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東京で、買い物する。
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いつもの通り、爺様が行方知れずになった。その日は、クソ忙しい親父が、珍しく休みを取れたので、プールに行く約束をしている日だった。当然、足の悪い婆様を置いて行く訳には、いかず、爺様を探す事になった。理由が理解できない兄は、不機嫌になった。ていうか、パニックだ。自分の部屋に引きこもり、本棚から、たくさんの本を床にぶちまけた。
「僕が、連れて行くか?」
親父に聞いたけど、首を縦に振らなかった。
「お前に、面倒は見れない」
という理由だった。多分、面倒が見れないと言うのは、兄が起こすパニック障害の事で、水の中で、それが起きた時に、僕には、対処できないとの事だった。それは、僕も否定しない。兄は、体が大きいのに、全く、小さな子供と変わらなかった。普段は、生き物好きで、優しいんだけど、理解できない事や特に、大きな音には、反応してしまう。水の中で、何かが起きたら、体の小さな僕には、対処ができない。僕は、兄が落ち着いてくれるのを、じっと待つ事にした。何か、他に興味を引くものがあれば、気が変わると思うのだ。親父は、爺様のいなくなった時間を聞いて、その時間で、移動可能な辺りを、探して回る事にした。婆様が、目を離したほんの一瞬。爺様の足で、どこまで、行けたのか?爺様は、困った事に、昔、登山をやっていた事もあって、健脚だ。僕より、足が速い。昔は、何とか街道とやらを杖をついて歩いたそうだ。爺様!早く帰って来ないと、兄が止まらなくなるよ。僕も、爺様を探す事に、加わる事にした。爺様の歩く範囲は、親父が回っている。僕は、爺様の関心を引きそうな所を回る事にした。うちには、コーラが、たくさんある。爺様が、僕らが小さい時に、よく買ってくれていた物だ。婆様が、子供に飲ませすぎるのは、良くないと、怒ってばかりいたが、僕らが、喜ぶでの、爺様は、僕らの喜ぶ顔見たさに、コンビニに行っていた。もしかしたらと、そのコンビニに自転車で行ったが、見つからなかった。
「あれ!どうしたの?」
同級生のママが、僕の姿を見つけて、声を掛けてきた。
「僕の爺様見なかった?」
僕の爺様が、認知症なのを知っているのは、ご近所だけで、誰でも、知っているわけではなかった。同級生のママなら、尚更だ。
「そうね・・・どんな服着てた?」
僕は、言っていいものか、言葉に詰まった。
「あの・・・ダウンのベスト着ています」
「ダウン?」
急に掌を、パチンと叩いたので、僕は、虫でもいたのかと、慌てて、真上を見上げた。
「すぐ、そこのスーパーに居たわよ!」
「え?」
僕は、急いで、自転車に飛び乗ると、スーパーの方から、ニコニコしながら、何かを大事に抱えて歩いてくる爺様の姿だった。
「爺様!」
満面の笑みを浮かべて、両手に持っていたのは、苺とプチトマトの2つだけだった。この後、爺様は、みんなから、大目玉をくらう事になる。
「プールプール」
兄は、上機嫌である。爺様が、見つかったので、プールに行ける事になった。爺様は、何故か、1万円を握りしめ、近くのスーパーに行っていた。昔、よく行っていたスーパー。まさか、そこに行っていたなんて、誰も、考えておらず、そこで、買ってきたのは、色が綺麗な紅い物だった。僕らが、食べたいとか、爺様が食べたいとかではなく、目についたから、買ってきたようだ。それから、爺様にお金を渡す事は、禁止になった。名札を付けようという事になった。ご機嫌で、プールから帰ってきた兄は、爺様に聞いた。
「どこに行っていたの?」
爺様は、鼻の穴を膨らませて言った。
「東京」
東京で、苺とプチトマトを買ってきたんだね。
「僕が、連れて行くか?」
親父に聞いたけど、首を縦に振らなかった。
「お前に、面倒は見れない」
という理由だった。多分、面倒が見れないと言うのは、兄が起こすパニック障害の事で、水の中で、それが起きた時に、僕には、対処できないとの事だった。それは、僕も否定しない。兄は、体が大きいのに、全く、小さな子供と変わらなかった。普段は、生き物好きで、優しいんだけど、理解できない事や特に、大きな音には、反応してしまう。水の中で、何かが起きたら、体の小さな僕には、対処ができない。僕は、兄が落ち着いてくれるのを、じっと待つ事にした。何か、他に興味を引くものがあれば、気が変わると思うのだ。親父は、爺様のいなくなった時間を聞いて、その時間で、移動可能な辺りを、探して回る事にした。婆様が、目を離したほんの一瞬。爺様の足で、どこまで、行けたのか?爺様は、困った事に、昔、登山をやっていた事もあって、健脚だ。僕より、足が速い。昔は、何とか街道とやらを杖をついて歩いたそうだ。爺様!早く帰って来ないと、兄が止まらなくなるよ。僕も、爺様を探す事に、加わる事にした。爺様の歩く範囲は、親父が回っている。僕は、爺様の関心を引きそうな所を回る事にした。うちには、コーラが、たくさんある。爺様が、僕らが小さい時に、よく買ってくれていた物だ。婆様が、子供に飲ませすぎるのは、良くないと、怒ってばかりいたが、僕らが、喜ぶでの、爺様は、僕らの喜ぶ顔見たさに、コンビニに行っていた。もしかしたらと、そのコンビニに自転車で行ったが、見つからなかった。
「あれ!どうしたの?」
同級生のママが、僕の姿を見つけて、声を掛けてきた。
「僕の爺様見なかった?」
僕の爺様が、認知症なのを知っているのは、ご近所だけで、誰でも、知っているわけではなかった。同級生のママなら、尚更だ。
「そうね・・・どんな服着てた?」
僕は、言っていいものか、言葉に詰まった。
「あの・・・ダウンのベスト着ています」
「ダウン?」
急に掌を、パチンと叩いたので、僕は、虫でもいたのかと、慌てて、真上を見上げた。
「すぐ、そこのスーパーに居たわよ!」
「え?」
僕は、急いで、自転車に飛び乗ると、スーパーの方から、ニコニコしながら、何かを大事に抱えて歩いてくる爺様の姿だった。
「爺様!」
満面の笑みを浮かべて、両手に持っていたのは、苺とプチトマトの2つだけだった。この後、爺様は、みんなから、大目玉をくらう事になる。
「プールプール」
兄は、上機嫌である。爺様が、見つかったので、プールに行ける事になった。爺様は、何故か、1万円を握りしめ、近くのスーパーに行っていた。昔、よく行っていたスーパー。まさか、そこに行っていたなんて、誰も、考えておらず、そこで、買ってきたのは、色が綺麗な紅い物だった。僕らが、食べたいとか、爺様が食べたいとかではなく、目についたから、買ってきたようだ。それから、爺様にお金を渡す事は、禁止になった。名札を付けようという事になった。ご機嫌で、プールから帰ってきた兄は、爺様に聞いた。
「どこに行っていたの?」
爺様は、鼻の穴を膨らませて言った。
「東京」
東京で、苺とプチトマトを買ってきたんだね。
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