25 / 34
京子・ルルカ編
第23怪
しおりを挟む
次の日、京子は学校に来た。当たり前の日常が始まる。この日、美玲たちは決意した。不登校になっていたルルカの学校の書類、それを渡す体でルルカの家に向かった。
「ここか、ルルカさんのお母さんの家」
「表向きここが住所なだけで、ルルカ本人はいないかも知れませんよ」
美玲と京子はアパートを訪ねるが誰も応対しなかった。
「やっぱり無理だったかな、本人に話を聞けるのが一番良かったけど」
「仕方ないですよ。妹の私だって全然話していないんですから」
美玲と京子はポストに書類だけ差し込んでアパートを後にした。二人が居なくなるのを見計らい、アパートの裏から人影が出てくる。ルルカだった。
「まさかアイツら、勘付いてる?」
その日の夜、美玲はルルカについて考え込んでいた。その為だろうか、前世の記憶がより鮮明に思い出させられる。
詩乃は梓馬の恋心に気づいていた。ただ知らないふりをして過ごす。何故なら詩乃は袂紳の妻になることが決まっているからだ。詩乃自身も望んでいた。そしてある日、梓馬は言ってしまう。
「私じゃ駄目だったのか……」
詩乃は困惑した。
「私は袂紳様をお慕いしています」
予想通りの答えに梓馬は笑った。
「あぁ、分かっている。分かっているよ。困らせてしまってすまない」
そういってお互い見つめ合う。沈黙が続いた。沈黙を切り裂いたのは真っ暗な闇だった。突如として詩乃、梓馬の前に現れた闇の存在、闇の切れ目、空間に突然夜が舞い降りたようだった。一瞬で魔の物だと分かる。不老不死の仙薬であった詩乃はよく狙われていた為、今回もそうなのだと思っていた。
「詩乃! 振り返らず逃げっ……」
魔の物は詩乃を追いかけず、梓馬を闇の中に引き摺り込んだ。
「梓馬様!」
「私は大丈夫だ、お前は……早く、逃げろ!」
そして梓馬の言いつけ通り、振り返らずに逃げた。
梓馬と共に襲撃に遭ったことを詩乃は袂紳に話した。その日は夜も更け、明日また調べることに決まった。しかし、次の日には梓馬は元通りだった。
「昨日がどうかしたか?」
詩乃は安堵した。二人とも無事だったと。しかし、この日から思いがけない悲劇が、あの惨劇が起こったのだ。
美玲はハッとして起き上がった。
(ルルカ、もしかして……いや、分からない。でも一つ分かった)
魔の物に襲われてから狂い始めたこと。
「これって……こんなのってあんまりでしょ」
美玲たちの認識では梓馬は、不老不死の仙薬に目が眩み、夫として邪魔だった袂紳を殺した。しかし詩乃は自害し、自身は完全な不老不死になることが出来ず今も生き延びている。そして完全な不老不死になる為、詩乃の生まれ変わりである美玲を狙っている。
(でも、違うかも……もし私の考えが合ってるなら、伝えなきゃ)
ーー共に今の時代に生まれ変わっているという、袂紳にーー
(でもその人が私みたいに前世の記憶があるかどうかまでは分からないんだよね)
翌日、美玲は学校で朝一番に部長を呼びつけた。
「と、言うわけで。私の推測が正しければ部長……いや、青崎純平くん。貴方こそが袂紳の生まれ変わりなのだ!」
ズバリと美玲が追求する。ヒューっと冷たい風が吹き、沈黙が流れる。
「ズバリその根拠は?」
「記憶の中での袂紳様と純平くんがそっくり! そして青崎の苗字であること」
「だけ?」
「だけ」
やはりまた冷たい風が吹く。美玲は最悪な結果を想像する。
(『全部知りません、勘違いです』ってなったら私は赤っ恥者だよ)
そんな美玲を見て部長は笑う。そして一言。
「そういうの信じたいお年頃だからね。さすが中学二年生!」
「違うって! 中二病じゃないし、本当だからね!」
美玲は恥ずかしくなり、捨て台詞のように推測を伝える。
「ようは梓馬様は何かに乗っ取られてる可能性があって『袂紳の生まれ変わり』も『詩乃姫の生まれ変わり』同様、狙われてる可能性があるってだけ! じゃ、授業始まるから!」
そう伝えて美玲は全速力で校舎に戻っていく。その様子を見て部長は笑っていた。
「真っ正面から馬鹿なオカルト話みたいなの言いにくるかよ! あーあ、バレてら」
「ここか、ルルカさんのお母さんの家」
「表向きここが住所なだけで、ルルカ本人はいないかも知れませんよ」
美玲と京子はアパートを訪ねるが誰も応対しなかった。
「やっぱり無理だったかな、本人に話を聞けるのが一番良かったけど」
「仕方ないですよ。妹の私だって全然話していないんですから」
美玲と京子はポストに書類だけ差し込んでアパートを後にした。二人が居なくなるのを見計らい、アパートの裏から人影が出てくる。ルルカだった。
「まさかアイツら、勘付いてる?」
その日の夜、美玲はルルカについて考え込んでいた。その為だろうか、前世の記憶がより鮮明に思い出させられる。
詩乃は梓馬の恋心に気づいていた。ただ知らないふりをして過ごす。何故なら詩乃は袂紳の妻になることが決まっているからだ。詩乃自身も望んでいた。そしてある日、梓馬は言ってしまう。
「私じゃ駄目だったのか……」
詩乃は困惑した。
「私は袂紳様をお慕いしています」
予想通りの答えに梓馬は笑った。
「あぁ、分かっている。分かっているよ。困らせてしまってすまない」
そういってお互い見つめ合う。沈黙が続いた。沈黙を切り裂いたのは真っ暗な闇だった。突如として詩乃、梓馬の前に現れた闇の存在、闇の切れ目、空間に突然夜が舞い降りたようだった。一瞬で魔の物だと分かる。不老不死の仙薬であった詩乃はよく狙われていた為、今回もそうなのだと思っていた。
「詩乃! 振り返らず逃げっ……」
魔の物は詩乃を追いかけず、梓馬を闇の中に引き摺り込んだ。
「梓馬様!」
「私は大丈夫だ、お前は……早く、逃げろ!」
そして梓馬の言いつけ通り、振り返らずに逃げた。
梓馬と共に襲撃に遭ったことを詩乃は袂紳に話した。その日は夜も更け、明日また調べることに決まった。しかし、次の日には梓馬は元通りだった。
「昨日がどうかしたか?」
詩乃は安堵した。二人とも無事だったと。しかし、この日から思いがけない悲劇が、あの惨劇が起こったのだ。
美玲はハッとして起き上がった。
(ルルカ、もしかして……いや、分からない。でも一つ分かった)
魔の物に襲われてから狂い始めたこと。
「これって……こんなのってあんまりでしょ」
美玲たちの認識では梓馬は、不老不死の仙薬に目が眩み、夫として邪魔だった袂紳を殺した。しかし詩乃は自害し、自身は完全な不老不死になることが出来ず今も生き延びている。そして完全な不老不死になる為、詩乃の生まれ変わりである美玲を狙っている。
(でも、違うかも……もし私の考えが合ってるなら、伝えなきゃ)
ーー共に今の時代に生まれ変わっているという、袂紳にーー
(でもその人が私みたいに前世の記憶があるかどうかまでは分からないんだよね)
翌日、美玲は学校で朝一番に部長を呼びつけた。
「と、言うわけで。私の推測が正しければ部長……いや、青崎純平くん。貴方こそが袂紳の生まれ変わりなのだ!」
ズバリと美玲が追求する。ヒューっと冷たい風が吹き、沈黙が流れる。
「ズバリその根拠は?」
「記憶の中での袂紳様と純平くんがそっくり! そして青崎の苗字であること」
「だけ?」
「だけ」
やはりまた冷たい風が吹く。美玲は最悪な結果を想像する。
(『全部知りません、勘違いです』ってなったら私は赤っ恥者だよ)
そんな美玲を見て部長は笑う。そして一言。
「そういうの信じたいお年頃だからね。さすが中学二年生!」
「違うって! 中二病じゃないし、本当だからね!」
美玲は恥ずかしくなり、捨て台詞のように推測を伝える。
「ようは梓馬様は何かに乗っ取られてる可能性があって『袂紳の生まれ変わり』も『詩乃姫の生まれ変わり』同様、狙われてる可能性があるってだけ! じゃ、授業始まるから!」
そう伝えて美玲は全速力で校舎に戻っていく。その様子を見て部長は笑っていた。
「真っ正面から馬鹿なオカルト話みたいなの言いにくるかよ! あーあ、バレてら」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~
菱沼あゆ
キャラ文芸
令和のはじめ。
めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。
同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。
酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。
休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。
職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。
おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。
庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。
ブラックベリーの霊能学
猫宮乾
キャラ文芸
新南津市には、古くから名門とされる霊能力者の一族がいる。それが、玲瓏院一族で、その次男である大学生の僕(紬)は、「さすがは名だたる天才だ。除霊も完璧」と言われている、というお話。※周囲には天才霊能力者と誤解されている大学生の日常。
エンジニア(精製士)の憂鬱
蒼衣翼
キャラ文芸
「俺の夢は人を感動させることの出来るおもちゃを作ること」そう豪語する木村隆志(きむらたかし)26才。
彼は現在中堅家電メーカーに務めるサラリーマンだ。
しかして、その血統は、人類救世のために生まれた一族である。
想いが怪異を産み出す世界で、男は使命を捨てて、夢を選んだ。……選んだはずだった。
だが、一人の女性を救ったことから彼の運命は大きく変わり始める。
愛する女性、逃れられない運命、捨てられない夢を全て抱えて苦悩しながらも前に進む、とある勇者(ヒーロー)の物語。
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
後宮の記録女官は真実を記す
悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】
中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。
「──嫌、でございます」
男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。
彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる