それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

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故郷焼失と音羽の消息

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人は、自分と違う者を恐れる。
僕を虐めていた奴らの理由もそうだった。
寺には、親に見捨てられた子供達が何人も居た。
気持ち悪い。
何を考えているのか、わからない。
特殊な能力を持つ子達が、親元を離れ、寺に預けられていた。
とり分け、僕は、みんなと違って何華と戦うとか、そんな目立った能力がなかったので、虐められていた。
陰湿な虐めだった。
持ち物を隠されるなんて、まだ、マシな方だった。
妖怪のいる蔵に、閉じ込められたり、置き去りにされたり、酷い目に合わされていた。
そして、いつも、助けてくれたのは、封雲だったと信じている。
音羽と出会ってからは、勿論、奴らを、脅かしてくれたのは、音羽だった。
「あいつが、いないとホッとする」
「そんなに、嫌だったか?」
「よく、手懐けたよな」
「手懐けた?そういう感覚は、ないけど」
封雲は、不思議そうな顔をする。
「小鬼達を、仕切るのが、我らの仕事。そう、学んだだろう」
「音羽は、そういうんじゃないんだ」
「だから、お前は、最後まで、馬鹿にされたんだよ」
封雲は、思い出したくない事まで持ち出す。
「音羽を手懐けて、どうするんだよ。あいつは、大事な・・・」
そう、大事な何だろう。僕の胸の奥が、ぎゅっと縮んだ。
今、あいつは、いない。
「う・・ん。何でもない」
「何でもないって、あいつは、いるんだろう?突然、宙から現れるからな」
封雲は、周りをくるくる見まわした。
「本当。油断もない」
「ところでさ・・・」
僕は、本題に入った。
突然、現れた封雲。
「急に、どうしたの?音羽が居なくなったから、現れた訳ではないだろう?」
「そこだ」
封雲は、笑った。
「お互い、いろいろ世話になっていたけど、会うのは、今更だろう?」
突然、僕の前に現れたのが、音羽がいなくなった訳だけではない。
「寺の話を聞いたか?」
「寺?」
そこは、僕らが、育った寺である事に間違いはない。
ここの所、異性界に飛び込んだり、霊山に行ったり、邪神に振り回されていた。
「焼失した」
「焼失って?」
僕にとって、家を失ったと同じ衝撃だった。
「山ごと無くなった」
「山ごとって?」
寺の下には、封印された古代の妖がいると聞いた。あの山から、音羽も来たのだ。
「お前の音羽も居なくなったのと関係ないか?颯太?」
封雲は、真剣な顔をしていた。
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