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兄の想い

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王宮の私室で兄からの呼び出しを待つミリアとムスティは、緊張感なく

久しぶりに飲む、白兎印の紅茶を楽しんでいる。

「ねぇ、ムスティ。お兄様怒ってると思う?」

「神がお怒りならば私たちはここで気楽にお茶を飲んでいられないですよ?」

「そうかな?」

「そうだぞ!ミリア!お帰り。」

「お兄様‥いきなり現れるとか心臓に悪いから!」

「悪かったな?で?あの手紙何なの?俺に分かるように説明して!それと‥何でムスティがお前と一緒にいるの?」

ミリアとムスティが、どちらが先に話すかじゃんけんで決めているのを見て

「お前ら仲良すぎ!先ずはミリアからにしなさい。」と笑いながら指示した。

「えー。言いたい事は手紙に書いたんだけど?」

「あの手紙だと何もわからないからお前を呼んだわけだが?何で探し物が見つかったから聖女を辞める必要があるのか説明してくれないか?」

「最初に探してた物は自分が聖女でいる理由なんだけどね。見つけたのは違うものなんだ。」

「もっとわかりやすく!それじゃわからないぞ?」

「じゃあ、結論言うね。ジュビアで聖女修行してる子たちは真剣に全身全霊で聖女である為に‥って、それしかない毎日を送ってるのよね。私には、そんな情熱ないからやっぱ向いてないなってハッキリしたの。だから、聖女は辞めたいです。」

「成る程な。だがなお前のその常に溢れだしそうな魔力がこの国を平和に維持する為に必要なんでな。俺個人としてはお前に無理は言いたくないが、神王としては‥聖女を辞めさせるわけにはいかないんだよ。わかるか?」

「お兄様!大丈夫!私より、膨大な魔力があって魔力コントロールもバッチリで賢くて美しい聖女候補をスカウトしてきたから!」

「何だって?それは誰だ?そんな人材が埋もれてたのか?」

「ジュビアにいたの!でもね。お祖父様がアーライ出身なんだって。一緒に聖女合宿してたアマンダ様の従妹のロレッタ様なんだけど‥」

「アウグストの孫か‥それならこっちに呼んでも問題はないな。アマンダには話は通してあるのか?」

「勿論よ。アマンダ様はロレッタの好きなようになさいって仰ってたわよ。ロレッタはアーライ神国の神殿が好きみたいなの。小さい時にお祖父様と一緒に来た事があって、その時にお祈りをしていた聖女様に憧れて聖女を目指したって言ってたわ。アーライの聖女の正装も着てみたいらしいし‥」

「んー。聖女になりたくて頑張ってきた娘なんだな。ロレッタ嬢は‥分かった!彼女をこっちに呼んで面接して決めるわ。彼女が三大聖女にふさわしいかどうかは‥まだわからないからな。お前が聖女を辞めるのは保留だからひとまずこっちに帰って来なさい。」

「わかったわ。お兄様。」

「で?何でムスティが一緒にいるのか聞いてもいいか?」

「あのね。もうひとつの探し物はムスティなの。私‥ずっとムスティが何処に行ってしまったのか気になってたから‥」

「見つかったから連れてきただけじゃないだろ?」

「アーライ神様、ミリア姫が聖女を辞した時に聖女の最後の願いとして私と一緒になる事をお許し頂きたいのです。」

「何だと?ミリア‥それは本当か?」

「本当よ。私、聖女という名誉職よりも、ムスティと一緒に生きていく道を選びたいの。彼と色んな国を旅して暮らしたいのよ。ワガママだと思うけど‥私には、一生神殿で祈りを捧げるのは向いていないもの。」

「ロレッタ嬢次第だな。だがな、直ぐには無理だ。ムスティお前も一度こっちに戻って来なさい。風の賢者の席がまだ埋まっていないのは知っているな?お前が風の賢者になって後継者を育ててからならミリアを嫁に出してもいいぞ!」

「わかりました。今日からこちらに戻ります。後継者の目処はついてます故‥厳しく指導しましょう!」

「ミリアもそれでいいな?」

「はい。お兄様。ロレッタ様は明日にもこちらに呼び寄せますから面接お願い致します。」

「お前は明日からは花嫁修業に励め!いつまでも、ムスティにお茶を入れさせるわけにいかんだろ?」

「‥はい‥努力します。ジュビアでちょっと家事は出来るようになったんですよ?」

「まぁ、頑張ってなふたりとも。」

「「はい!アーライ神様!」」

◇◇◇◇

どうやら無事に話がまとまったようですね。

じいは嬉しゅうございます!

あのお転婆姫様が‥

お嫁に行きたいと言われるとは‥感無量です。

さて、皆様におやつを出しますかね。

姫様がジュビアからお土産に持ってきてくれたあんころ餅に合うお茶を淹れましょう。

アーライ神様はやはり最高ですな。

新しい聖女候補と風の賢者候補も確保して

お転婆姫も嫁に出す計画を進めるとは‥

じいがお仕えしているワガママ坊っちゃまにしては、中々やりますな!

今のは失言なので内密に!


  



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