43 / 79
邪神からの疑問
しおりを挟む
「閉じ込める気か」
音羽は、舌を鳴らした。
見上げると、邪神が薄く笑いながら、こちらを見下ろしている。
「今度は、こっちを試す気か」
「同じ事を音羽がやったからでしょ」
「それを言うか?」
「うう」
百鬼は、キリが無い。
現世界と同じ異性界。
砂の海とは、違う。
ここに、陥れたのには、理由がある筈。
「そんなに、その世界に行きたいか?」
邪神は、そう言った。
「母親に逢いたいか?」
そう聞いた。
だとすれば。
「音羽。探すんだ」
「何を?」
勢い余って、音羽の首が、伸びる。
「母さんを・・・」
「はぁ?何言ってる?」
「あいつは、言った。母さんに逢いたいかって。」
「ばかな。騙されるな。あいつの言う事を信じては、ダメだ」
音羽は、僕に気を取られ、大きな百鬼に、飲み込まれそうになる。
「人を惑わすのが、あいつの本分だ。いいか、気を取られるな」
半分だけ、顔を出して叫ぶ。
「お前の母親は、ここにはいない!」
「だって、血の臭いがするって」
遠くで、邪神が、
「ほら・・・」
と、小さく呟いた気がした。
その瞬間、マンションの入り口が、見え、音羽が、僕の手を取って、転がり込んだ。
「どういう事?」
頭から、倒れ込んだが、痛みを堪え、僕は、音羽に聞いた。
「何か知っているの?そんな筈は、ないよね。音羽。君が、僕と逢ったのは、ずっと、その後だし・・」
音羽は、黙って、僕を抱き起こした。
「颯太。上に行こう」
「音羽。僕は、聞いているんだ。答えて」
一度、開いたマンションの入り口は、再び、閉じて、百鬼は、僕達を探して、君の悪い唸り声をあげ始めていた。
「上に、どうやって行くの」
「いつも、通りに」
このマンションの中は、いつもの通りなんだ。
僕は、暗証番号と部屋番号を入れる。
「どうして、こんな?」
「邪神に聞け」
音羽は、機嫌が悪かった。
きっと、顔を見るなり、金鎖を引くに決まっている。
「やっと、本当の事に気づいたな」
エレベーターが、開くと、その真ん前に、邪神が立っていた。
「お前!」
案の定、殴りかかる音羽を、僕は、押さえて、代わりに、邪神に掴みかかった。
「何を知っているんだ!」
「知っているわけではないですが。推理しただけだ」
「推理?」
「そこにいるのが、一番、疑わしいと思った事はないのか?」
邪神の黒くて長い爪は、音羽を指していた。
音羽は、舌を鳴らした。
見上げると、邪神が薄く笑いながら、こちらを見下ろしている。
「今度は、こっちを試す気か」
「同じ事を音羽がやったからでしょ」
「それを言うか?」
「うう」
百鬼は、キリが無い。
現世界と同じ異性界。
砂の海とは、違う。
ここに、陥れたのには、理由がある筈。
「そんなに、その世界に行きたいか?」
邪神は、そう言った。
「母親に逢いたいか?」
そう聞いた。
だとすれば。
「音羽。探すんだ」
「何を?」
勢い余って、音羽の首が、伸びる。
「母さんを・・・」
「はぁ?何言ってる?」
「あいつは、言った。母さんに逢いたいかって。」
「ばかな。騙されるな。あいつの言う事を信じては、ダメだ」
音羽は、僕に気を取られ、大きな百鬼に、飲み込まれそうになる。
「人を惑わすのが、あいつの本分だ。いいか、気を取られるな」
半分だけ、顔を出して叫ぶ。
「お前の母親は、ここにはいない!」
「だって、血の臭いがするって」
遠くで、邪神が、
「ほら・・・」
と、小さく呟いた気がした。
その瞬間、マンションの入り口が、見え、音羽が、僕の手を取って、転がり込んだ。
「どういう事?」
頭から、倒れ込んだが、痛みを堪え、僕は、音羽に聞いた。
「何か知っているの?そんな筈は、ないよね。音羽。君が、僕と逢ったのは、ずっと、その後だし・・」
音羽は、黙って、僕を抱き起こした。
「颯太。上に行こう」
「音羽。僕は、聞いているんだ。答えて」
一度、開いたマンションの入り口は、再び、閉じて、百鬼は、僕達を探して、君の悪い唸り声をあげ始めていた。
「上に、どうやって行くの」
「いつも、通りに」
このマンションの中は、いつもの通りなんだ。
僕は、暗証番号と部屋番号を入れる。
「どうして、こんな?」
「邪神に聞け」
音羽は、機嫌が悪かった。
きっと、顔を見るなり、金鎖を引くに決まっている。
「やっと、本当の事に気づいたな」
エレベーターが、開くと、その真ん前に、邪神が立っていた。
「お前!」
案の定、殴りかかる音羽を、僕は、押さえて、代わりに、邪神に掴みかかった。
「何を知っているんだ!」
「知っているわけではないですが。推理しただけだ」
「推理?」
「そこにいるのが、一番、疑わしいと思った事はないのか?」
邪神の黒くて長い爪は、音羽を指していた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。


絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。


久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる