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秋のある日 夕暮れカフェにて

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今朝は夕陽ではなく、凪が珈琲を入れている夕暮れカフェです。

夕陽ちゃんは、渉さんと撮影会と云う名のデートへ。

「紅葉が美しい渓谷に君を連れて行きたいんだ、夕陽とか言っていいムードになるとか出来ないよね…

渉さんって…」

「うんうん!

お兄ちゃんはヘタレ!」

お手伝いに来てくれているあゆちゃんも、兄の弁護はしないようだ。

「凪ちゃんの入れる珈琲も好きだな」

あゆは、大きめのカップに注がれた珈琲をゆっくりと楽しんでいる。

開店はしているが、お客様は誰もいない為ふたりはのんびりとさざなみハイツの住人用のお弁当と夕食の仕込み中。

「お姉ちゃんは凄いなぁ」

「どうしたの?」

「毎日これを一人でやってるんだなぁと思って」

凪は大量に焚いたキノコご飯を弁当箱に詰めていく。

あゆは、おかずを住人の好き嫌いに合わせて選びながら詰めている。

「お弁当の卵焼きは甘めがいいよね!」

「そうそう、何かホッとするんだよ」

「何でだろうね?」

◇◇◇◇◇◇

お弁当を詰め終えたふたりは、朝食の時間。

お弁当の残りと夕食用の惣菜の中から好きな物を選んで食べるのだ。


卵焼きのはじっこや、人参しりしり、蓮根きんぴら、鯖の味噌煮、チーズ入りつくね、小松菜の煮浸し、肉豆腐。

「迷うわね。

ご飯も、キノコご飯にするか、銀シャリにするか…

ところで、凪ちゃん!

今朝のお味噌汁は?」

「今朝は、長ネギとじゃがいもとワカメの味噌汁だよ。

うちの父親が好きな組み合わせでね」

「そっかぁ…おじさんて元気なの?」

「多分ね。

今は仕事辞めて、奥さんと大学に通ってるみたいなの。

お祖父様から聞いたんだけど…」

「ふーん、まぁ奥さんと仲良くしてるならいいんじゃない?」

「うん…」

凪の父親の話はタブーではないが、今の凪達とはほぼ関わりがないので話題に出る事は少ないのだ。

「今日は真也さん来ないの?」

「どうだろ?

ゆう君の分はお弁当詰めたの?」

「うん…

お菓子作ってたら食べ忘れるから、後で朝昼兼用のお弁当持っていくよ」

リニューアルオープンしたムーンクラウドはパティシエとして裕翔が入り、真也がマネージャーとして店をまわしているのだ。

メニューは、スイーツが主でフードメニューは少なめなのだ。

食事を楽しみたいお客様方には、姉妹店である月雲をオススメしているので、

定番メニューには、カレー、ピザトースト、ホットドック位しかのせていない。

「あっ…

真也くんからメッセージ来た。

ゆう君と食べるからお弁当よろしくだって、凪ちゃんお願い出来る?」

「はいはーい。

真也さんて好き嫌いは?」

「好き嫌いあるみたいだけど、気にせず何でも食べさせてる!」

あゆちゃんは、真也と上手くいっているようですね。

「あゆちゃん、食べちゃおうよ。

さざなみハイツの朝寝坊チームが起きてくると忙しくなるから…」

凪が味噌汁を仕上げて、あゆがご飯をよそっていると…

「お腹空いたぁ、凪ちゃーん…

もうダメ…」

腹ぺこ怪獣がやってきたみたいだよ?

「ほらね!

あゆちゃん…

とりあえず食べようか」

「「いただきまーす」」

「私のは?」

「「セルフでお願い」」

腹ぺこ怪獣は、さざなみハイツに住んでいるので、朝食はビュッフェスタイルで提供しているのだ。

何故そうしたかと言うと、好き嫌いだったり、食べる量の違いから食べ残しが出たり、量を増やして欲しいと要望があったからなのだ。

ちなみに、昼のお弁当と夕食も予約制にしてある。

中には、生活が不規則な為三食ともお弁当を予約している住人もいる。

「お姉ちゃん達は何食べてるのかな?」

「朝市も撮影するって言ってたから、何か名物食べるんじゃない?」

「いいなぁ…デート」

凪もお出かけしたいみたいだね。

あゆちゃんはどうなのかな?

今度の定休日にデートしないとね!

◇◇◇◇◇◇

長い間お休みしていましたが、夕暮れカフェに出てきたメンバー達はみんな元気にしています。












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