幼なじみの男の子は男らしい女の子で女っぽい幼なじみは男でした

常陸之介寛浩☆第4回歴史時代小説読者賞

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第一章  高校入学

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校舎の入り口に貼り出されているクラス分けの表、自分の名前だけを探して1年2組に進もうと教室に向かう。

同じ中学出身者を探すほどの手間も取りたくはない。教室に行けば必然的にわかるだろうから。

下駄箱には親切に大きくプリントされた名前が貼っている。

そこに靴を入れて、これから毎日進むであろう入学試験以来に見る廊下を進む。

寒々とした廊下、所々に『一年生教室→』と貼られていたのはボッチとしてありがたかった。

誰かに聞く、それは難易度が高いく示された方へ、とぼとぼと進むと、

「リュウちゃんだよね?」

そんな声が後ろから聞こえた。

気安く俺をそう呼ぶ友達はいない。

もういな・・・・・・。

振り向いたところで、誰だこいつ?って顔をされるのが関の山、俺ではないだろう誰か、似たような名前の誰かを呼んでいると勝手に決めつける。

俺に声かけてくるなんてあり得ない。

「ねぇ~、リュウちゃんだよね?あれ?袋田龍輝、間違ったかな?同姓同名かな?そんわけないと思うんだけど、学校に行けば会えるっておばさんに聞いたんだけど・・・・・・」

フルネームで呼ばれたからには流石に一度は振り向いて顔くらい見せ挨拶しておかなければ、中学の同級生でクラスに知り合いがいなくて不安な誰かが、俺を呼び止めたのか?

取り敢えず同じクラスになりそうな同じ中学出身の顔は見ておくか。

振り返れば見たことのない、俺より背の高いイケメンが満面の笑みで、

「あっ、やっぱりだ」

「・・・・・だれ?」

こんなイケメンなら中学でも目立っていたはず。

流石に記憶の片隅にはいるはず、深い付き合いまでしなくたって、同級生の顔くらいは、だが俺はその顔に全くと言って良いほど見覚えはなかった。

いくら親友と呼べる友達を作れなかった俺でも、同級生にいた顔くらいはまだ覚えている。

つい二週間前が卒業式、一人一人登壇して卒業証書貰うときも見ていた。

少なくても、見覚えくらいはあるはずなのに、全く知らない。

「えぇぇぇぇぇ、俺のこと覚えてないの?悲しいなぁ」

ツーブロックと呼ばれる両サイドの毛は短く頭部の髪を右から左へ流し固めているお洒落なイケメン、高校デビューにしてはその髪型がもう馴染んでいる顔つき。

「お前みたいなオシャンティーなイケメンに知り合いはいないって、同じ中学だっけ?まぁ~よろしくな」

当たり障りなく返事をして教室に進もうとすると、背中に向けて

「ん~まっいっか、今日から俺もまた隣の家だから、帰ったら行くからねってか、引っ越し手伝って欲しいんだけどなぁ~、まぁ~帰ったら・・・・・・」

はあ?隣の家・・・・・・今は空き家・・・・・・たまに親友のお祖父さんが風通しや草刈り手入れに来るだけの空き家・・・・・・。

「ちょっと、お前誰だよ?」

「本当に覚えてないの?リュウちゃん?」

顔をしっかり見るが、こんなイケメンを知らない。

間違いなく大手男性アイドル事務所からお呼びがかかりそうなイケメン。

目鼻立ちが通っていて、綺麗な艶やかな肌、醤油顔と言えば良いのか?とてもすっきりしている顔で男の俺でも『綺麗だ』と、褒めたくなる顔をじっと見続ける俺に対して、自分の名前が出てこないことに業を煮やしたのだろう、イケメンビームの笑顔で、

「俺、千陽だよ」

「・・・・・・ちあき?ちあき?ちあき?はぁ?お前、千陽なのか?」

「あっ、やっと思い出したんだ」

パンッと俺の肩を一回軽く叩いて喜んでいる。

「違うそうじゃない忘れていたんじゃなくて、誰だかわからなかったんだよ。んなイケメン」

「はははははっ、俺の方が背超しちゃったからかな?」

目の前まで近づいてきた千陽は背比べをして言う。俺より5センチくらい高そうだ。

「イケメン。良い匂いしやがって」

そう言うと褒めているのに、なぜかふくれっ面を見せた。

「イケメンか・・・・・・まっそうだよね。リュウちゃんもそう思うんだ。やっぱりか」

自画自賛ではないのだろう、きっと言われ慣れているから認めたのだろうが、少しつまらなそうに伏し目がちに小さくそう呟くと、急に俺の手を握った。

背の高さとは裏腹に意外に華奢な細さの指、爪も綺麗に整えられて磨いているのだろう、自然な色でキラリとしている。

綺麗だと感じたが意外に冷たい手。

「また、一緒だぞ、取り敢えずは1年間同じクラスは確定したから、よろしくね」

満面の笑みを見せた。

その瞬間、俺の高校人生にやっと遅い桜前線が届いたのを感じた。

高校桜は花開く?

春の色を隠すサングラスは、千陽が投げ捨ててくれたように世界の色はこの日、一変した。

久々だというのに、馴れ馴れしいが、なぜか嫌悪感を感じない。

むしろその馴れ馴れしさが懐かしさ。

それを感じると、空席だった隣をまた一緒に歩いてくれる存在になるのでは?

勝手に感じてしまった。
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