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焼きたてパンと豚汁の香り◇渉の場合

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モカを急がせてパンを買いに行き君の待つ場所へ‥と言いたかったんだけど‥

夕暮れカフェはまさかの臨時休業!

モカと途方にくれながらマールガーデンへ。

クロワッサンと天使のフロマージュは、妹たちへのお土産にしよう。

◇◇◇

「いらっしゃいませ。あれ?渉さんとモカくんだ。おはよう!朝から来るの珍しいね。」

「マキちゃんおはよう!昨日飲み過ぎて潰れちゃったみたいで‥早起きして散歩に出たら二日酔いっぽくて珈琲飲みたくなってさぁ。」

「渉さん!二日酔いには味噌汁だって!珈琲飲むと尚更調子悪くならない?」

「あー。確かに!ここ味噌汁あるの?」

「残念ながらないです!今、凪に味噌汁ないか聞いてみようか?お腹空いてるなら和朝食の出前取る?」

マキちゃんは、いそいそと月雲で働いてる凪に連絡している。

今日はどんな惣菜があるか?と聞いてくれてるみたいだ。

凪ちゃんにちょっと夕陽の事も聞きたいし‥

月雲いこうかな?

そう考えていると、

「渉さん、凪が急いでないなら食べたい物あるか見に来てって言ってるけど‥何だったらモカくんちょっと置いて見てきたら?」

「マキちゃん悪いね。家にお土産がてら何か買いたいからちょっと見てくるわ。モカを宜しく。」

「はーい。ごゆっくり。」

◇◇◇

マキにモカを預けて、裏手にある月雲へ向かう。

ドアを開けるとすぐに

「渉さん、いらっしゃい。」と彼女に似ている笑顔で挨拶される。

彼女と凪は双子だから似ていて当たり前なんだが‥

今日は何故だか動揺する渉である。

「凪ちゃん、おはよう。昨日ちょっと飲み過ぎてな。マキちゃんから珈琲はやめて味噌汁飲みなよって言われたから‥」

そう言いながら凪がネギを刻んでいる手元をのぞきこんで、嬉しそうに

「それって豚汁?見てたら食欲わいてきたわ。」と言う渉に

「今日は、美味しい豚をもらったからね。一味違うよ?味見してみます?」と凪も嬉しそうだ。

味噌を入れたら完成のようだ。

山ほど刻んでたネギは好みでのせるらしい。

小さなお椀に豚汁を入れて渡してくれる。

味噌の香りを吸い込んだ瞬間、渉のお腹がグルグルーッグーッと鳴ったもんだからふたりで顔を見合わせて笑った。

味見した豚汁は腹に染み渡る旨さで思わず四人分持ち帰りで!

あと、お握りとだし巻き玉子と‥と続ける渉に

「あゆちゃんの好きな五色金平とほーちゃんの好きな鶏団子も入れようか?あとは‥おまけで小松菜の胡麻和えと大根漬け入れとくね。」

「有難う凪ちゃん!じゃあさ。代わりにパンいらない?さっきモカとパン買いに行ってきたから。焼きたてだからどうぞ。」

ハイジの山小屋の1番大きな袋に沢山入ったパンを見て何か思ったのか、

「有難う!おやつに食べて後は帰ってお姉ちゃんたちと分けるね!」と意味深に微笑む凪に

さっき通ったら臨時休業だったけどと聞いてみる渉。

お姉ちゃんたちは昨日からさざなみハイツの住人を連れてキャンプに行っていると教えられてがっかりする渉に、

「夕方には帰ってくるからね。明日にでも顔出してみたらいいよ。」と優しく告げる凪であった。





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