それは、人に憑く。

蘇 陶華

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春の嵐は、少女の霊を連れてくる

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ばあちゃん。僕は、ばあちゃんが怖い。それは、小さい時に、言うことを聞かないと、よく蔵に閉じ込められたせいだし、留守がちなお袋に変わって、面倒を見てもらったせいでもある。だから、ばあちゃんの言う事は、絶対なのは、わかっている。だけど。
「客だ」
ばあちゃんが、客が来ていると言う。初対面の人間を家に入れる事なんてできない。が、それは、あくまでも、初対面だからだ。
「客ではないよ」
僕は、否定した。
「前の学校の生徒だよ」
今の学校に赴任する前に居た子で、何かと問題を出した子だった。僕も巻き込まれそうになったけど、以前から出していた移動願いが叶って、巻き込まれる前に、逃げるように、学校を変わっていた。だから、あちらから、僕の家に来るなんて事はあってはいけない。
「家にお通ししろ」
「ダメだよ。知らない人だ」
「嘘を言うな」
「嘘ではないよ。ばあちゃんは、知らない人だ」
「人ではない」
「は?人だよ。何言っているの?」
僕は、そう言われて、ドッキとした。人ではない。何故、ばあちゃんは、そう思うのか?僕は、何も言っていない。僕が、彼。そう、外で、待っているのは、前の学校の生徒。男子学生だ。彼は、何かと校内で、問題を起こしている。ばあちゃんが人ではないと言っている理由が、ある。それは、僕が最も、嫌いな理由だ。彼は、霊が見える。校内で、霊と話をしているのを何人も、目撃している。そして、僕は、霊の類は、大の苦手なんだ。勘弁してくれー。ばあちゃんが人ではないと言うのも、納得行く気がする。
「お前に話があるらしい」
「僕は、ありません」
僕は、ばあちゃんを振り切り、自分の部屋に、飛び込んだ。せっかく学校を変わったのに、家にまで、追いかけてくるなんて、どういう事なんだ。
「晴!」
思い通りにならないと、ばあちゃんは、癇癪を起こす。
「上がってもらったからな」
大声で、寝室から叫ぶ。なんて、元気なんだ。寝たきりだったり、歩き回ったり、とても同じ人物とは、思えない。
「お前の家のばあちゃん化け物だよな」
小さい頃、近所の子供によく言われた。自分でも、そう思っていたけど、他人に言われると腹が立つ。神出鬼没。その言葉がよく合う。
「家に来られると困るわけ?」
僕が、机に向かって、明日の準備を始めると不意に、後ろから声がかかった。
「え?ど・・・どして?」
「上げれって言われたけど」
「誰に?」
「妖怪みたいな・・」
妖怪みたいな婆さん。それは、僕のばあちゃんの事だ。って・・・。君は?
「勝手に上がらせてもらいました」
僕の前に、霊が見える高校生が立っていた。
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