幼なじみの男の子は男らしい女の子で女っぽい幼なじみは男でした

常陸之介寛浩☆第4回歴史時代小説読者賞

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第三章 普通

3-12

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小さな声の雑音は心には重くずしりと刺さる。

なにも耳に入らなかった。

俺には聞かなかった・・・・・・無視することは出来なかった。

千陽に向けられた悪意、それは俺の事を言われるより許せない。

怒りの発火点は化学反応のごとく一気に爆発、突撃しようとした瞬間・・・・・・ブレザーの裾をガッツリと掴む小さな影。

「我は汝と戯れる、来てやったぞ。喜ぶが良い」

「はぁ?今、それどころじゃねぇ~んだよ゛。あいつらが千陽の陰口を」

「陰口など下世話の下等な生き物がすること。崇高なる吸血鬼の一族はその様な下等な者を相手はしてにならんぞ、汚れる」

ゴスロリに改造ブレザーを羽織るミーはお洒落眼帯を外すとカラーコンタクトであろうオッドアイと呼ばれる左右の違った目でふざけた言葉とは裏腹に強く強くしっかりとした目で見てきた。

誰にでも聞こえる大きな声をこの小さな体でよく出せるな?

雑音が一気に静まりかえった。

「あっ、やっぱりこっち来てた。リュウちゃん、おはよ。ほら、ミーちゃん昔じゃないんだから、チーちゃんの事で殴りかかるほど子供じゃないって」

「下僕はチー子の事となると見境がなくなるからの」

「ちょっと、お前なに言ってんだ?」

神峰時見と磐城広巳の言葉が妙に引っかかった。

化学反応を起こしてしまった怒りを一気に水で中和するかのごとく。

「あ~やっぱり覚えてないよね。あれだけの大立ち回りして次の日寝込んだんだもん。なんか、少し噂が聞こえてきてね、ミーちゃんが様子見たいって教室出て行っちゃって慌てて追いかけて来たんだから」

「ちょっとヒロ?お前はなにを言ってるんだ?」

「そのことはリュウちゃんは思い出さない方が良いって。それより、陰口しか叩けない人なんて所詮、便所の落書きと一緒だから、SNSでイキがっている人達、ニュースで昨今話題の名誉毀損で氏名特定されて訴えられる人達と一緒。リュウちゃんが相手するほどじゃないって」

大きな声でみんなに聞こえるように言う美少女姿の男の娘、ヒロミのほうが俺よりも男らしく感じた。

こそこそと千陽の陰口をささやいている奴らよりも、明らかに清々しいほど男らしかった。

「下僕よ、主の命に背いて戦いをするなぞ我が許さんぞ、謀反は重罪ぞ」

言い残すと教室を出て行くミー、そして、

「子供の頃は許されたけど今は高校生、大人と子供の間なんだよ。だから、もう暴力は駄目」

耳元で優しく呟くヒロは、今度は女の子っぽくて耳がこそばかゆかった。

「ふーーーっ」

「バカ、お前なにすんだよ」

「その顔ならもう大丈夫だね」

微笑みの美少女も漆黒のゴスロリに続くように出て行った。

静まりかえった教室の居心地は最悪極まりない空間。

この空間は俺を異世界の住人として反発しているかの空気。

異世界に紛れてしまった俺を・・・・・・千陽と俺を・・・・・・ヒロとミーも異者として見るかのごとく。

休み時間のたびにちょこちょこと顔を出しては微笑みを見せるヒロ、昼休みに異世界から抜け出したく教室を出ると待っていましたとばかりに手招きをしてきた。
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