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追われるのは、どちらか?
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嘘だろう?
僕は、混乱していた。
「狩りだって?」
ここは、ゲームの世界ではない。現実なんだ。
慌てて、放り込まれた屋敷から、転がり出た。
山に逃げろ!こいつら、普通じゃない!
僕は、裏山の笹藪に飛び込んだ。
「どこいった?」
しわがれの声で、老婆が追いかけてくる。
思ったより、早い。人間か?本当に人間なのか?
僕は、運動が苦手だ。
走るのは、特に。必死で、走るから、スニーカーが抜けどうになる。
それに、顔や頭に、木の枝がぶつかってきて、切れる。
虫も当たるし。
それより、恐怖が先に立つ。
「あのババア。早い」
人影がなく、ザザザと言う音だけが聞こえる。
「どこに隠れたの?」
「怖くないから、出ておいでよ」
クスクス笑いながら、歩いてくる。
「歩いているにしては、早くないか?」
僕は、身をかがめ、進んでいく。
「あぁぁ!そこ進むと崖なのよ」
「戻っておいでよ」
冗談じゃない。そう言いながら、手にしているのは、なんだ?
あたりの木や草を刈る音が聞こえるじゃないか?
「だから、銃の方が良かったんじゃない?」
「そんな事をしたら、すぐ、死んでしまう」
「そうね。温かい血を浴びたいわね」
狂っている。こいつら、初めてではない。僕は、もうすぐ、笹藪から抜け出す。
抜け出したら、ダッシュだ。人けがある所まで、走る。
「そこから先は、更に山なのよ」
「崖があるから」
くそっ!と思った瞬間、視界が開けた。
「やった!」
と思った瞬間、足元が崩れた。
「え?」
僕は、そこから、回転しながら、崖の下へと転がり落ちてしまった。
「だから言ったでしょう?」
「ほうら、飛び出てきた」
気がつくと、二人が、見下ろす形で、僕の前に立っていた。
「もう、捕まっちゃうの?」
「つまんない。もう一回、逃げてみる?」
彼女らが、手にしているのは、古木を伐採する手斧だ。それで、僕の頬を撫であげる。
「男なのに、綺麗な肌しているのね」
「もったいない」
二人は、恍惚とした表情になる。
「どっちが先に、切ってみる?」
二人とも、本気だ。
「待ちな」
追いついた老婆が、声を上げた。
「こういう時は、年長者からと決まっている」
「えー。おばばずるい」
老婆は、鼻を鳴らし、僕の首元に手を置いた。
「綺麗に片付けるから、安心して逝くんだな」
老婆が、手にした手斧を振り上げ、僕の頭上へと、振り落とした。
「ウェ!」
周りに飛び散る僕の血しぶき。
だが、悲鳴を上げたのは、僕ではなかった。
僕の手の中に、手斧は、あった。固く、刃先を握り締め、夥しい血液が流れる。
「温かい血しぶきは、どうだい?」
僕の口からは、低く冷たい声が、流れていた。
僕は、混乱していた。
「狩りだって?」
ここは、ゲームの世界ではない。現実なんだ。
慌てて、放り込まれた屋敷から、転がり出た。
山に逃げろ!こいつら、普通じゃない!
僕は、裏山の笹藪に飛び込んだ。
「どこいった?」
しわがれの声で、老婆が追いかけてくる。
思ったより、早い。人間か?本当に人間なのか?
僕は、運動が苦手だ。
走るのは、特に。必死で、走るから、スニーカーが抜けどうになる。
それに、顔や頭に、木の枝がぶつかってきて、切れる。
虫も当たるし。
それより、恐怖が先に立つ。
「あのババア。早い」
人影がなく、ザザザと言う音だけが聞こえる。
「どこに隠れたの?」
「怖くないから、出ておいでよ」
クスクス笑いながら、歩いてくる。
「歩いているにしては、早くないか?」
僕は、身をかがめ、進んでいく。
「あぁぁ!そこ進むと崖なのよ」
「戻っておいでよ」
冗談じゃない。そう言いながら、手にしているのは、なんだ?
あたりの木や草を刈る音が聞こえるじゃないか?
「だから、銃の方が良かったんじゃない?」
「そんな事をしたら、すぐ、死んでしまう」
「そうね。温かい血を浴びたいわね」
狂っている。こいつら、初めてではない。僕は、もうすぐ、笹藪から抜け出す。
抜け出したら、ダッシュだ。人けがある所まで、走る。
「そこから先は、更に山なのよ」
「崖があるから」
くそっ!と思った瞬間、視界が開けた。
「やった!」
と思った瞬間、足元が崩れた。
「え?」
僕は、そこから、回転しながら、崖の下へと転がり落ちてしまった。
「だから言ったでしょう?」
「ほうら、飛び出てきた」
気がつくと、二人が、見下ろす形で、僕の前に立っていた。
「もう、捕まっちゃうの?」
「つまんない。もう一回、逃げてみる?」
彼女らが、手にしているのは、古木を伐採する手斧だ。それで、僕の頬を撫であげる。
「男なのに、綺麗な肌しているのね」
「もったいない」
二人は、恍惚とした表情になる。
「どっちが先に、切ってみる?」
二人とも、本気だ。
「待ちな」
追いついた老婆が、声を上げた。
「こういう時は、年長者からと決まっている」
「えー。おばばずるい」
老婆は、鼻を鳴らし、僕の首元に手を置いた。
「綺麗に片付けるから、安心して逝くんだな」
老婆が、手にした手斧を振り上げ、僕の頭上へと、振り落とした。
「ウェ!」
周りに飛び散る僕の血しぶき。
だが、悲鳴を上げたのは、僕ではなかった。
僕の手の中に、手斧は、あった。固く、刃先を握り締め、夥しい血液が流れる。
「温かい血しぶきは、どうだい?」
僕の口からは、低く冷たい声が、流れていた。
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