幼なじみの男の子は男らしい女の子で女っぽい幼なじみは男でした

常陸之介寛浩☆第4回歴史時代小説読者賞

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第一章  高校入学

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朝食を済ませて自転車をこいで、常磐線に乗り学校へ。

これから3年間通い続ける合計30分の道。

3年間の学校生活✕30分✕2(往復)=何時間?

そんな無駄な計算を考えると、なんだかけだるく感じた。

「はぁ~~~」

「ため息を出すと幸せが減るよ」

そう笑う千陽を見ると違和感?なんだ?

「どしたの?ジッと見て」

「いや何だろ?なんか違和感が?」

「あ~これ?初めのうちに誤解を解いておくのにね。あんまり好きじゃないんだけど」

くるりと回ってみせるひらひらの膝丈スカートに黒いタイツ・・・・・・。

「なっ、あっ・・・・・・女だもんな」

「似合わないよね?」

「・・・・・・そのなんだ、足細いから・・・・・・似合ってるぞ」

ポッと音が鳴りそうなほど顔を真っ赤に染める千陽がなんだか可愛らしかった。

「バカ」

細い足は意外と怪力で、俺の尻を真っ二つにする勢いで蹴られた。

黒タイツ好みだと言いたかったが、言うと絶対図に乗りそうだ、こいつは。

悔しいから黙っておく、これ見よがしに

「リュウちゃんの為に穿いてあげたんだからね!感謝しなさい」

などと言う、ツンデレ幼なじみが俺の人生に登場しそうな予感がした。

口にしない方が良いだろう。

それより、この細い足は凶器だ。

「いったっなにすんだよ」

「ムエータイキックの練習」

「んなのすんなバカ、だいたいムエータイってタイじゃないのかよ何なんだよ」

「タイにもいたから」

ニヤニヤと笑う千陽はフットワークが良さそうですねって褒めてあげたい。

きっと反復横跳びも得意なんだろうな。

シュッシュと言いながら前後左右に跳ね飛ぶ、そんな競技なんだっけ?格闘技に詳しくない俺は、それ以上のツッコミが出来なかった。

ん~あとで動画検索してみようかな。

痛いがぶつくさ言える相手が言える充実感が不思議と心地が良い。

「ねぇ~それより、リュウちゃんのジーンズのほうが可笑しいって、なんで、招き猫刺繍されているの?」

「俺は無地ってのがなんか苦手なんだよ。ジーンズほとんど刺繍入りだし。昨日は我慢して無地の履いていたけど」

「ふぅ~ん。そう言う趣味なんだ。ヤンキーさん?そう言えば昔も派手好みだったよね」

「ヤンキーではないな、誰かとつるんで何かをしたとかないし、ただ好きな服を着ているだけ」

「だろうね、リュウちゃんがヤンキーって似合わないもん」

千陽は子供の頃の俺の姿を思い出しながらケラケラとしていた。

教室に入ると、腫れ物に触らないようにか、千陽の周りに人が集まらない。

ヤンキーファッション好きの俺が遠ざけているのか?

いや、見る目は千陽に向けられていた。

昨日ちやほやしていた女子達が遠巻きで見ている。

まるで腫れ物を見るかの視線。

「っとに、バカじゃねぇの」

「ほらね、みんな誤解していたから。まっ、リュウちゃんも誤解していたのは予想外だったけど・・・・・・良いんだ、リュウちゃんがいれば」

千陽の言葉が寂しげに聞こえた。
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