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壱の章 1589年 独眼竜
壱の伍
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1589年7月
伊達政宗は黒川城で政務に追われていた。
家臣への恩賞、黒川城城下での家臣への屋敷割り当てなどである。
ほとんどは片倉小十郎が案をまとめ、それに目を通し決定の署名花押書きである。
そんな政務をするなか、大阪城の関白・豊臣秀吉から使者が木村清久が訪れていた。
「政宗殿、関白殿下は惣無事令を無視して蘆名家を攻め滅ぼし黒川城を占拠したこと、
烈火のごとくお怒り、京に上洛して釈明を求めている」
上座に座る木村清久、関白の使者であるためそれが礼儀であった。
それの前に座るは、伊達政宗、片倉小十郎、伊達成実。
「これは心外な、蘆名との戦いは惣無事令より前に戦いは始まっていたこと、
その戦いをやめろとはいささか合点がいきませんが」
と、政宗が言う。
「惣無事令はそのことも含めての戦をやめさせるための法度」
「あいやまたれよ、この伊達家、奥州探題その役目として奥州統一にしたに過ぎません」
「詭弁であるな、奥州探題を命じた足利政権は最早なく、今は関白殿下が恐れ多くも
帝から日本(ひのもと)の国の政治をまかされておる、それに従うというのですかな?」
「あいや~そんでござったか~わんれ、こんな北の果ての田舎の地に住んでいるもんだから
上方のこっとさっぱりわかんねかったべよ」
小馬鹿にしたように田舎言葉で返事をする政宗。
「んだんだ、関白さまがどんだけ偉いかなんてわかんねくて申し訳ねえこった」
続けて成実も政宗と同調する。
これに顔を赤くする木村清久。
「ふざけるな、そんな言い訳が通用すると思うてか?」
政宗と成実は口元に力を入れて笑いそうなのを我慢していた。
すると小十郎が、
「蘆名との積年の遺恨、並びに戦いは惣無事令より前に始まっていたことは
本当の事、その戦いを途中でやめ矛を収めるのが武士として許されますかな?
この伊達家、関白殿下に弓引く考えこれ無き、蘆名を征伐する目的は果たせましたので
この黒川城また、領地は関白殿下の兵が奥州においでくださりましたら、そのとき
引き渡す所存にございます」
言葉が詰まり黙ってしまう、木村清久。
「ん、そのこと京に上洛して申し上げれば許されるであろう、早急に上洛を」
と、考えた末に言葉を出すと政宗が返答した。
「委細承知つかまりました」
木村清久は大阪に帰っていった。
「殿、いかがなさいます?」
「御大将?」
「関白だか腕白だか知らんが付き従う考えはない、しかし、今、北条に向けられている
矛先をわざわざ伊達家に変えさせるのは良くはないな」
「では、上洛ですか?」
「家中の者でよかろう誰かおらぬか?」
「それなら、この藤五郎成実にお任せください」
「成実殿、成実殿では弁明の使者と言うより刺客、拝謁してそのまま関白の首を
狙うのでしょ」
パっと、目を見開き小十郎の顔を見る成実。
「はははっはははっ、わかってしまったか、はははっはははっ」
バン、持っていた扇子で手のひらを叩き成実の笑いを止めさせる政宗。
「ならんぞ、ならん、成実はこの伊達家になくなてはならぬ者」
「はっ、過分なるお言葉ありがたき幸せではあります」
「鈴木元信にでも行かせよ、砂金と馬の贈り物とともにな」
「それがよろしいかと、すぐに手配いたします」
こうして蘆名討伐の弁明は、政宗自らの上洛なく家臣である鈴木元信が上洛して
行われた。
伊達政宗は黒川城で政務に追われていた。
家臣への恩賞、黒川城城下での家臣への屋敷割り当てなどである。
ほとんどは片倉小十郎が案をまとめ、それに目を通し決定の署名花押書きである。
そんな政務をするなか、大阪城の関白・豊臣秀吉から使者が木村清久が訪れていた。
「政宗殿、関白殿下は惣無事令を無視して蘆名家を攻め滅ぼし黒川城を占拠したこと、
烈火のごとくお怒り、京に上洛して釈明を求めている」
上座に座る木村清久、関白の使者であるためそれが礼儀であった。
それの前に座るは、伊達政宗、片倉小十郎、伊達成実。
「これは心外な、蘆名との戦いは惣無事令より前に戦いは始まっていたこと、
その戦いをやめろとはいささか合点がいきませんが」
と、政宗が言う。
「惣無事令はそのことも含めての戦をやめさせるための法度」
「あいやまたれよ、この伊達家、奥州探題その役目として奥州統一にしたに過ぎません」
「詭弁であるな、奥州探題を命じた足利政権は最早なく、今は関白殿下が恐れ多くも
帝から日本(ひのもと)の国の政治をまかされておる、それに従うというのですかな?」
「あいや~そんでござったか~わんれ、こんな北の果ての田舎の地に住んでいるもんだから
上方のこっとさっぱりわかんねかったべよ」
小馬鹿にしたように田舎言葉で返事をする政宗。
「んだんだ、関白さまがどんだけ偉いかなんてわかんねくて申し訳ねえこった」
続けて成実も政宗と同調する。
これに顔を赤くする木村清久。
「ふざけるな、そんな言い訳が通用すると思うてか?」
政宗と成実は口元に力を入れて笑いそうなのを我慢していた。
すると小十郎が、
「蘆名との積年の遺恨、並びに戦いは惣無事令より前に始まっていたことは
本当の事、その戦いを途中でやめ矛を収めるのが武士として許されますかな?
この伊達家、関白殿下に弓引く考えこれ無き、蘆名を征伐する目的は果たせましたので
この黒川城また、領地は関白殿下の兵が奥州においでくださりましたら、そのとき
引き渡す所存にございます」
言葉が詰まり黙ってしまう、木村清久。
「ん、そのこと京に上洛して申し上げれば許されるであろう、早急に上洛を」
と、考えた末に言葉を出すと政宗が返答した。
「委細承知つかまりました」
木村清久は大阪に帰っていった。
「殿、いかがなさいます?」
「御大将?」
「関白だか腕白だか知らんが付き従う考えはない、しかし、今、北条に向けられている
矛先をわざわざ伊達家に変えさせるのは良くはないな」
「では、上洛ですか?」
「家中の者でよかろう誰かおらぬか?」
「それなら、この藤五郎成実にお任せください」
「成実殿、成実殿では弁明の使者と言うより刺客、拝謁してそのまま関白の首を
狙うのでしょ」
パっと、目を見開き小十郎の顔を見る成実。
「はははっはははっ、わかってしまったか、はははっはははっ」
バン、持っていた扇子で手のひらを叩き成実の笑いを止めさせる政宗。
「ならんぞ、ならん、成実はこの伊達家になくなてはならぬ者」
「はっ、過分なるお言葉ありがたき幸せではあります」
「鈴木元信にでも行かせよ、砂金と馬の贈り物とともにな」
「それがよろしいかと、すぐに手配いたします」
こうして蘆名討伐の弁明は、政宗自らの上洛なく家臣である鈴木元信が上洛して
行われた。
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