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世界巡察の旅~ヨーロッパ地中海州・バチカン市国編~

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今回の、巡察の旅で龍之介は目的があった。
 バチカン市国の平和維持連合加盟であった。
 その為、上皇と来国を予定していたのである。
 バチカン市国へは、龍之介が行くことだけが使者により
 告げられていた。

ジブラルタル城から、飛行船艦艦隊で飛んで行けばすぐであったが
 蒸気機関艦隊に乗り換えてバチカン市国に向けて進んでいた。
 飛行船艦艦隊で乗り込むには流石に、
 失礼だと龍之介は感じていたのである。

バチカン市国の近くの、港へ着岸
 前回、訪れた時と同じ港である。
 久々に、龍之介は衣冠束帯金太刀の正装、
 また、上皇も白い格式高い衣装であった。
 そして、船から上皇が降りる時には煌びやかな神輿、金の鳳凰が
 屋根に飾られ、屋根も金箔で装飾されていた。
 前後左右4人ずつ合計16人に担がれた神輿、
 薄布に隠された中に、上皇が乗っていた。
 上皇の巡察に合わせて、組み立て式、神輿を飛行船艦艦隊には、
 乗せられていた。
 今回、バチカンに行くのにあたって、それを出したのであった。
 バチカンには上皇の同行は知らされていない
 わざと知らせなかったのである。
 上皇と龍之介の間では、打ち合わせがなされていた。
 いつもは、ざっくばらんな上皇であったが、今日は位が高い者として、
 ふるまいをしていたのでる。
 迎えるバチカンの使者と、スイスの近衛兵、龍之介がその神輿に恭しく
 頭を下げているのに迎えの使者と一同は驚いたのであった。

『平和維持連合代表
 正一位終身関白太政大臣帝代理大日本合衆国統治責任者全権大使大将軍』

 と言う、高い肩書の人物が頭を下げているのだから、そこに乗っていたのが
 龍之介より高い身分であることが一目でわかる状態
 それが、大日本合衆国の国王かそれに準じるくらいである者であることが
 想定できたのである。

「関白殿下、そちらにお乗りのお方はどなたに御座いますか?」

「大日本国合衆国、先の「帝」上皇陛下に御座います。」

 龍之介の来国でも、それなりに身なりと歓迎の体制を整えていたが、
 今や最大の国力を持つ、領土を持つ大日本合衆国の前国王の来国に
 驚き、硬直する使者

「関白殿下、上皇陛下がおいでならばそのように、申し付けていただけねば
 準備もありますので困ります」 

「朕はかまわぬぞ、ロ-マ教皇と御目にかかることが目的である」

 薄の布の中から直接使者に声をかける上皇

「は、はい、かしこまりましてございます。」

蒸気機関艦隊からは、綺麗な甲冑に身を包んだ部隊1000人が上陸したのである。
 この旅の為に、部隊の甲冑は新調されていた。
 歴戦を潜り抜けてきた精鋭部隊、甲冑は傷つき見た目が良くなかったのである。
 神輿と、バチカンが用意した馬車に乗る龍之介を中心に編隊を組む
 先頭には、錦の御旗と日の丸と三上家の菊水の家紋が掲げられていた。
 守衛する部隊には、全員が三八式歩兵銃を手にしていたが、
 威圧性を抑えるために、金糸で編まれた布にくるまれていた。
 見た目は、とても華やかで沿道で行列を見守る住民たちは目を引き付けたのである。

 バチカンに進みだす一行、バチカンから迎えに来ていた使者二人が、馬に乗り
 駆け出す。先に、バチカンへ上皇の来国を知らせに急いだのは明白であった。

 サン・ピエトロ大聖堂に到着すると、ロ-マ教皇第235代グレゴリウス15世が、
 異例にも大聖堂の入り口で待って居のであった。
 龍之介は、馬を降り神輿の前で深々とお辞儀をする。
 すると神輿は降ろされ、薄布が近習により捲し上げられる。
 中から姿を現したのは、真っ白な御引直衣の姿の上皇であった。

「ロ-マ教皇第235代グレゴリウス15世殿は、初めましてですね。
 平和維持連合代表
 正一位終身関白太政大臣帝代理大日本合衆国統治責任者全権大使大将軍
 藤原朝臣三上龍之介正國に御座います。
 こちらにおいでは、大日本合衆国・上皇陛下に御座います。」

「初めましてロ-マ教皇第235代グレゴリウス15世です。どうぞ、大聖堂の中へ」

 前回、龍之介がバチカンに訪れ会合したのは、ロ-マ教皇第234代パウルス5世であった。
 代が変わっていたのである。

 大聖堂の中には、上座下座を作らるよう円卓が準備されていた。
 円卓には、グレゴリウス15世と側近の枢機卿が両脇に座り、
 上皇・龍之介・正忠が席に着いたのであった。
 儀礼的な挨拶を済ませたのちに龍之介が話を始める。

「グレゴリウス15世殿、今回来たのは、平和維持連合への勧誘であります」

「バチカンとしましては、平和な世界を作ることに対しては邪魔をしません。
 それどころか応援をしておりますが、」

「はい、先代の教皇殿と同じく約定を守っていただき、異端者を大日本合衆国に
 島送りしていただき、感謝しておりますがそれだけでなく、平和維持連合に
 加盟していただくといっそう箔が付きます。」

 先代の教皇との約定は、宗教異端者は死刑にはせず、大日本合衆国へ送る事、
 形として島送りであったが、大日本合衆国では歓迎され研究を続ける科学者が
 多かったのである。代表者がガリレオ・ガリレイである。

「しかしながら、その異端者をかくまう大日本合衆国が運営していると言ってよい
 平和維持連合に加盟するには問題が多すぎます」

そこに、上皇が口を出したのである。

「では、科学的分野には同調できないが、平和世界を作ることには同調できるのですな?」

「それは、勿論のことに御座います。戦いのない世界を作ろうとしていることには、
 同調できます。」

「では、平和維持連合政治部加盟でよろしいのでは? 科学事を話し合う場には欠席で」

「なるほど、そう言う参加の仕方もあるのですね。ならば、枢機卿会議にかけまして
 ご返答いたしたく」

「教皇殿、はるばる日本合衆国から上皇陛下が来たのせすぞ、
 今ここで返答していただきたい」

 龍之介は、この為に上皇にこの会合に参加してもらったのであった。
 上皇の権威を利用したのである。
 バチカンは断れば、上皇の権威に傷をつけることになる。
 悩むグレゴリウス15世は返答をしたのであった。

「わかりました。平和維持連合政治部に加盟いたしましょう。」

「ありがとうございます。とても良いお返事をいただけて」

こうして、バチカン市国は平和維持連合加盟国になったのであった。
 会合を終えると、すっかり日は暮れていたのである。
 勿論、バチカンが準備していた宿を断り、
 龍之介一行は、会議を終えると艦隊に戻ったのである。
 バチカン市国には、この艦隊の兵員しかいないため、夜の逗留を
 避けたのであった。
 1000人の武装した部隊がいるため、襲われても勝てるが、
 バチカンで騒ぎがあれば、せっかくの結果が無駄になる
 無用な騒ぎを避けるためであった。
 艦隊は、大日本合衆国キプロス島に向かったのであった。
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