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始まりの島の章
第3話 青年が目覚めると、そこはよくある村だった
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目覚めたレイトは目をこすりたくなった。
もっともこするギミックがないので、することはできない。
昔のゲームらしきものに吸い込まれてさまよった洞窟迷宮から脱出したはずだった。
その手の小説や漫画を思い返せば、さすがにたった数時間で元の世界に戻ってこれるなんて甘い考えは持ってない。
たぶん地上世界が待っているだろうと考えながら出口に入った。
「出口に入ったとか、日本語としてどうかと思うけど……」
日本語としてはどうかと思うけれど、ゲーム画面の説明的には間違っていない。
「……さて」
現状である。
レイトは部屋の中にいた。
相変わらずドット絵の世界だ。
しかし、さっきとは様子が違う。
「……あ・色数が増えてる! キャラクターを構成しているドット数も増えてるわ」
相変わらずレイトの視覚はゲーム画面を見ているように正面を向いた自分を中心に背景がある。
部屋の外が黒くて判らないのは地図情報がないからだろう。
自分を構成しているドットは32×32ドットに増えているし、中間色表示がされている。
ただ、同時に表示されている色数は多くないようで、同時発色数16色ってやつだろう。
なにせドット絵なので元の自分の特徴が出ていると言えるかは微妙だったけれど、自分であるという認識はある。
そして、なぜかパン一だ。
部屋にはベッドとタンスがあるだけ。
「とりあえず体当たりか?」
自分の隣にあるベッドに体当たりをしようとすると、今度は自分が横向きのキャラクターに変わる。
「うえぇ……横向きの自分が見えるとか、ゲシュタルト崩壊しそうだ」
グッとこらえて体当たりをすると、「ねる」「やめる」の選択肢が頭の中に浮かぶ。
彼は「やめる」を選択してタンスを調べることにした。
移動は洞窟の時と違いドット単位で動いて見える。
もっとも1移動単位は半キャラ分で変わっていない。
タンスの中には「ぬの の ふく」があって、「きる」「やめる」の選択肢が頭に浮かぶ。
当然「きる」を選択するとパン一から味気ない白い服に変わる。
「まぁ、良しとしよう」
落ち着いた彼は、BGMが変わっていることに気がついた。
さっきより音が綺麗でステレオだ。
「FM音源だな」
レトロゲームのマニアでもある彼は、誰もいないのに得意そうに言う。
ドアに体当たりするとSEが鳴ってドアが開く。
廊下があって上下にドアがある。
「……気にはなるけど、たぶんただの部屋だろうな」
レイトはドアには目もくれず廊下の突き当たりを曲がって階段を降りると、画面が切り替わる。
一階にはおじさんが立っていた。
「…………」
しばらく待ってみたが、なんの反応もないので仕方なくおじさんの前に立ってみる。
「…………」
やっぱり反応がない。
レイトは頭をかきたかったが、できるわけもなく、ため息ひとつついた後、おもむろに体当たりした。
「おぉ若者よ、気がついたか」
一応、音で会話ができるようだ。
「おかげさまで」
と、レイトは答えるがそれっきり反応がない。
「…………」
もう一度体当たりをすると
「お前さんが悪魔の祠の前で倒れているとこをたまたま見つけて村まで連れ帰ってきたのだ。感謝したまえ」
と、おじさんが言う。
「それはどうもありがとうございます」
と、お礼を言ったがやはりそれきり反応がない。
「……これ、返答する意味なくない?」
「そんなことはないぞ」
と、次に体当たりした時おじさんは言った。
「体当たりしないと反応できないだけで、ちゃんと会話は成り立つ」
面倒臭いなぁと思いつつレイトは会話を続けることにした。
だって他にできることないじゃないか。
「ここはどこですか?」
「ここはハジマリの島サイショノ村だ」
「始まりの島?」
「アクセントが違う。ハ→ジ↑マ↓リ↓の島だ」
「…………」
「何か問題でも?」
「……いえ」
「お前さんどうしてあんなところに倒れていたんだい?」
レイトは事の経緯を説明する。
「なるほど、お前さん『異世界の旅人』だったのか。と言うことは『世界の危機』が迫っているのだな。若者よ、この村は結界によって守られているので強いモンスターはいないが、代わりに島を出ることがとても難しい。三十五年前にも『異世界の旅人』が現れたとことがある。島を冒険するがいい。きっとヒントが隠されている」
会話文がセリフ調なのはゲーム的説明ゼリフだからだろうか?
などと思いながらレイトは話を続ける。
「この世界に来た時、剣や鎧を装備していたのですが、知りませんか?」
「ん? 発見した時はパンツ一枚で倒れていたぞ」
(外でパン一……恥ずかしすぎる)
と顔から火が出るこころもちだったが、ドット絵の自分は顔を赤らめることもなく、会話は進んでいく。
「弱いと言ってもこの島にもモンスターはいる。武器も持たずに村の外に出て行くのは危険すぎるから、これをあげよう」
と、おじさんに渡されたのは「こんぼう」と50ゴールドだった。
中世ヨーロッパ風と言われるファンタジー世界で棍棒はないだろう。
時代設定間違ってんじゃないの?
と、思ったことは口にせず、レイトはお礼を言う。
ただで物をもらったのだから当然だ。
「ありがとう。おじさん」
「なんのなんの」
おじさんの家を出ると、そこは村だった。
村の中を見て回ると、いくつかの民家が点在し、武器屋・防具屋・何でも屋と言う三軒の店屋と宿屋が一軒あるだけだった。
レイトは「基本は自給自足なのだろう」と、納得して何でも屋に入る。
「いらっしゃい」
カウンター越しに店の親父に体当たりすると「かう」と「うる」が選択できる。
品揃えとしては「やくそう」「かいふくやく」「どくけしそう」の三つしか置いていない。
「他にはないのか?」
独り言のつもりでつぶやいたレイトだったが、会話フラグが立ったようだ。
「レベルが上がれば買えるものも増えるよ」
という。
そんなものかととりあえず「やくそう」を三つ買うことにした。
「9ゴールドです」
村人が金貨で売買をすると言うことに若干のモヤモヤを感じるもののゲーム世界だと無理やり自分に言い聞かすレイトだった。
買い物といってもお金を渡したとか、商品を受け取るといったやり取りがあるわけじゃない。
そんなわけなので、これが現実のことなのか、ゲームの世界なのか、はたまたお馴染みの異世界召喚ものなのか今ひとつ判然としないレイトだった。
薬草を手に入れると、自然とどう使えばいいのかが理解できる。
ついでに薬草の効果が判った。
唐突に理解したのか思い出したのか、そこらあたりの原理もさっぱりだ。
悩むと先に進まないので「そういうものだ」で済ませることにしたあたり、レイトはやっぱり主人公の素質があったのだろう。
何でも屋を出ると次は武器屋に入る。
さすがに武器が棍棒では心細い。
同じ手順で商品を確認すると「こんぼう」「たんけん」の二種類しかない。
しかも、値段が驚くほど高い。
「武器はやっぱり高いな」
武器でこれならと、一応確認した防具屋でも「き の たて」「かわ の たて」の二種類で、今のレイトにはとても買える金額じゃあなかった。
「仕方ない。諦めて村を出るか」
レイトは防具もなく棍棒一本手に持った状態で村を出ることにした。
もっともこするギミックがないので、することはできない。
昔のゲームらしきものに吸い込まれてさまよった洞窟迷宮から脱出したはずだった。
その手の小説や漫画を思い返せば、さすがにたった数時間で元の世界に戻ってこれるなんて甘い考えは持ってない。
たぶん地上世界が待っているだろうと考えながら出口に入った。
「出口に入ったとか、日本語としてどうかと思うけど……」
日本語としてはどうかと思うけれど、ゲーム画面の説明的には間違っていない。
「……さて」
現状である。
レイトは部屋の中にいた。
相変わらずドット絵の世界だ。
しかし、さっきとは様子が違う。
「……あ・色数が増えてる! キャラクターを構成しているドット数も増えてるわ」
相変わらずレイトの視覚はゲーム画面を見ているように正面を向いた自分を中心に背景がある。
部屋の外が黒くて判らないのは地図情報がないからだろう。
自分を構成しているドットは32×32ドットに増えているし、中間色表示がされている。
ただ、同時に表示されている色数は多くないようで、同時発色数16色ってやつだろう。
なにせドット絵なので元の自分の特徴が出ていると言えるかは微妙だったけれど、自分であるという認識はある。
そして、なぜかパン一だ。
部屋にはベッドとタンスがあるだけ。
「とりあえず体当たりか?」
自分の隣にあるベッドに体当たりをしようとすると、今度は自分が横向きのキャラクターに変わる。
「うえぇ……横向きの自分が見えるとか、ゲシュタルト崩壊しそうだ」
グッとこらえて体当たりをすると、「ねる」「やめる」の選択肢が頭の中に浮かぶ。
彼は「やめる」を選択してタンスを調べることにした。
移動は洞窟の時と違いドット単位で動いて見える。
もっとも1移動単位は半キャラ分で変わっていない。
タンスの中には「ぬの の ふく」があって、「きる」「やめる」の選択肢が頭に浮かぶ。
当然「きる」を選択するとパン一から味気ない白い服に変わる。
「まぁ、良しとしよう」
落ち着いた彼は、BGMが変わっていることに気がついた。
さっきより音が綺麗でステレオだ。
「FM音源だな」
レトロゲームのマニアでもある彼は、誰もいないのに得意そうに言う。
ドアに体当たりするとSEが鳴ってドアが開く。
廊下があって上下にドアがある。
「……気にはなるけど、たぶんただの部屋だろうな」
レイトはドアには目もくれず廊下の突き当たりを曲がって階段を降りると、画面が切り替わる。
一階にはおじさんが立っていた。
「…………」
しばらく待ってみたが、なんの反応もないので仕方なくおじさんの前に立ってみる。
「…………」
やっぱり反応がない。
レイトは頭をかきたかったが、できるわけもなく、ため息ひとつついた後、おもむろに体当たりした。
「おぉ若者よ、気がついたか」
一応、音で会話ができるようだ。
「おかげさまで」
と、レイトは答えるがそれっきり反応がない。
「…………」
もう一度体当たりをすると
「お前さんが悪魔の祠の前で倒れているとこをたまたま見つけて村まで連れ帰ってきたのだ。感謝したまえ」
と、おじさんが言う。
「それはどうもありがとうございます」
と、お礼を言ったがやはりそれきり反応がない。
「……これ、返答する意味なくない?」
「そんなことはないぞ」
と、次に体当たりした時おじさんは言った。
「体当たりしないと反応できないだけで、ちゃんと会話は成り立つ」
面倒臭いなぁと思いつつレイトは会話を続けることにした。
だって他にできることないじゃないか。
「ここはどこですか?」
「ここはハジマリの島サイショノ村だ」
「始まりの島?」
「アクセントが違う。ハ→ジ↑マ↓リ↓の島だ」
「…………」
「何か問題でも?」
「……いえ」
「お前さんどうしてあんなところに倒れていたんだい?」
レイトは事の経緯を説明する。
「なるほど、お前さん『異世界の旅人』だったのか。と言うことは『世界の危機』が迫っているのだな。若者よ、この村は結界によって守られているので強いモンスターはいないが、代わりに島を出ることがとても難しい。三十五年前にも『異世界の旅人』が現れたとことがある。島を冒険するがいい。きっとヒントが隠されている」
会話文がセリフ調なのはゲーム的説明ゼリフだからだろうか?
などと思いながらレイトは話を続ける。
「この世界に来た時、剣や鎧を装備していたのですが、知りませんか?」
「ん? 発見した時はパンツ一枚で倒れていたぞ」
(外でパン一……恥ずかしすぎる)
と顔から火が出るこころもちだったが、ドット絵の自分は顔を赤らめることもなく、会話は進んでいく。
「弱いと言ってもこの島にもモンスターはいる。武器も持たずに村の外に出て行くのは危険すぎるから、これをあげよう」
と、おじさんに渡されたのは「こんぼう」と50ゴールドだった。
中世ヨーロッパ風と言われるファンタジー世界で棍棒はないだろう。
時代設定間違ってんじゃないの?
と、思ったことは口にせず、レイトはお礼を言う。
ただで物をもらったのだから当然だ。
「ありがとう。おじさん」
「なんのなんの」
おじさんの家を出ると、そこは村だった。
村の中を見て回ると、いくつかの民家が点在し、武器屋・防具屋・何でも屋と言う三軒の店屋と宿屋が一軒あるだけだった。
レイトは「基本は自給自足なのだろう」と、納得して何でも屋に入る。
「いらっしゃい」
カウンター越しに店の親父に体当たりすると「かう」と「うる」が選択できる。
品揃えとしては「やくそう」「かいふくやく」「どくけしそう」の三つしか置いていない。
「他にはないのか?」
独り言のつもりでつぶやいたレイトだったが、会話フラグが立ったようだ。
「レベルが上がれば買えるものも増えるよ」
という。
そんなものかととりあえず「やくそう」を三つ買うことにした。
「9ゴールドです」
村人が金貨で売買をすると言うことに若干のモヤモヤを感じるもののゲーム世界だと無理やり自分に言い聞かすレイトだった。
買い物といってもお金を渡したとか、商品を受け取るといったやり取りがあるわけじゃない。
そんなわけなので、これが現実のことなのか、ゲームの世界なのか、はたまたお馴染みの異世界召喚ものなのか今ひとつ判然としないレイトだった。
薬草を手に入れると、自然とどう使えばいいのかが理解できる。
ついでに薬草の効果が判った。
唐突に理解したのか思い出したのか、そこらあたりの原理もさっぱりだ。
悩むと先に進まないので「そういうものだ」で済ませることにしたあたり、レイトはやっぱり主人公の素質があったのだろう。
何でも屋を出ると次は武器屋に入る。
さすがに武器が棍棒では心細い。
同じ手順で商品を確認すると「こんぼう」「たんけん」の二種類しかない。
しかも、値段が驚くほど高い。
「武器はやっぱり高いな」
武器でこれならと、一応確認した防具屋でも「き の たて」「かわ の たて」の二種類で、今のレイトにはとても買える金額じゃあなかった。
「仕方ない。諦めて村を出るか」
レイトは防具もなく棍棒一本手に持った状態で村を出ることにした。
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