ…」

フードの男ーーー進茅晃はフードを外し、その場にしゃがみ込む。

「ホント、つまんないなぁ…阿保と雑魚しかいない」

晃は落ちていたペーパーナイフを拾い、放り投げて遊び始める。

「…こんな才能要らないんだよなぁ」

そしてペーパーナイフの刃を摘み、「フッ」と小さな掛け声と同時に刃をへし折る。

「また明人と遊ぼっかな~?」

折れたペーパーナイフを放り捨て、ゆっくりと路地裏の外へ歩いて行く。






俺は気がついたら真っ暗な空間にいた。

あれ?いまなんで俺ここに居るんだ?てか、俺はなんで俺を見ているんだ?

……夢か、明晰夢ってヤツだな、にしてもこの頃の俺はイタイなぁ~、明人の奴に負けず劣らずの戦闘狂バトルジャンキーで、一番退屈だった時期。

よく明人と戦って、ヤンチャしてた時期、最近も不良狩りを続けてるが、今はヒーローごっこじゃなくて単純にこの頃のことを思い出して、目に着いたアホを懲らしめてるだけ…いや、変わってないな、結局ヒーローごっこだ、カッコつけて仮面なんて着けちゃって…この頃より数倍イタイな。

でもなんで夢の中?何があったんだっけ?確か異世界に来て、ナントカ大迷宮に向かって…。

爆発音が聞こえた…あ、もしかしてここ意識の中か?いつもと違うから気づかなかった…、何があって、何を見て、何に怒ったかは覚えてないけど、…理由を覚えてないのが不幸中の幸いだが、明人がどうにかしてくれると良いが…。

あ!いま結構ヤバくないか?転移者はチートスペックなのに、アグゼルから力を貰った状態の俺がになったら…?天災どころじゃないぞ…、ただでさえ今のステータスで地面を殴ったらヒビが入るってのに、明人でも止められないかもしれない。


「…のれ……れ……け…の」
ん?なんか声が…。

「あ…ら………ち…け…」

「ま……まえ…そ…は…」

「わた……おさ…て……やろ……しょ……ん」

なんだ?なんなんだこの声?
頭の中に響く…、でもノイズがかかってよく聞き取れない…。

「ゴK#€^:×7°6>〆+42ニグノ*〒\\<」
うるさ!なんか向こうにいる…。
真っ黒な人型…、今まではあんなの居なかったよな…。
「キヤ々〆<4:=$・÷=→四二アog×2〆」
あ、こっち気づいた、近づいてくる…、何あれ怖い。

真っ黒な人型はふわふわと浮きながら飛んでくるようにこっちに近づいてきて、俺は怖いとは思ったが逃げたいとはなぜか思わなかった。
「ネレノut÷|4×4×lau×2…1×7×一mavp」
やがて俺の前に立つ?浮く?まあそのままよく聞き取れないノイズのような声を俺に向けて放った。
「五月蝿えな…、何?お前?
と同類か?日本語で喋ろや」

「んえ?」


………は?

「いや喋れたのかよ…」

「あーあー、明人、わたしだ、アグゼルだ」

「は?」

何言ってんだこいつ、急にクリアな声になったし、それにアグゼルは身長は俺の胸ぐらいで金髪でルビーみたいな赤い眼をした美少女だぞ。

「ふむ、どうやら此処では姿が安定しないみたいでな、一番安定するのがシンプルなこの姿だったのだ」

ああ、だから髪も眼もない真っ黒な姿なのか。

「済まんな、間違えて人間だと聞き取れない言語で話しとったわ」

「人が聞き取れない言語は凄く気になるが、どうしてここにいるか教えてくれ、後どうやって来たか」

「神に不可能は無い!」

「そうか」

「んで?なんで此処に居るんだ?」

「ん~、一様伝えておきたい事があってだな」

「そうか、なんだ?」

「……いやちょっと待ってくれ、此処まで来て何だがまだ伝えるか迷っていてだな…」

「え、なんだそりゃ…」

「う~む…では一部伝える事にしよう、実はーーー」

アグゼルが何かを言おうとしたが、その時、空間が揺れた。

「うおっ!」

「…しまった、勝手に来たのがバレたか」

は?勝手に来た?何言ってんのアグゼル?

「すまん、バレたから戻る」

「いや、待て!伝言は!?」

「すまん」
いや済まんじゃ無くてさ!頼むから、多分重要な事だろ!?

「じゃあな!また近いうちに会おう!」

「いや待っーー」
アグゼルはそう言って消えていった…。

「えー…」
帰っちゃったよ…アグゼル、え、どうしよう何すればいいの?

バキッ


「ん?」
何かが割れたような大きな音が後ろから鳴り、俺は振り向いた。
そこには大きなヒビがあり、ヒビの先には光が見える、やっと終わったか…?外がどうなってるか分からないし、怖い事になってそうだな…。
「まあ、行くしかねえよな」
俺はそのままヒビに向かって歩き出した、いつものことだ、意識の中に来て、しばらくしたら出口のあのヒビが出て来る、そして触れたらの時間だ。
俺はヒビ前に立ち、一呼吸置いた、しかしいきなり背後から誰かに押されて、心の準備が済む前に触れる事になった。
「早く行ってこい」
そんな言葉が聞こえた…

***********************************
目が覚めると森の中にいた、360度全て木、そして少し先にひときわ大きな木が見えた。

俺はその木に近づいて、それを背もたれ代わりに使い、腰を下ろした。
「ふうっ…、やっぱ身体中痛い」
そんなことを呟くと、木の向かい側から何かが動く様な音が聞こえた。
俺は驚き、木から飛ぶように距離をとった、そうすると、木の裏から一人の少女が現れた。
「だれ?」
その少女を見て驚いた、アグゼルなのだ、いや少し違う、髪も、顔も、声も、姿形が全く同じなのだ、しかし少女は彼女、アグゼルと違い、ルビーのような赤い眼では無くーーー
サファイアのような深い青色の眼をしていた。

それが俺と彼女の出会いだった。







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