幼なじみの男の子は男らしい女の子で女っぽい幼なじみは男でした

常陸之介寛浩☆第4回歴史時代小説読者賞

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第三章 普通

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空いていた日当たりの良い席で母さんが作った弁当を食べ出すと、ミーも外見には似つかわしくない世界で一番有名であろう赤いリボンを付けた猫のキャラクターの弁当箱を待っていましたとばかりに開けた。

ヒロも外見に似つかわしくない、俺よりも大きなガテン系弁当をひろげて「いただきます」と可愛らしく胸の前で手を合わせて食べ始めた。

一口が意外なほど大きい、なぜかその光景に懐かしさを感じ見入ってしまうと恥ずかしそうに顔を背けた。

「意外かな?」

「ん?」

「大食いなの」

「いや、なんかそんなことより、既視感ってやつのが・・・・・・」

痩せの大食い、美少女の大食い、別に昨今じゃ珍しくもない。

それにヒロミは男、俺より背は低くて華奢でも食べ盛りかもしれない。

大きな弁当、大きな一口、そんなことよりなにか引っかかる既視感。

「下僕は幾万年も寝過ぎていて、その様な事も忘れたのか?」

「幾万年も寝ていたら人間の前の原人だろうな、恐竜だって生きていそうだな」

はははっと軽い笑いで受け流すヒロ

「幼稚園の頃も4人グループ席で食べていたんだよ」

「そうだっけ?なら千陽もくれば揃うな」

「今日はどうしたの?」

「風邪だ。朝見て来たけど、大したことはないんじゃないかな。帰りにも見に行くけど」

「あの頃みたいだね。チーちゃんは風邪ひきさんだったから」

「そうだったっけ?」

「もう、チーちゃんのことくらいちゃんと覚えてないと駄目じゃん」

よく野山を走り回り泥だらけになって遊んでいた記憶の方が強い。

しゃべりながらも大きな一口が進むヒロと、咀嚼の最中は静かなミーの姿が可愛かった。

弁当を食べてお茶をごくりと飲むと、

「雑音が五月蠅かったら、ここを使えば良いのだ。蝿などかまっているから勇者はルシファーに連れて行かれたのだ」

「はい?」

聞き返すとまた咀嚼して静かになるミー。

「リュウちゃん、僕らは慣れているけどさ、人の目って煩わしいよね。昨日の事、噂で聞いたよ。僕も何気にあるんだよね、同性の告白、でも僕、女の子好きだし」

「下僕、他の女と契約を結んだら全身に流れる血を飲み干してやる」

千陽は箸をバシッと置いて立ち上がり興奮気味に言う。

「はいはい、御主人様、僕はいつまでも下僕ですから、それより早く食べましょうね。食べるの遅いんだから」
「ん?もしかして、2人付き合っているのか?」

「そのような下々の言葉を使うな、魂で結ばれているのだ」

「わかったから早く食べてよ、ミーちゃんは。リュウちゃんは、お昼はここに来ると良いよ。僕たちいつもここだよ」

「2人で過ごす楽しいランチに邪魔してないか?」

「ううん、良いの。ずっと2人だったから・・・・・・でも4人に戻れるかな?その方が楽しいし、約束もしてたじゃん」

「地獄から帰ってきた漆黒の勇者と共に」

ん?なにか大切なワードが出て来たと思って聞き返そうとしたら、ミーに話の腰を折られた。

「ミーは静かに飯食べてろ」

なかなか減らない弁当のゴスロリ娘にヒロと一緒に苦笑いを見せる。

俺のガバガバ設定も固めて欲しい。

「リュウちゃんさ、朝、殴りかかろうとしたでしょ?チーちゃん、そんなん聞いたら悲しむと思うよ。またかって」
「なぁ~俺の欠落している記憶になんかあるのか?」

「・・・・・・忘れたなら忘れていた方が良いことだってあるよ」

「異世界転移するときにバグったのだろう下僕は」

ヒロはミーに早く食べないと時間終わっちゃうよと促していた。

「なんかよく思い出せないけど、まっ、つまらねぇの殴って退学になったら海外からわざわざ帰国して、同じ高校に来た千陽に顔向け出来ないからな、雑音避けに使わせて貰うか、今朝のことは内緒にしといてくれ」
「うん、わかっているよ。黙っておくのが良いこともあるしね」

「凍る時の部屋で飯・・・・・・」

「・・・・・・ミーちゃん時間止まってないからね。あと五分だよ」

上品に可愛らしい小さなお弁当をゆっくり食べるミーを急かす、大食い美少女のやり取りが妙に懐かしく怒っていた事を忘れさせてくれる昼休みになった。

放課後、電車の中からメッセージを千陽に送る。

『調子どうだ?なにか買って行くか?』

スマートフォンを抱えていたのかすぐに既読になり、

『うん、大丈夫。熱も下がったし、買い出しもお祖父ちゃんお祖母ちゃんしてくれたから』

『まぁ、帰り寄る』

『俺の顔見られなくて一日寂しかったんでしょ?』

『ばーか』
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