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忘れられた男は今…

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ザックは絶望していた。

地方の神殿で聖騎士としての修行をし、昇格試験に合格して無事に大神殿勤務になったというのに…

彼の絶賛片想い中の麗しの聖女マリアと第3王子であるエディアスが婚約間近であるという話を小耳に挟んだのだ。

何だって?

エリック様ならまだしも、エディアス様とは…

これは、もう俺には勝ち目は無かったんだな。

エディアス様は天才魔導師なだけでなく、政治的にも国を支えているお方だし…

彼が本気を出せば帝国も一瞬で滅ぶと言われている恐ろしい方だからな…

マリアさんは脳筋王子ではなく、腹黒王子を選んだのか…

エリック様はどうしているのだろう?

落ち込んでいないのだろうか?

ザックは自分の辛い気持ちを分け合うのに最適なエリックに会いたいものだと思いながら、大神殿勤務の心得について神官からの話を聞いていた。

ザックの担当はどうやら大神殿内部に国外から諜報員が入り込んでいないか調査したり、地方の神殿で不正が行われていないかを調査する暗部になるようである。

帝国で特殊部隊を率いていた事や地方の神殿で不正が行われていたのを内部告発した事がきっかけのようだ。

俺はやはり汚れ仕事が似合う男なのだな。

無垢で眩い輝きを放つマリアさんのような女性の隣に立てる男ではないか…

暗部の長と細かい打ち合わせをしていると、今後はザックが中心となり暗部をまとめて欲しいと懇願された。

暗部の長であるテオドールは地方住みの高位貴族の長男で大神殿ではなく、地方に転勤願いをずっと出し続けていたのだが、大神官様から君以外の任せられる人材が育つまでは暗部をまとめて欲しいと言われて長い間暗部から離れる事が出来なかったらしい。

今回の移動でようやく、自分の後を任せても安心な男がやってきたとテオドールは感動のあまり涙を流している。

テオドールは自分の領地に結婚を約束した女性をずっと待たせているのだとか。

しばらくは地方から大神殿に通う生活になりそうだが、君が慣れたら私は地方の神殿に本格的に移るから宜しく!と頭を下げられたザックは…

えっ?俺の婚期がまた遅れるって事?とため息をついた。

同じ大神殿勤務でも暗部の仕事柄、ほとんど大神殿には顔を出さないザックは未だマリアを遠目に見る事さえ叶わないのだ。

マリアさんのいる、この国の平和な未来の為に!

俺は仕事するぞ!

ひとり気合いを入れる男ザックはクールなイケメンであるが恋愛はサッパリである。

しばらくはマリアへの想いを胸に秘めたままなのであろう。

ザックの未来が幸せである事を神にお願いしてあげたくなる!と彼の片想いを察している聖女見習い達からは秘かに人気があるらしいのだが…

彼に直接アタックする猛者はまだ現れないようである。
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