幼なじみの男の子は男らしい女の子で女っぽい幼なじみは男でした

常陸之介寛浩☆第4回歴史時代小説読者賞

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第一章  高校入学

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 晴れ渡る春の日差しの空がまぶしかった。

囀りの練習をしている鶯、五月蠅い、焼き鳥にしたい。

咲き誇る桜が目に痛い、春の嵐で一気に散ってくれ。

入学を祝う同級生の声が五月蠅かった、なにがそんなに嬉しい?

鼻を勝手に侵略する花粉、俺は侵入を許していないぞ、スギ花粉滅びろ・・・・・・。

リア充スギ花粉と共に飛んでいけ。

ひねくれ者だな、俺。

高校生活に希望も夢も抱いていない。

キャッキャうふふ、そんな高校生活俺には無縁なはず。

きっと、ボッチで過ぎ去っていくのだろうな。

今ままでだってそうだ。

春は希望と言うより絶望の季節。

春を色で表現するなら、きっと多くの者は『桃色』『黄緑』『水色』、そんな綺麗と呼ばれる色を当てるのだろうが、俺にとって春はグレー一色。

何かが抜け落ちてしまった季節は濃い色のサングラスをしているかのように、暗く辛い。

あれは小学校入学前、もう9年も前になる。

親友が消えた春。

もう、かすかな思い出だけだ。

アルバムを見ないで顔を思い出せるか?無理だ。

街ですれ違って気がつくか?あり得ない。

もう、それほど年月という時間は、記憶を呼び起こすのに邪魔をする。

あれほど気の合った友達が出来ないで9年、ぽっかりと空いてしまった。

横を歩いてくれる親友は出来なかった。

作れなかった、作らなかったが正解の言葉かもしれない。

作ろうと努力をしなかった。

親友が出来たとしても、ある日突然また消えるのではないか?その離れる悲しみはとても辛く『恐怖』と言う言葉を当てはめたい。

だから、俺はその恐怖から逃げていた、二度とあんな喪失感はごめんだ。

高校生活でも変われる気はしない。あの恐怖、寂しさ、喪失感、それに打ち勝つこと、終止符を打つ何か特別なイベントや、その恐怖の記憶を上書きしてくれるほど、心を許せる誰かが現れない限りこのまま続くだろう。

他人との間に透明アクリルパネルを置いた人生は、きっと、このままだろう。

他人との距離、近いが透明な壁で遠くしている。

いじめられているわけではないかった。

ただ、『親友』と呼べる心を許せる友達が出来なかった。

作ろうとしていなかったと言うべき俺には、今まで同級生とは距離感が埋まらなかった。

隣を歩く、ただそれだけの事でも、不思議と違和感がつきまとい、同じ景色を見続けることは出来なかった。
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