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番外編 パパのいない日曜日

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◇フレンチトーストは甘くない   

休日の朝の定番メニューのひとつであるフレンチトーストは、ママとななが大好きだからパパが幸せそうに作ってくれるんだけど…

今朝はパパが遠くの市場まで仕入れに行っていないのだ。

日曜日の朝だから仕事と保育園が休みのママとななは起きてくる様子がない。

お腹も空いたから自分で何か作ろうかな。

僕は冷蔵庫を開けて材料をひとつずつ確認していく。

これなら何とかなりそうだ。

卵、牛乳、シュレッドチーズ、ベーコン、マヨネーズ、粉チーズ、パン。

大きなボールを用意して卵を割り入れていく。

カラが入らないように注意しながらね。

牛乳と粉チーズ、マヨネーズ、塩コショウも適当に入れて混ぜていく。

綺麗に混ざったら3人分のパンをちぎって入れていく。

薄切りになっているベーコンをキッチンバサミで切りながら入れて全体を混ぜる。

電子レンジに入れても大丈夫な容器に移し変えて自動調理のボタンを押して調理スタート!

上手く出来るかな?

ドキドキしながら電子レンジの前で待ってみる。

卵とベーコンのいい匂いが漂ってくるからワクワクが止まらない。

チーンと調理終了を知らせる音がした。

美味しそうに湯気をたてている料理を確認した後、上からシュレッドチーズをたっぷりかけてチーズが溶けるまで加熱する。

熱々のフレンチトーストもどきの出来上がりだ。

さぁ。

ねぼすけを起こすか!

僕が寝室のドアを開けようとしたら、向こう側からドアが開いた。

「「いいにおいー。おなかすいた…」」

ママとななは匂いにつられて起きたみたい。

「早く着替えて、顔洗ってきてよ。冷めちゃうから…」

「「はーい」」

僕はママの為に冷たいカフェオレ、自分とななの為にオレンジジュースを用意した。

フレンチトーストもどきを取り分ける皿とナイフとフォークもセットした。

サラダも必要かな?と慌てて冷蔵庫からレタスとミニトマトを取り出して洗い、水気を切ってサラダボールに盛り付けた。

フレンチトーストが甘くないから甘い物も必要かな?と、もう一度冷蔵庫を開けて梨を取り出し皮を剥いていく。

果物の皮を綺麗に剥くのは包丁初心者の僕にはかなり難しい作業なのだ。

僕の後ろからママが静かに見守っているのがわかった。

無事、綺麗に皮が剥けたので六等分にカットしていく。

「カイト凄いじゃない!いつの間に皮剥き出来るようになったの?
ママ知らなかった…」

「梨を剥くのは今日が始めてだから、僕も自分が上手く出来るか分からなかったよ」

「そうなんだ…カイトは何でもササッと出来るからズルいよ!」

おかしい…褒められるはずが拗ねられたぞ?

ダメな息子の方がよいのか?

ママやななより後に起きてくる息子の方がよいのか?

まぁ…僕は僕だからな!仕方ない!

「お兄ちゃん!すっごーい!なな早く食べたい!」

ななが右手にフォークを持って目をキラキラさせてフレンチトーストもどきを見つめている。

「ふふっ。ななったら…食いしん坊ね!

カイトが作ってくれた朝ごはん冷めないうちにいただきましょうか。

カイトも座って!

いただきまーす!」

「「いただきまーす!」」

ママがフレンチトーストをななに取り分けている。

「わーい。おいしそう。ねぇ、お兄ちゃんメープルシロップかければいいの?」


「ひとくち食べてからにしたら?あっ…これ甘くないわよ?

ベーコンとチーズが入ってるからキッシュみたい!

カイト!これハマるわ」

「チーズトロトロでやわらかいピザみたい!おいしいよーお兄ちゃん!ピザソースかけてもいい?

メープルシロップはかけないことにする!」



ふたりとも意見が違うけど、気に入ってくれたみたいだ。

僕も食べようかな。

あっ!確かに、カリカリしてるとこはキッシュみたいでやわらかいとこはピザっぽいな。

これは、まだまだ開発の余地があるぞ。

カイトは食べながら色々考えているようだ。

パパがいない初めての日曜日、パパに留守を任されたカイトは無事に役目を果たせてよかったね。

カイトお疲れ様!





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