それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

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奇妙な三角関係は、バランスをとって

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「音羽?」
どこかで、逢っている。
思い出せ。
晴は、必死になって考えた。
邪神の時に、音羽に逢っている。
が、その記憶はない。
記憶は、ないが、邪神の体が反応していた。
あの時、操りやすいように金鎖を埋め込んだ筈だ。
晴の身体が、音羽の顔に反応していた。
「頼みたくないけど」
音羽は、苦しそうだ。
「時間がない」
晴の胸に手を掛けると、軽く手前に引く。
見えない何かに、引っ張られるように、晴の体が、前に、倒れる。
「砂羽を止めて」
「砂羽?」
晴には、聞いた事にない名前だ。
「颯太が危ない」
「颯太?」
晴の意識の中に、ぼんやりと若い少年の姿が浮かび上がる。
「颯太って・・・生徒?」
「やっぱり、この姿では、役に立たないな」
音羽の、口が次第に避けていく。
「邪神。目を覚ませ。そこにいるんだろう?」
音羽が、話しかけるが、晴の表情は、変わらない。
「頼むから、晴を眠らさせtくれ」
「僕が・・・眠ればいいの?」
素っ裸の前に、女性が現れて、晴は、この上なく、恥ずかしい。どこかに隠れたいくらいだ。
音羽の表情は、次第に固くなっていく。
「邪神・・・いい加減にしないか!」
音羽は、金鎖を思いっきり、引くと、ますます、晴の体は、前の減りになり、音羽に頭を突き出す形になる。
「時間がないんだ。お前だって、颯太を死なせたくないだろう?」
音羽は、何かに焦っていた。
「根比べか?」
晴の体からは、晴ではない声が、響いていた。
「私は、いっこうに困らないが・・」
「強がるな。颯太が必要だろう?」
「必要とは?必要なのは、お前かと」
時間のない、音羽は、晴の首を締め上げていた。
「荒いのは、構わないが、この体が、使い物にならなくなるぞ」
晴の顔が苦痛に歪む。
「頼む、助けてくれ。颯太をまだ、死なせたくないんだ」
音羽の声は、悲痛だった。
「砂羽は、歯止めが効かない。このままでは、颯太が殺される。助けてほしい」
音羽は、締め付けていた金鎖の手を緩めた。
「私は、消滅してもいい。颯太を助けて」
音羽の姿は、いつもと違う、少女の姿になっていた。
「颯太を守らなくては、ならない・・」
邪神の口元が笑っていた。
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