抗え!悪役子息くん!

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5ランベルト公爵家

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侯爵家の馬車を出すという申し出を断って
王都の貴族街をトコトコ歩くこと2時間

ていうか貴族の住居があるこの街が
こんなに広いとは思わなかった

トラント侯爵家と祖父母の家はそこまで離れてないと思ったんだけど、僕って結構田舎者というか世間知らずみたい...ショックだ

綺麗な庭園や生垣が気が遠くなるほど続いて
やっと見たことのある門が見えてきた


近くにくると
デデーンと4メートルはありそうな鉄の門
綺麗な薔薇の装飾が施されていてこの家の財力を感じる

ゴンゴン、とノッカーで叩くと
横の門番室から騎士のような方が出てくる


「何者だ」

「アルンからきましたルナティア・アルンです。
お祖父様とお祖母様に会いに来ました」


ネックレスを出して見せると
急に畏まって門を開いてくれる

同時に馬車が走って来た



「ルナ坊っちゃま、お待ちしておりました」


中から執事の方が降りて
僕を馬車に乗せてくれた

門からお屋敷まで中々の距離が有ったようで
馬車があって助かった
何せ2時間あるいたのだから...


「大きくなられましたね
以前来られたのは確か9歳の時かと」


「はい、シェーマスさん
もう僕も15歳になりました。兄様たちのように大きくはなれませんでしたが..」


「いえいえ、坊っちゃまのお母様のようにお綺麗になられましたよ。幼い頃にそっくりです。
もう学園に通われるとは、早いですねぇ」


シェーマスさんは僕ら兄弟がここに来た時に
身の回りの世話をしてくれる執事さんだ

ここ、ランベルト公爵家でも古参の方
祖父母の信用も厚くすごく優しい方だ


屋敷の前について馬車を降りると
使用人の方が並んでいて一斉に頭を下げた



「いらっしゃいませ、ルナ坊っちゃま」


ビクッと驚いたのを悟られないように
にっこり笑ってお礼を述べる

中に入るとステンドグラスが輝くロビー
階段から祖父母が降りて来た


「お祖父様、お祖母様
お久しぶりでございます。

ルナティア・アルンです。
数日お世話になります」


ぺこりと頭を下げると
ドカドカドカ!とすごい足音と



「ルナちゃぁぁあああん!!!」


とデレデレな声が聞こえたと思うと
急に体が宙に浮く



「きゃわいいいい~
ルナちゃん、きゃわいいねぇ~」



「お、お祖父様!
もう僕は15歳です!抱っこはダメです」



「ほっぺ膨らませて怒るルナちゃんも可愛い~」



「ジョセフ、ルナの顔私にも見せて

あらあら、可愛いルナ
美人に成長しましたね

ほっぺにちゅーしちゃおう」


顔を見せてちょうだい、と
眼鏡をとって前髪をかき分けるお祖母様が
ちゅっちゅっと頬にキスをくれる


「お祖母様もいつもお綺麗です...」



2人は僕を抱き上げて
目をキラキラさせて僕を見る

これがあの鬼軍曹と名高いランベルト公爵と
還暦過ぎても美しすぎると有名な元王国騎士であるランベルト公爵夫人とは誰も思わないだろう

こんな顔を外でしようものなら
驚きで心臓が止まる人続出だよ


「お二人ともお元気そうでなによりです!
今年の冬は寒かったから体調崩していらっしゃらないか心配でした...この前は15の冬だったのに会いに来れずすみません」


家族で過ごすリビングに通されて
ソファに3人で座る
勿論僕はお祖父様の膝の上だ

まだまだ現役のお祖父様の体格は僕に3倍くらいあって
膝に乗っけるのなんて平気らしい
...もう僕は15歳なのに!!!


「いや、いいんだよ
アルン領がこの前の冬大変だったのは聞いたし
15のお披露目パーティーは言うなれば出会いの場パーティーだよ。変な男に捕まるくらいなら来なくて正解だね」


にこりと笑うお祖母様になぜ背筋がぞくりと凍る


「そうだな
しかし、ルナちゃん
寮に入ると聞いたがうちから通うのはダメか?
寮で変な男に襲われたらどうする?こんな可愛いルナちゃんをほっておく男はいない!!」


「お祖父様もお祖母様も
先程から変な男変な男って何ですか。
僕、平凡で陰気なやつだと思われてますし実際そうでしょう?
ご心配されるようなことは起きません」


それにランベルト公爵家から通うなんて
変に目をつけられそう
権力を振りかざしてるとか、偉そうにしてるとか、言い掛かりをつけられたら4年間の夢の学園生活が消えちゃうよ~

僕は教室の隅でゆったり楽しく過ごしたいんだ!


「そう??
あなたの母もそう言ってあなたのお父様にゲットされちゃったんだよ?」


「あの辺境の若造がわしの可愛い末息子を囲いよって...わしはまだ認めていないからな!!!
くっ...わしの可愛い可愛いカレンに手を出して、子が出来たから絶対結婚すると言い張って、アルンのような遠い場所に...」



お祖父様は今も父様に対して許せない部分があるらしく、こうやって悔しさを滲ませている

父様は公爵家の深窓の令息だった母様をあらゆる手を使ってでも手に入れようとしたらしい(お祖父様談)

実のところ、母様も父様に惚れ込んでいて
父様を追いかけてアルンまで行ったみたい(母様談)

王都の学園で知り合った2人は
辺境の次期男爵と五大公爵家の中でも古いランベルト公爵家の末っ子箱入り令息という身分差を乗り越えて若くで結婚している。
結婚はアルンでひっそり行ったと祖父母から聞いたが、母様はそれはそれは綺麗なお式だったと今でも嬉しそうに話す

そんな母様似で生まれてきた僕を、祖父母はとてもとても可愛がってくれている
兄様たちは父様似だし、お祖父様に対してツンツンの対応だから余計に僕に構いたがるのだ


「まあまあ、カレンは結婚してとても幸せそうだし
お婿さんはハンサムで頼りになるし、とても良い子の孫が3人もいてこれ以上望むことは無いでしょ?
まあ貧乏なことが玉に瑕だけど」


「はい!父様はとても優しくてかっこよくて素晴らしいですし
アルン領は領民の方も素晴らしく自然豊かな素晴らしい場所です!母様も幸せだと思います!
あと貧乏な所が僕は大好きです!」


褒められて嬉しくなってしまい
僕が手を挙げて食い気味に言うと、祖父母は笑って肯定してくれた
なんだかんだで優しい2人なのだ

ランベルト公爵家の皆様にお世話されて
美味しいものを食べて僕は入寮日までお姫様のような待遇で過ごすこととなった


「ルナ、叔父様にお顔見せてくれないかい?」


甘い声で僕を膝に乗せて囁くのは
次期ランベルト公爵で母様の兄上であるハミル叔父様だ


本館には祖父母の公爵夫婦が住んでおり
叔父様夫婦と息子さんたちは同じ敷地内の別邸に住んでいる
別邸って言ってもアルン家のお屋敷の3倍はある...公爵家って凄いね


「お、叔父様
僕の顔眺めて楽しいですか?」


「ふふ、楽しいよ
こんなに可愛い子はカレン以来だ」


うん、ブラコンを極めているが
公爵の仕事をしっかり行っていて、貴族議会でも副議長を務めるくらい優秀な方なんだ



「ルナ、折角来たのにもう寮へ行くとか...
うちから通うのは嫌なのかい?」


「寮に入って友達をいっぱい作りたいですし
学園生活に憧れていたので楽しみなんです!

それに、公爵家の権力を使っていると思われでもしたら
僕は学園で平穏に暮らせません!
教室の隅にいる貧乏男爵家の影の薄いやつでいたいんです」


叔父様には素直に話しておく
叔父様のご理解がとても良いということもあるけど、叔父様の長男、僕の従兄が学園の3年生なのだ
ランベルト公爵家をいずれ継ぐだろう従兄は同じ3年生の王太子の側近であり、銀髪の美少年で勿論僕を可愛がってくれる。釘を刺しておかないと学園で話しかけられでもしたら...僕の夢の学園生活が終わってしまうのは明らかだろう



「ふむ、ルナの言いたいことはよく分かったよ
じゃあ約束してくれ。何かあればうちにすぐ連絡をすること。いいね?」


「はい!ありがとうございます叔父様」


そう言うと叔父様はランベルト公爵家の印でもある銀髪をきらりと輝かせて微笑んだ

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