それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

文字の大きさ
上 下
69 / 82

邪神と晴の顔

しおりを挟む
邪神は、悩んでいた。
自分を捕らえた妖とも幽霊とも言えない女性の言う事を聞くべきか。
今まで培ったプライドがズタズタだ。
どうして、あんな中途半端な霊に、自分を捕える事ができたのか。
「だいたい・・・なんで、あんなちっちゃい存在に捕まらなきゃ、いけないんだ」
納得がいかない。
自分は、永い時間、自由だった。
晴の家の土蔵で、過去と現在を自由に行き来していた。
誰も、阻む者は、いない。
代々、晴の家を守って来たのは、邪神だった。
崇め奉って来た、子孫代々まで。
漸く、ぴったりの器を見つけたのに、すぐ、自由を奪われた。
「これは・・・」
そう、チャンスだ。
逃げればいい。
元々、颯太には、なんの義理もない。
この機会に逃げて仕舞えばいい。
「・・・が、待てよ」
首から下がった金鎖が、キリキリ言っている。
「なんだよ・・」
確かに、音羽は、助けてって言った。
自分は、助けたくない。
闇に生きる王が、なんで、あんな世俗を行き来するゴミみたいな奴の言う事を聞かなきゃならないんだ。
「逃げよう」
この金鎖は、後から、考えればいい。
邪神は、笑った。
また、あの土蔵に戻れば、別の世界に行ける。
しばらく、砂の海に浮かんで、腹ごしらえを考えればいい。
邪神は、飛び立とうとした。
・・・・が。
足が動かないのである。
「おいおいおい・・・どうした俺」
どうも、この体は、思うように、動いてくれない時がある。
「逃げるのか?」
邪神の顔を半分が、突然、意思を持ち始めた。
「生徒が困っているのに」
「生徒?違うだろう?最早、妖となった霊と、化け物?俺が言うか・・になった、元、人間だろう?厄介な事には、巻き込まれたくない」
「厄介な事?」
晴は言った。
「何か、知っているのか?」
「俺は、平和主義なの。しがらみのある歴史物には、触れない事にしているの」
側から見たら、一人で、ぶつぶつ、呟いて蹲っている変な邪神にしか見えない。
「まぁ・・・・いい。俺は、逃げる」
無理に体を動かそうとしても、足が動かない。
「どういう事だ・・・よ」
「僕の体が、よく合う器って言ったでしょう」
晴は、笑った。
「僕だって、このまま、自由には、させないって事だよ」
邪神の体の中で、晴の意識が根強くなっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

「破滅フラグ確定の悪役貴族、転生スキルで「睡眠無双」した結果、国の英雄になりました」

ソコニ
ファンタジー
過労死したIT企業のシステムエンジニア・佐藤一郎(27歳)が目を覚ますと、ファルミア王国の悪名高い貴族エドガー・フォン・リヒターに転生していた。前の持ち主は王女を侮辱し、平民を虐げる最悪の人物。すでに破滅フラグが立ちまくり、国王の謁見を明日に控えていた。 絶望する一郎だが、彼には「いつでもどこでも眠れる」という特殊なスキルが備わっていた。緊張するとスイッチが入り、彼は立ったまま眠りに落ちる。目覚めると周囲の状況が思わぬ方向へ好転しているのだ。

処理中です...