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恋は冷めないうちに召し上がれ
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凪がいないと静か過ぎるなぁ‥
そう思いながらのんびり珈琲を飲む夕陽。
マイペースで喧しくてムードメーカーな妹。
ねぼすけな彼女が自分のやりたい事の為に頑張って早起きして仕事に向かうのを見てちょっとだけ感動を覚えたのだ。
目覚ましが鳴っても起きなくて、起こしてもまた寝てしまう位にとことん寝起きの悪い妹が‥
「あの子もようやく大人の自覚が出てきたのかしらね?今朝はピザトーストでも作ろうかな?」
鼻唄混じりに自家製のピザソースを仕込む。
いつもストックしてあるトマトソースに刻んで炒めた野菜と特製スパイスを足して煮込むだけなんだけどね。
何か足元にいる?
左足に違和感を感じて確認すると‥
猫が‥寝てますね‥
珍しいとこで寝てるなぁ。
「おはようございます!何か食わしてもらえますか?」
これまた珍しい!
さざなみハイツひきこもりNO.1の男がスーツ姿で現れたよ?
今日雨かな?
「ちょっと!夕陽さん失礼ですよ!」
えっ?何が?
「心の声駄々漏れですから!午後から雨なのは俺のせいじゃないですから!なぁ。しまぞう。」
男はしましまねこを撫でながら訴えてくる。
「こうちゃん!そんなにプンプンしないの。でっ?和食?洋食?」
「何かトマトソースのいい匂いするんだけど?」
「今ね。ピザソース作ってたからね。じゃあとりあえずピザトースト焼こうか?私も今から作るとこだったし。」
そう云いながら、珈琲を置いてやるとこうちゃんと呼ばれた男は黙って珈琲の香りを楽しむように目を細めながら
「いいですね。あと玉子トースト久しぶりに食べたいっすわ。それと夕陽さんがこの時期になると作るあのスープ?里芋入ってるあれ出来ます?」
「里芋あるから出来るよ。あれ好きなの?」
「何かうちの田舎じゃ里芋をスープに入れるって習慣がなかったから最初に食べた時は里芋だとは思わなくて‥何かはまったんですよ。本当に夕陽さんの作る料理って温かくて美味しくて俺はいつも癒されてるんで!」
「有り難うこうちゃん。そんな風に云って貰えると作りがいがあるよ。今年もこうちゃんの実家から沢山里芋送られてきたからね。有り難く使わせてもらってるよ。ちなみに今晩は里芋グラタンにするか、里芋コロッケにするか迷ってるんだよね。こうちゃんはどっちが食べたい?」
話しながらも夕陽は手を止めずに里芋の皮を剥いている。
「どっちも食べたいっす!あと里芋蒸かして辛味噌とチーズソースで食べるヤツ?美味しかったです。茄子とか蓮根とか南瓜とかも一緒の。」
「そうね。今夜はお任せプレートに里芋グラタンつけて、1品料理で野菜蒸し出そうかな。スープは大盛りでいいの?」
出来上がったスープをよそいながら聞く夕陽に
「勿論っす!お代わりもするんで宜しく!」と元気に答える男である。
こうちゃんと呼ばれている男の名前は、石動広大というのだ。
普段は部屋で仕事をしている事が多く、朝もほぼ起きてこないので夕食を食べに来る時に次の日の朝食分のお弁当やおにぎりを渡す事にしている。
基本、昼夜逆転生活な彼がこのように早起きしてスーツ姿で現れたるのは年に数回で普段はジャージを愛用している。
「きちんとすればこうちゃんも中々イケメンなんだよね。」と笑いながら夕陽が云うと
「本当ですか?それは夕陽さんの意見ですかね?熱っ‥」
猫舌なのか、思ったよりスープが熱かったのか広大は慌てて水を飲んでいる。
「一般的に見てイケメンなんじゃないの?私はよくわかんないけど‥こうちゃん綺麗な顔立ちしてるよ?」
「そうっすか?自分じゃよくわからないもんで。前の彼女の友達からは残念なイケメンて呼ばれてましたけど‥」
「グフッ。何それ?」
「笑いましたね?何か俺に会うたびに残念なイケメンだね。広大さんは!って言われ続けてたんですよね‥‥何だったんだろ?まぁ。彼女にフラれたのも俺が残念だったからなのかな?」
「こうちゃんは残念じゃなくて、何というか‥鈍感だったんじゃないの?多分彼女の友達がこうちゃんを好きでそれに気づいた彼女がこうちゃんをふったような気がするんだけど‥」
「わぁー。何なんすか?確かに彼女にフラれてしばらくしてからその友達に告白されましたけど‥何でそんな事わかるんですか?夕陽さんは?」
「あのね。さっきの残念なイケメンには隠された上の句みたいなもんがあるのよ。私の気持ちに気づかない残念なイケメンって事なのよ。」
「はぁ?何なんですかね。だいたい友達の彼氏好きになって別れたら告白してくるデリカシーのない女に残念とか言われたくないし!」
「こうちゃんのその真っ直ぐなとこがいいんだろうね。」
うんうん。と一人頷きながら広大のまえに熱々のピザトーストと玉子トーストを置いた。
「うまそーっ。熱っ。ヤバウマッ!」
猫舌なら冷ませばいいのにね。なんて思いながら夕陽もピザトーストをかじる。
スパイスを効かせたソースに絡むブロックベーコンとマッシュルーム。いい具合に溶けて絡まるチーズがたまらない!
二人はしばらく無言でピザトーストを堪能した。
そう思いながらのんびり珈琲を飲む夕陽。
マイペースで喧しくてムードメーカーな妹。
ねぼすけな彼女が自分のやりたい事の為に頑張って早起きして仕事に向かうのを見てちょっとだけ感動を覚えたのだ。
目覚ましが鳴っても起きなくて、起こしてもまた寝てしまう位にとことん寝起きの悪い妹が‥
「あの子もようやく大人の自覚が出てきたのかしらね?今朝はピザトーストでも作ろうかな?」
鼻唄混じりに自家製のピザソースを仕込む。
いつもストックしてあるトマトソースに刻んで炒めた野菜と特製スパイスを足して煮込むだけなんだけどね。
何か足元にいる?
左足に違和感を感じて確認すると‥
猫が‥寝てますね‥
珍しいとこで寝てるなぁ。
「おはようございます!何か食わしてもらえますか?」
これまた珍しい!
さざなみハイツひきこもりNO.1の男がスーツ姿で現れたよ?
今日雨かな?
「ちょっと!夕陽さん失礼ですよ!」
えっ?何が?
「心の声駄々漏れですから!午後から雨なのは俺のせいじゃないですから!なぁ。しまぞう。」
男はしましまねこを撫でながら訴えてくる。
「こうちゃん!そんなにプンプンしないの。でっ?和食?洋食?」
「何かトマトソースのいい匂いするんだけど?」
「今ね。ピザソース作ってたからね。じゃあとりあえずピザトースト焼こうか?私も今から作るとこだったし。」
そう云いながら、珈琲を置いてやるとこうちゃんと呼ばれた男は黙って珈琲の香りを楽しむように目を細めながら
「いいですね。あと玉子トースト久しぶりに食べたいっすわ。それと夕陽さんがこの時期になると作るあのスープ?里芋入ってるあれ出来ます?」
「里芋あるから出来るよ。あれ好きなの?」
「何かうちの田舎じゃ里芋をスープに入れるって習慣がなかったから最初に食べた時は里芋だとは思わなくて‥何かはまったんですよ。本当に夕陽さんの作る料理って温かくて美味しくて俺はいつも癒されてるんで!」
「有り難うこうちゃん。そんな風に云って貰えると作りがいがあるよ。今年もこうちゃんの実家から沢山里芋送られてきたからね。有り難く使わせてもらってるよ。ちなみに今晩は里芋グラタンにするか、里芋コロッケにするか迷ってるんだよね。こうちゃんはどっちが食べたい?」
話しながらも夕陽は手を止めずに里芋の皮を剥いている。
「どっちも食べたいっす!あと里芋蒸かして辛味噌とチーズソースで食べるヤツ?美味しかったです。茄子とか蓮根とか南瓜とかも一緒の。」
「そうね。今夜はお任せプレートに里芋グラタンつけて、1品料理で野菜蒸し出そうかな。スープは大盛りでいいの?」
出来上がったスープをよそいながら聞く夕陽に
「勿論っす!お代わりもするんで宜しく!」と元気に答える男である。
こうちゃんと呼ばれている男の名前は、石動広大というのだ。
普段は部屋で仕事をしている事が多く、朝もほぼ起きてこないので夕食を食べに来る時に次の日の朝食分のお弁当やおにぎりを渡す事にしている。
基本、昼夜逆転生活な彼がこのように早起きしてスーツ姿で現れたるのは年に数回で普段はジャージを愛用している。
「きちんとすればこうちゃんも中々イケメンなんだよね。」と笑いながら夕陽が云うと
「本当ですか?それは夕陽さんの意見ですかね?熱っ‥」
猫舌なのか、思ったよりスープが熱かったのか広大は慌てて水を飲んでいる。
「一般的に見てイケメンなんじゃないの?私はよくわかんないけど‥こうちゃん綺麗な顔立ちしてるよ?」
「そうっすか?自分じゃよくわからないもんで。前の彼女の友達からは残念なイケメンて呼ばれてましたけど‥」
「グフッ。何それ?」
「笑いましたね?何か俺に会うたびに残念なイケメンだね。広大さんは!って言われ続けてたんですよね‥‥何だったんだろ?まぁ。彼女にフラれたのも俺が残念だったからなのかな?」
「こうちゃんは残念じゃなくて、何というか‥鈍感だったんじゃないの?多分彼女の友達がこうちゃんを好きでそれに気づいた彼女がこうちゃんをふったような気がするんだけど‥」
「わぁー。何なんすか?確かに彼女にフラれてしばらくしてからその友達に告白されましたけど‥何でそんな事わかるんですか?夕陽さんは?」
「あのね。さっきの残念なイケメンには隠された上の句みたいなもんがあるのよ。私の気持ちに気づかない残念なイケメンって事なのよ。」
「はぁ?何なんですかね。だいたい友達の彼氏好きになって別れたら告白してくるデリカシーのない女に残念とか言われたくないし!」
「こうちゃんのその真っ直ぐなとこがいいんだろうね。」
うんうん。と一人頷きながら広大のまえに熱々のピザトーストと玉子トーストを置いた。
「うまそーっ。熱っ。ヤバウマッ!」
猫舌なら冷ませばいいのにね。なんて思いながら夕陽もピザトーストをかじる。
スパイスを効かせたソースに絡むブロックベーコンとマッシュルーム。いい具合に溶けて絡まるチーズがたまらない!
二人はしばらく無言でピザトーストを堪能した。
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