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地下迷宮の章
第6話 青年は王女様を仲間にダンジョンの探索を始める
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レイトがドレス姿の女の子に体当たりすると、女の子が起き上がる。
どうやら横になっていたのは階段の上だったようだ。
ゲーム的にはよくあるシチュエーションなのか?
と、思いもしたわけだけど、
「そんなわけあるかい!」
と、思わず突っ込んでみるレイトだった。
気を取り直して会話を試みる。
「ここは? あなたは?」
「僕はレイト。君は?」
「私は王女クリスティーン。悪いウィザードにとらわれていたのですが、どうなっているのでしょうか?」
そこでレイトはざっとかいつまんで経緯を説明する。
「では、ウィザードはあなたが倒したのですね」
「そういうことになりますね」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
会話は進むがどうにも次のシナリオに進むフラグが立たない。
いや、視覚情報がゲームっぽいだけで現実らしいからシナリオとかフラグとかそういうんじゃないことはレイトにも判っちゃいるんだけど、ついついオタク的思考が先に立つ。
「ところでそろそろ移動しません?」
「え?」
「あー……お城に帰らないのですか?」
「ええ、帰りたい。そう! 帰りましょう」
それでもクリスティーンは動く気配がない。
レイトは仕方なくもう一度体当たりをした。
「ああ……でも私、さらわれた際に気を失っていたので帰り道が判らないわ」
これは困ったぞとレイトは悩む。
展開的にクリスティーンの倒れていた階段を登るだけなのは明らかだ。
問題は何をどうすれば彼女が動いてくれるかだ。
腕を組んで考えたいところだが、ドット絵は腕組みが用意されていないようで、それもできない。
不便な身体になったもんだ。
心の中で悪態をつきつつも、頭の中ではゲーム的コマンド選択を考える。
「一人では危ない。僕も元の世界に戻る方法を探しているところです。あなたの王国に行けば、その方法も見つかるかもしれない」
「そうね、私一人じゃ心細いわ。もし途中でモンスターに出会ってしまったらとても助かりそうにないもの。よろしくお願いするわね」
そういって王女様は初めて動き出し、レイトの後ろについた。
試しにぐるりと部屋の中を移動すると、その後をついてくる。
さて、これで先に進める。
と、思いはしたレイトだったけれど、これでは王女とコミュニケーションが取れないやと思い至った。
「どうすんのこれ」
思わず独り言をつぶやくと、後ろから声が聞こえる。
「どうかしましたか?」
便利な世界だ。
「いや、じゃあ行きましょうか」
「はい」
階段を登るとやたらSF感のある塔の屋上だった。
装置らしきものはフェンスのない屋上の端に置かれている。
風のエフェクトがあるたびに強い風を感じる。
こんなことはこの世界に来て初めてのことだ。
(これはあれだ。何かの条件とか、演出の類だろうな)
レイトは用心しながら一歩一歩と装置に近づく。
装置に体当たりするとBGMが鳴り止み、機械の起動音がした。
すると、屋上の中心に魔法陣らしき文様が浮かび上がって光りだした。
時折強い風の吹く中、レイトは王女が塔から落ちないように慎重に移動して魔法陣の中に入る。
「あ」
王女が一言漏らす間に視界全てが白一色になったかと思うと、重力のなくなる感覚が襲う。
次の瞬間、視界が真っ暗になって重力が戻ってきた。
「これはあれだ。テレポーテーションってやつだ」
さて、ここはどこだろうと目が慣れるのをじっと待っていたレイトだったけれど、一向に辺りが見えてこない。
「ここはどこでしょうね?」
「さぁ、こう何も見えないんじゃ判らないね」
「私、いくつかの魔法なら使えますの。待っていてくださいね」
王女はそういうと、短い呪文を唱えだした。
なんて言っているかは判らない。
きっと、魔法用の特殊な言語なんだろう。
やがて光が灯り、レイトは驚くことになる。
どうやらゲームシステム的な何かが根本的に変わったようだ。
視界にはワイヤーフレームで表示された3Dダンジョン。
原始的なFPSとでも言えばいいのか、むしろウィザードリィスタイルと言うべきか。
8bitパソコン時代ならごくごく一般的なRPGのシステムだ。
ウルティマの系譜でハイドライド調だったさっきまでの視界よりいくらか感覚に馴染む。
それはそうなんだが、一つ困ったことがある。
視界を振っても自分はもとより王女もいない。
これはこれでまたしっくりこない。
「つかぬ事をお聞きしますが王女様」
「なんですか?」
「王女様にはここはどのように見えているのでしょう?」
「どのようにと言われても、ただのレンガ造りの通路? これは……地下迷宮というやつかしら」
「ああ、そう見えるのね」
「どういう意味?」
レイトはその質問を無視してもう一つ質問する。
「ところで、王女様。先ほどの塔の中はどのように見えていたのでしょう?」
「また質問ですの? ええと……あら、おかしな世界だったわね。自分が見えていて、周りが一面見えていたような……」
「ああ、多少解像度的な違いがあったとして、ゲーム画面的なあの視界《ビジュアル》は僕だけの感覚じゃなかったんだ」と胸をなでおろす。
改めてダンジョンを観察してみよう。
ワイヤーフレームで構成された3Dダンジョンである。
表現としてはブラックオニキスのダンジョン画面に近い。
ただし、今まで同様ステータス表示などはない。
手持ちの装備は自分を見ることができないので細部は判らないが、鋭利な鉄の剣、鋼鉄の鎧、鉄の盾を装備しているのがなぜか判る。
大きな背負いカバンを視覚情報がない中手探りで調べると、力の石、知恵の石、守りの石、加護の十字架が入っており、回復薬、毒消し草、解毒薬がそれぞれ6つ6つ10個残っている。
そしておにぎりが10個。
果たして鑑定やいかに……ではなく、これでどれほど広いか判らないダンジョンを攻略できるのか?
「あれ?」
「どうかしましたか?」
これまた質問を無視して、レイトは体を動かす。
そう、これまでのドット絵と違って体が自由に動くのだ。
視覚がダンジョンマップに固定されているだけで、自由が利く。
「自由に体が動く!」
それは喜びの叫びだったわけだが、王女にすれば
「何を当たり前のことをおっしゃっているのですか?」
となる。
そりゃま、当然ですわな。
「そうだね。そうだけど、これは素晴らしいことなんだよ」
喜びをひとしきり噛み締めたレイトは、意気揚々とダンジョンの探索に繰り出すことにした。
どうやら横になっていたのは階段の上だったようだ。
ゲーム的にはよくあるシチュエーションなのか?
と、思いもしたわけだけど、
「そんなわけあるかい!」
と、思わず突っ込んでみるレイトだった。
気を取り直して会話を試みる。
「ここは? あなたは?」
「僕はレイト。君は?」
「私は王女クリスティーン。悪いウィザードにとらわれていたのですが、どうなっているのでしょうか?」
そこでレイトはざっとかいつまんで経緯を説明する。
「では、ウィザードはあなたが倒したのですね」
「そういうことになりますね」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
会話は進むがどうにも次のシナリオに進むフラグが立たない。
いや、視覚情報がゲームっぽいだけで現実らしいからシナリオとかフラグとかそういうんじゃないことはレイトにも判っちゃいるんだけど、ついついオタク的思考が先に立つ。
「ところでそろそろ移動しません?」
「え?」
「あー……お城に帰らないのですか?」
「ええ、帰りたい。そう! 帰りましょう」
それでもクリスティーンは動く気配がない。
レイトは仕方なくもう一度体当たりをした。
「ああ……でも私、さらわれた際に気を失っていたので帰り道が判らないわ」
これは困ったぞとレイトは悩む。
展開的にクリスティーンの倒れていた階段を登るだけなのは明らかだ。
問題は何をどうすれば彼女が動いてくれるかだ。
腕を組んで考えたいところだが、ドット絵は腕組みが用意されていないようで、それもできない。
不便な身体になったもんだ。
心の中で悪態をつきつつも、頭の中ではゲーム的コマンド選択を考える。
「一人では危ない。僕も元の世界に戻る方法を探しているところです。あなたの王国に行けば、その方法も見つかるかもしれない」
「そうね、私一人じゃ心細いわ。もし途中でモンスターに出会ってしまったらとても助かりそうにないもの。よろしくお願いするわね」
そういって王女様は初めて動き出し、レイトの後ろについた。
試しにぐるりと部屋の中を移動すると、その後をついてくる。
さて、これで先に進める。
と、思いはしたレイトだったけれど、これでは王女とコミュニケーションが取れないやと思い至った。
「どうすんのこれ」
思わず独り言をつぶやくと、後ろから声が聞こえる。
「どうかしましたか?」
便利な世界だ。
「いや、じゃあ行きましょうか」
「はい」
階段を登るとやたらSF感のある塔の屋上だった。
装置らしきものはフェンスのない屋上の端に置かれている。
風のエフェクトがあるたびに強い風を感じる。
こんなことはこの世界に来て初めてのことだ。
(これはあれだ。何かの条件とか、演出の類だろうな)
レイトは用心しながら一歩一歩と装置に近づく。
装置に体当たりするとBGMが鳴り止み、機械の起動音がした。
すると、屋上の中心に魔法陣らしき文様が浮かび上がって光りだした。
時折強い風の吹く中、レイトは王女が塔から落ちないように慎重に移動して魔法陣の中に入る。
「あ」
王女が一言漏らす間に視界全てが白一色になったかと思うと、重力のなくなる感覚が襲う。
次の瞬間、視界が真っ暗になって重力が戻ってきた。
「これはあれだ。テレポーテーションってやつだ」
さて、ここはどこだろうと目が慣れるのをじっと待っていたレイトだったけれど、一向に辺りが見えてこない。
「ここはどこでしょうね?」
「さぁ、こう何も見えないんじゃ判らないね」
「私、いくつかの魔法なら使えますの。待っていてくださいね」
王女はそういうと、短い呪文を唱えだした。
なんて言っているかは判らない。
きっと、魔法用の特殊な言語なんだろう。
やがて光が灯り、レイトは驚くことになる。
どうやらゲームシステム的な何かが根本的に変わったようだ。
視界にはワイヤーフレームで表示された3Dダンジョン。
原始的なFPSとでも言えばいいのか、むしろウィザードリィスタイルと言うべきか。
8bitパソコン時代ならごくごく一般的なRPGのシステムだ。
ウルティマの系譜でハイドライド調だったさっきまでの視界よりいくらか感覚に馴染む。
それはそうなんだが、一つ困ったことがある。
視界を振っても自分はもとより王女もいない。
これはこれでまたしっくりこない。
「つかぬ事をお聞きしますが王女様」
「なんですか?」
「王女様にはここはどのように見えているのでしょう?」
「どのようにと言われても、ただのレンガ造りの通路? これは……地下迷宮というやつかしら」
「ああ、そう見えるのね」
「どういう意味?」
レイトはその質問を無視してもう一つ質問する。
「ところで、王女様。先ほどの塔の中はどのように見えていたのでしょう?」
「また質問ですの? ええと……あら、おかしな世界だったわね。自分が見えていて、周りが一面見えていたような……」
「ああ、多少解像度的な違いがあったとして、ゲーム画面的なあの視界《ビジュアル》は僕だけの感覚じゃなかったんだ」と胸をなでおろす。
改めてダンジョンを観察してみよう。
ワイヤーフレームで構成された3Dダンジョンである。
表現としてはブラックオニキスのダンジョン画面に近い。
ただし、今まで同様ステータス表示などはない。
手持ちの装備は自分を見ることができないので細部は判らないが、鋭利な鉄の剣、鋼鉄の鎧、鉄の盾を装備しているのがなぜか判る。
大きな背負いカバンを視覚情報がない中手探りで調べると、力の石、知恵の石、守りの石、加護の十字架が入っており、回復薬、毒消し草、解毒薬がそれぞれ6つ6つ10個残っている。
そしておにぎりが10個。
果たして鑑定やいかに……ではなく、これでどれほど広いか判らないダンジョンを攻略できるのか?
「あれ?」
「どうかしましたか?」
これまた質問を無視して、レイトは体を動かす。
そう、これまでのドット絵と違って体が自由に動くのだ。
視覚がダンジョンマップに固定されているだけで、自由が利く。
「自由に体が動く!」
それは喜びの叫びだったわけだが、王女にすれば
「何を当たり前のことをおっしゃっているのですか?」
となる。
そりゃま、当然ですわな。
「そうだね。そうだけど、これは素晴らしいことなんだよ」
喜びをひとしきり噛み締めたレイトは、意気揚々とダンジョンの探索に繰り出すことにした。
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