かぶと虫

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かぶと虫番外編でございます

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かぶと虫番外編でございます。

実話を元にしたフィクションです。

是母、楽しんで読んで頂ければ光栄です。




かぶと虫


青い空はどこまでも広くて、今日も穏やかな波の音が気持ちいい。


妻 ね、今日は全然釣れないね
  
夫 珍しいなぁ


妻 そうそう、珍しいと言ったらもう何年前に
  なるかしら?
  娘夫婦が転がり込んできたね急に

夫 あー……何だか世間の不況でだったか
  

妻 賑やかだったね、あの頃……



いつものお決まりの釣り、他愛のない会話

歳をとった所為か、つい思い出話が始まるー






娘 パパ、少しの間お世話になって良い?

夫 何だ急に

娘 最近変な😷が流行ってから、
  仕事の量も減って赤字続きで
  貯金も減る一方で、
  お金も借りるわけには行かないし……
  少しの間実家でお世話になりたくて、
  お金貯まるまで、お願いっ


夫 ......


娘 ねーママ、助けてよ

妻 パパ、大変だけど仕方がないじゃ無いの

夫 あぁ……お金が貯まるまでなら
  無駄遣いをせずに、約束だぞ

娘 ありがとう!助かる~!


娘は一年前に結婚したがまだ子宝には恵まれておらず婿との二人が同居することになった。


これで妻も私と二人きりでは無いので、口うるさいのも減るだろう。

と、期待していた私だったが……

娘夫婦の最小限の引越しも終わり、小さい我が家は荷物だらけになってしまった。

幸い子供部屋はそのままにしていたので、そこが二人の寝室になった。

夫 おい少しは片付けてくれないか、
  ここはリビングだろう!
  テレビ棚の周りに物を置かないで欲しい

  (ほんとにいい加減だ、冷蔵庫と一緒だ)


妻 人が増えたら荷物も増えるの!
  置くとこ無いでしょ!文句あるのなら
  あなたは毎日うるさいのよね、
  なにもしないくせにっ

  (ほんとに鬱陶しい)


夫 犬の散歩に行ってるじゃ無いか!元々お前が     
  連れてきた犬だろ、人に押し付けて
  無責任なんだ!

 (ほんとに腹が立つ) 

妻 何の話?片付けとそれとは別にの話、
  何でも一緒にしないでよ!

 (くそジジイうるさい)

娘 なに大きな声出してるの?
  また喧嘩してるの、仲良くしてよ


妻 パパがねリビングの荷物片付けろって
  あなたにゆうてるの
   

娘 え~部屋狭いからパパが棚作ってよ!
  

夫  ......    (娘には言ってないのに)

娘までが私を暇人扱い……

言い返せないまま次の日娘の部屋に棚を作った

お陰でテレビの周りの荷物は片付いたものの

娘は妻とまったく同じ口調になってきている

この先が思いやられる……








夫 おい、浮き輪沈んでる。引いて

妻 わー!やっとね!
  ……切れちゃった!

夫 相変わらず下手だなぁー




相変わらず下手くそな妻の釣り糸と一緒に、娘の過去話も途切れ変わらない妻にふと笑みが溢れる




妻 さっさと餌つけてよ 
  
  (何よ、腹が立つ)


夫 はいはい



妻 ニヤニヤ気持ち悪い、早くして

夫 変わらないな、そうそう変わらないといえば
  娘話の続きだか……



妻 今日の夜ご飯何にする?

夫 肉じゃがと焼き魚

妻 .....  (あなたに聞いて無いのに)

夫 (聞こえてないのか、無視されたのか?)

娘 え~!作ってくれるの今日。ありがとう!
  何でもいい、ママのご飯美味しいから


妻のそっけない反応にその日の夕食はあまり期待していなかった。


妻 ご飯できたよー!


テーブルに並べられた料理


ほかほかの肉じゃが、焼き魚、定番のほうれん草のお浸し……


(肉じゃがと焼き魚……)


聞こえていたんだな、

メニューを見てホッとする、


妻 なにニヤニヤしてるの気持ち悪い
  早く食べてね。

  (あなたの為に作ったんじゃないわ
   メニューが浮かばなかっただけよ)



賑やかな夕食が始まる

温かいひと時の時間だった



妻 いつまで飲んでるの?


妻の言葉を合図にほうれん草をおかずに白飯を駆け込み、寝室に逃げ込む。


今度は思い出の妻とは違う、朗らかな妻の声で意識を引き戻される。



妻 ちょっとパパ、釣れてるよ!見て見て!

夫 大物だなー

妻 わー!鯛かなぁ

夫 ここでは鯛は釣れないよ

結局、釣れたのは少し大きめのアジだった。

妻 今日はこれで帰ろうよ

夫 そうだな


大きいクーラーボックスに少しだけ大きめのアジ


妻 今日は南蛮漬けね



変わらない妻と相変わらずの毎日

















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