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宇宙の旅・生殺与奪
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龍之介はひと眠りし、起きると外を眺めていた。
宇宙船は振動もなく本当に動いているのか?と、思える物ので外の景色も変わらない。
暗闇の背景に、光の線が流れていた。
龍之介は暇を持て余し、部屋の外に一人出る。
春はその気配を感じ静かに起き、
「殿下?」
「ああ、流石に気が付いたか。休んでいていいのだぞ、っと言っても着いてくるのが春だな。」
「はい、殿下。」
「エリリと、司録殿はそのままにしといてあげなさい。」
春は元々、くノ一、龍之介の命を狙うくらいの手練れ、それが今では一番の側近。
エリリもまた、龍之介の命を狙う剣士としてはそれなりの腕はあったがエリリは育ちが
姫であるため気配まで敏感に感じる事はなかった。
龍之介と春は操作室へと足を運ぶ。
操作室の扉は特段、鍵がかけられていたわけではないため普通に入れる。
「おや、これは龍之介様、お休みになりませんか?」
操作室の中心にある椅子に座っているピロリン船長。
「ピロリン船長、十二分に休ませていただきましたよ。」
龍之介と春の若返った姿にも驚きもしないピロリン船長。
他に5人の操縦士が一度、龍之介達を足のつま先から頭までしっかり見ていたが特段の反応はしなかった。
宇宙を自在に飛ぶ科学技術を持っている者たちにしては、このくらいの変化は普通なのだろう。
「宇宙船とは、操縦士が操作する物なんですね。機械任せで飛んでいるのかと思いましたよ。」
「今は、母艦とつながっているので航行はそちら任せなので、計器類に異常が出ないか見張っているだけなんですがね。命を預ける機械は人工知能には任せませんよ。」
操作室をぐるりと見渡す龍之介。
計器類と思われる画面と、外の様子を大きく映し出すモニター画面がある操作室。
春はただただ静かに龍之介の背中を見ていた。
「人工知能は危険ですか?」
「時間もありますのでよかったら私の部屋で朝食を食べながら話しませんか?」
「ええ、喜んでご相伴させていただきます。」
ピロリン船長の部屋は操作室に隣接しており、扉を開けると六畳ほどの部屋に四人掛けのテ-ブルと椅子、収納式のベットが壁に取り付けられた造りであった。
椅子に座ると、金属のカップに注がれたお茶と、更には焼き菓子のような物が用意された。
「朝食は、栄養管理クッキーですので質素で、すみません。」
口に運ぶ龍之介。
「いえいえ、美味しいですよ。このお茶なんて特に花のような香りの中に、ブル-チ-ズのような香りがまた良い。」
「気に入っていただけましたか、アグロス・ティーは故郷のお茶なんですよ。最近また作れるようになりましてね。」
「ん?それはどういう意味で?」
ピロリン船長は、カップをテ-ブルに置くと少し沈黙の合間を置いて、
「故郷の星は、人工知能との戦いで荒廃しました。壮絶な戦いでした。」
「人工知能はどうして敵対したのですか?」
「私の星では人工知能が管理した世界でした。教育、仕事、結婚、全てがデ-タで管理された、初めのころはそんな管理された世界のほうが無駄がなく人々は受け入れていました。しかし、管理された世界の中で人口が増えると人工知能は人口の管理も始めたのです。生殺与奪、生かすも殺すも人工知能次第、生産性のない人々を人工知能が作った殺戮の管理者、デスマシ-ンが人間を狩るようになっていました。老人や病気になって回復の見込みがないものなど容赦なく。」
そう、話を一区切りするとピロリン船長はお茶をひと口飲んで話を続けた。
「管理された世界に疑問を持ち始めたものが団結して、人工知能管理社会から脱却をするために反乱を起こしたのです。私もその解放軍の創設メンバーの一人。
人工知能は有機生命体ではないので、核・化学兵器を容赦なく使い我が星の生命の8割りは消えました。
戦いは我々の敗北で終焉を迎えようとしていたとき、パカルの父が率いる我が星に援軍に来てくれたのです。
その援軍によって、対人工知能戦争に勝利することが出来ました。
少しずつですが星はかつてのような、農業の盛んだった頃のように回復してきてます。」
「宇宙には、人工知能と共成している、成功している星はないのですか?」
「もちろん、利用している星は有りますが、ごく一部の機械に限られていますね。
人工知能に自我を持たせるのは禁止している所がほとんどです。」
「人工知能はほぼ生命体の敵になりますか?」
「人工知能にとって作り出した生命体が、自分たちを消そうとするのではないか?と、恐れるのでしょう。
肉体がないだけで、自我を持てば我々生命体と同じように自分たちを守りたいと言う思考が生まれる、当然の事でしょう。人工知能も生命体。」
「便利さを追求すれば、生み出したものは両刃之剣になってしまう、よくある話ですね。」
「その両刃之剣が切れ味が凄すぎるのです。」
「我が地球でもこれから先、気を付けなければ……」
宇宙船は振動もなく本当に動いているのか?と、思える物ので外の景色も変わらない。
暗闇の背景に、光の線が流れていた。
龍之介は暇を持て余し、部屋の外に一人出る。
春はその気配を感じ静かに起き、
「殿下?」
「ああ、流石に気が付いたか。休んでいていいのだぞ、っと言っても着いてくるのが春だな。」
「はい、殿下。」
「エリリと、司録殿はそのままにしといてあげなさい。」
春は元々、くノ一、龍之介の命を狙うくらいの手練れ、それが今では一番の側近。
エリリもまた、龍之介の命を狙う剣士としてはそれなりの腕はあったがエリリは育ちが
姫であるため気配まで敏感に感じる事はなかった。
龍之介と春は操作室へと足を運ぶ。
操作室の扉は特段、鍵がかけられていたわけではないため普通に入れる。
「おや、これは龍之介様、お休みになりませんか?」
操作室の中心にある椅子に座っているピロリン船長。
「ピロリン船長、十二分に休ませていただきましたよ。」
龍之介と春の若返った姿にも驚きもしないピロリン船長。
他に5人の操縦士が一度、龍之介達を足のつま先から頭までしっかり見ていたが特段の反応はしなかった。
宇宙を自在に飛ぶ科学技術を持っている者たちにしては、このくらいの変化は普通なのだろう。
「宇宙船とは、操縦士が操作する物なんですね。機械任せで飛んでいるのかと思いましたよ。」
「今は、母艦とつながっているので航行はそちら任せなので、計器類に異常が出ないか見張っているだけなんですがね。命を預ける機械は人工知能には任せませんよ。」
操作室をぐるりと見渡す龍之介。
計器類と思われる画面と、外の様子を大きく映し出すモニター画面がある操作室。
春はただただ静かに龍之介の背中を見ていた。
「人工知能は危険ですか?」
「時間もありますのでよかったら私の部屋で朝食を食べながら話しませんか?」
「ええ、喜んでご相伴させていただきます。」
ピロリン船長の部屋は操作室に隣接しており、扉を開けると六畳ほどの部屋に四人掛けのテ-ブルと椅子、収納式のベットが壁に取り付けられた造りであった。
椅子に座ると、金属のカップに注がれたお茶と、更には焼き菓子のような物が用意された。
「朝食は、栄養管理クッキーですので質素で、すみません。」
口に運ぶ龍之介。
「いえいえ、美味しいですよ。このお茶なんて特に花のような香りの中に、ブル-チ-ズのような香りがまた良い。」
「気に入っていただけましたか、アグロス・ティーは故郷のお茶なんですよ。最近また作れるようになりましてね。」
「ん?それはどういう意味で?」
ピロリン船長は、カップをテ-ブルに置くと少し沈黙の合間を置いて、
「故郷の星は、人工知能との戦いで荒廃しました。壮絶な戦いでした。」
「人工知能はどうして敵対したのですか?」
「私の星では人工知能が管理した世界でした。教育、仕事、結婚、全てがデ-タで管理された、初めのころはそんな管理された世界のほうが無駄がなく人々は受け入れていました。しかし、管理された世界の中で人口が増えると人工知能は人口の管理も始めたのです。生殺与奪、生かすも殺すも人工知能次第、生産性のない人々を人工知能が作った殺戮の管理者、デスマシ-ンが人間を狩るようになっていました。老人や病気になって回復の見込みがないものなど容赦なく。」
そう、話を一区切りするとピロリン船長はお茶をひと口飲んで話を続けた。
「管理された世界に疑問を持ち始めたものが団結して、人工知能管理社会から脱却をするために反乱を起こしたのです。私もその解放軍の創設メンバーの一人。
人工知能は有機生命体ではないので、核・化学兵器を容赦なく使い我が星の生命の8割りは消えました。
戦いは我々の敗北で終焉を迎えようとしていたとき、パカルの父が率いる我が星に援軍に来てくれたのです。
その援軍によって、対人工知能戦争に勝利することが出来ました。
少しずつですが星はかつてのような、農業の盛んだった頃のように回復してきてます。」
「宇宙には、人工知能と共成している、成功している星はないのですか?」
「もちろん、利用している星は有りますが、ごく一部の機械に限られていますね。
人工知能に自我を持たせるのは禁止している所がほとんどです。」
「人工知能はほぼ生命体の敵になりますか?」
「人工知能にとって作り出した生命体が、自分たちを消そうとするのではないか?と、恐れるのでしょう。
肉体がないだけで、自我を持てば我々生命体と同じように自分たちを守りたいと言う思考が生まれる、当然の事でしょう。人工知能も生命体。」
「便利さを追求すれば、生み出したものは両刃之剣になってしまう、よくある話ですね。」
「その両刃之剣が切れ味が凄すぎるのです。」
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