10 / 21
陛下がお見えになりました。
しおりを挟む
爺様。今日は朝からご機嫌です。何と、スーツでデイサービスに行くと言うので、朝から、婆様と大喧嘩しています。結果、爺様が勝ち、お気に入りのスーツで、デイサービスにご出勤です。今日は、土曜日。僕は、珍しく部活が休みなので、飼い犬のチビとコロを散歩させている。あ・・・。言うのを忘れていたけど、家には、2匹の雑種のワンコが居て、僕と兄が、世話をしている。気分屋の兄は、滅多にやらないので、殆どは、僕だけど。部活が忙しくない時は、思い切り、長い散歩をしている。爺様にも、ワンコとの生活は、快適らしく名前がわからないのに、外にいると
「おいおいおいおい」
名前もわからないので、変な掛け声をしてくる。
「名前も、覚えられないんだよ。最近」
婆様は、この世の終わりみたいに、大袈裟にため息をついて見せる。
「私の友達が来たって、わからないんだ」
それなのに、爺様は、宅急便のお兄さんが大好きだ。張り切って、ハンコを持って出ていく。
「それで、それを仕訳するの」
何処に荷物を置くのか、確認するから、うるさくて敵わないと婆様は、こぼす。この間は、親父の購入したビール一箱を持って、家の中をうろうろしちたそうだ。考えると笑える。
「汚さないでよ」
デイサービスの車が、迎えに来るとトドメとばかり、窓越しに爺様に言い放つ。帰宅すると案の上、泥だらけで、婆様にしこたま怒られていた。爺様曰く
「今日は、陛下がいらしゃった」
婆様は、否定しながらも、半分、本当だと受け取った。この世代に「陛下」という単語は、水戸黄門より、効き目がある。
「本当に、陛下が?」
来るわけがない。
「妃殿下もだ」
爺様の鼻の穴が、最大に膨らむ。婆様は、スーツを着て畑仕事をしたきた爺様を叱るのを、すっかり忘れてしまった様だ。
「わざわざ、いらしてくれたんだね」
うっとりと、遠い目をしている。いやいや、そんな事ある筈がない。
後日、デイサービスから写真入りの連絡帳が届いた。そこには、敬老の日に、仮装をする職員の姿と、嬉しそうにポーズをとる爺様の姿があった。
「あれまぁ」
爺様は、鼻高々で、お隣の奥さんにまで、写真を見せに行った。
「本人が、そう思えば、陛下なんだよね」
婆様は、嬉しそうな爺様の後ろ姿にポツリと呟く。爺様。陛下に会えて
良かったね。
「おいおいおいおい」
名前もわからないので、変な掛け声をしてくる。
「名前も、覚えられないんだよ。最近」
婆様は、この世の終わりみたいに、大袈裟にため息をついて見せる。
「私の友達が来たって、わからないんだ」
それなのに、爺様は、宅急便のお兄さんが大好きだ。張り切って、ハンコを持って出ていく。
「それで、それを仕訳するの」
何処に荷物を置くのか、確認するから、うるさくて敵わないと婆様は、こぼす。この間は、親父の購入したビール一箱を持って、家の中をうろうろしちたそうだ。考えると笑える。
「汚さないでよ」
デイサービスの車が、迎えに来るとトドメとばかり、窓越しに爺様に言い放つ。帰宅すると案の上、泥だらけで、婆様にしこたま怒られていた。爺様曰く
「今日は、陛下がいらしゃった」
婆様は、否定しながらも、半分、本当だと受け取った。この世代に「陛下」という単語は、水戸黄門より、効き目がある。
「本当に、陛下が?」
来るわけがない。
「妃殿下もだ」
爺様の鼻の穴が、最大に膨らむ。婆様は、スーツを着て畑仕事をしたきた爺様を叱るのを、すっかり忘れてしまった様だ。
「わざわざ、いらしてくれたんだね」
うっとりと、遠い目をしている。いやいや、そんな事ある筈がない。
後日、デイサービスから写真入りの連絡帳が届いた。そこには、敬老の日に、仮装をする職員の姿と、嬉しそうにポーズをとる爺様の姿があった。
「あれまぁ」
爺様は、鼻高々で、お隣の奥さんにまで、写真を見せに行った。
「本人が、そう思えば、陛下なんだよね」
婆様は、嬉しそうな爺様の後ろ姿にポツリと呟く。爺様。陛下に会えて
良かったね。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
このおじさんのバナナの中身は90%位は優しさで出来ています。
MJ
エッセイ・ノンフィクション
何となく忘れてしまいそうで忘れたくないような出来事があったら書いておこうと気軽に書き始めました。
その内こうだっらいいなあと思うことも書く事にしました。
今まで生きてきた中でみんなが知ってたら得しそうなこともできるだけ思い出して書いておこうと思ってます。
痴呆症を発症しつつある義父がバナナを欲しがる
娘の事故
カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活
坂崎文明
エッセイ・ノンフィクション
カクヨム、noteを中心に小説新人賞やクリエーター関連のエッセイを書いていきます。
小説家になろう、アルファポリス、E☆エブリスタ、ノベラボなどのWeb小説サイト全般の攻略法も書いていきます。
自動バックアップ機能がある『小説家になろう』→カクヨム→noteの順に投稿しています。note版がリンク機能があるので読みやすいかも。
小説家になろう版
http://ncode.syosetu.com/n0557de/
カクヨム版(567関連で公開停止)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880246141
【続編】カクヨム、noteではじめる小説家、クリエーター生活2 作者 坂崎文明
https://kakuyomu.jp/works/16816700427247367228
note版
https://note.mu/sakazaki_dc/m/mec15c2a2698d
E☆エブリスタ版
http://estar.jp/_howto_view?w=24043593
小説家になるための戦略ノート 作者:坂崎文明《感想 130件 レビュー 2件 ブックマーク登録 1063 件 総合評価 2,709pt文字数 958441文字》も人気です。
http://ncode.syosetu.com/n4163bx/
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
介護の詩
月歌(ツキウタ)
エッセイ・ノンフィクション
介護にまつわる話を140字小説にしています。亡くなった母にもっとなにか出来なかったか?その気持ちを140字小説として綴りました。実話ですが小説として軽く流し読んで頂けると幸いです。
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる