それは、人に憑く。邪神備忘録

蘇 陶華

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邪神、晴を喰らい、世界は、変わる

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「向こうには、お前の母親がいるかもな。助けを求めているかもな」
晴の顔は、もはや、邪神のずる賢い顔にとって変わっていた。
オッドアイが、煌々として輝き、颯太を追い詰める。
「自分の母親が、苦しんでいるのに、放って置けるのかい?」
人間の顔は、埋もれて無くなり、額から生えた角が、雄々しく迫る。
「さぁ・・一緒に行ってあげようか?」
邪神の長く伸びた爪が、颯太の襟首を掴み上げる。
「困った子だね」
ニィッと笑った瞬間。
「うぉ!」
自分の首に手を翳し、苦しみ始めた。
「たわけ!」
音羽が、邪神の首輪を締め上げる。
「そっちは、逆らえない立場にあるのを忘れたのか」
宙に浮かび、逆さになって締め上げる音羽の姿の方が怖い。
「自分の立場を忘れたか」
両手で、鎖を締め上げ、邪神の体が、宙に浮かぶ。
「やめろ!」
邪神の両腕が、中を掴む。
「邪神でも、苦しがるんだ」
颯太が、呆然と見上げると。
「何、ぼーっとしている。お前がやれ」
音羽が、首輪を颯太に渡す。
「どちらが、主導権を握るのか、はっきりさせるんだ」
「だって、力の問題というより・・・」
「口車に乗るな」
「やめろやめろ」
邪神は、手をばたつかせ、その顔は、邪神から、高校教師の晴の顔に戻っていく。
「酷い!」
晴の顔で叫ぶ。
「僕が、何をしたって・・」
「先生?音羽・・・」
颯太は、慌てて、首輪から、両手を離してしまった。
「いいか・・」
音羽は、両手で、晴の首を締め上げる。
「お前は、颯太の従者。それ以上でも、以下でもない」
「えぇ?なんの事ですか?」
晴に戻った邪神は、ヘナヘナと床に、腰を下ろす。
「何でですか?」
「ずるいな。あいつ」
そう言うと、音羽は、腰を抜かし、床に座り込んだ晴を見下ろした。
「調子がいいなぁ。」
「な・・・なんですか?幽霊?」
「幽霊なのか、妖なのか、鬼なのか?分類上は、わからん」
音羽は、晴の鼻先に、顔を近づける。
「颯太の保護者とでも言っておくか」
「ヒィ!」
晴が、悲鳴を上げた瞬間、外でも、同じ悲鳴が上がっていった。
「何?」
音羽と顔を見合わせると、颯太は、マンションの窓に駆け寄り、悲鳴の上がった方向を見下ろした。
「なんなんだよ・・・」
「あれまぁ・・」
外には、今まで見た景色とは、違う世界が広がっていた。
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