酒涙雨で終わりにしようか?君の心臓を天に捧ぐから。

蘇 陶華

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酒涙雨。明けて夏空は、すごそこに。

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何度か小さな地震は、続いていたが、大きな災害に至る事もなく、ナチャの力もあり、表面上は変わりもなく退屈で、平凡な時間が流れていた。
「じゃ・・・俺は、行くから」
ナチャは、小さくまとめた自分の荷物を、スーツケースに押し込み、確認するように、蹴って見せた。
「こちらにいても、いいのよ」
真冬は、名残惜しいように声をかけるが、無茶は、首を振った。
「兄を探さなきゃいけない気がして・・」
ナチャの呪われた兄、ハワードは、犀花が、亡くなってから、姿を消していた。犀花は、富士の山で、雨と風の中、光となって消えていった。誰もが、目にしていたが、どこかで、まだ、生きているかのようなそんな錯覚を感じさせる最後だった。
「じゃ・・・」
気をつけてと言いたかったが、あんな犀花の最後を見て、誰も、何も言う気がなかった。
「柊雨は?」
白夜狐とは、言えなかった。彼のあの後の姿を誰も、見ていない。真冬は、黙って首を振った。
「そうか・・・」
ナチャは、短く頷いた。
「ちょうど・・・あの日は、七夕だったのよ」
真冬は、少し笑いながら言う。
「七夕なのに、雨が降るのね。あまり、人は知らないけど、酒涙雨っていうのよ・・・」
「七夕?」
ナチャは、織姫と彦星の話を知らない。不思議そうな顔をするので、真冬が付け加える。
「引き裂かれた恋人達の間には、星の河が流れているの、年に1度だけ逢えるんだけど、恋人に逢える嬉しさあまり、雨を降らせてしまうの。そうすると、河が暴れて、また、逢えなくなる。そんな雨よ」
「雨が降った事で、落ち着く事もあるって、聞いたよ」
「そうね。そんな言葉もあるわね」
ナチャは、軽く目で挨拶をすると、スーツケースを引いて歩き出した。あれから、白夜狐を見た者は、誰もいない。もう少しで、梅雨も明けるだろう。また、暑い夏がやってくる。太陽は暑く、夏の夜に、月の光だけが、凍えるように冷たい。
「見えるか?白夜狐」
何処かにいる白夜狐に、問いかける様に、ナチャは、一人、街を後にしていった。
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