酒涙雨で終わりにしようか?君の心臓を天に捧ぐから。

蘇 陶華

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白夜狐は、時を超えて

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目の前に現れたのは、白夜狐だった。今、目の前にいた白夜狐とは全く違う、別の世界からやってきた白夜狐だと真冬は、わかったが、危険な行為である為、その手を使うとは、思わなかった。
「いつの時代から超えてきた?」
白夜狐に問いかける真冬の声は、少し、怒りがこもっていた。
「どこで、間違えたのかと思った」
「かなり、後の世界から?どうして来たの?私は、止めなかった?」
白夜狐は、真冬の顔を見て、ふと優しい目つきになった。
「変わらないよ。今も、昔も」
真冬は、いつも、自分の事を心配してくれる。姉の様でもあり、母の様でもある。
「真冬は言ったよな。眷属の立場を・・・。もう一度だけ、道を正すとしたら、この時だと思った」
「先の世界でも、彼女はいるのね」
「神女だから・・・な。少し、形は、変わってしまっているけど」
真冬の視線の先で、地に落ちた白夜狐が、起きあがろうとしているのを見ると、先の白夜狐は、更にフードを深く被った。
「俺の存在を知らせるな。わかっているだろう」
「わかっているわ」
真冬は、先の白夜狐に、隠れている様に、手で合図を送ると、過去の白夜狐の手を取った。
「怪我をしているわ」
「あ・・あぁ。」
一瞬、何が起きたのか、わからない様子だった。
「誰か、来なかったか?」
「そうだったかしら?弓矢の練習をしている子達がいたのね。避けれないなんて、腕も落ちたわね」
真冬は、怪我を気遣うふりをすると、過去の白夜狐の背中小突き、意識を失わせた。
「これで、いいのね」
頷きながら先の白夜狐が現れる。
「この後、逢いに行き、落ち合う約束をするんだ。決して、逢わせてはいけない。予定通り、神の供物になれば、後の不幸は起きない」
「あなたが、そう判断するなんて、余程、辛い目にあったのね」
「これが、自分のできる事だよ。真冬。」
「危険を侵してまで、ここに来るなんて・・」
白夜狐は、ため息をついた。
「自分が、初めた事だから、彼女の魂が、何年も、迷うなんて、思いもしなかった」
「早く帰って。ここは、私達に任せて。本人にあったら、帰れなくなる」
真冬の言葉に、反応しない。
「どうしたの?早く帰って」
白夜狐は、首を振った。
「帰らないの?」
「最初から、戻らないと決めている」
「何を言っているの?先の時代でも、守らなくてはならない勤めがあるでしょう?」
「何も、変わらないんだ・・・何も」
先の白夜狐は、そう言うと、過去の自分の顔を横目で、チラッと確認し、神殿の屋根から、飛び降りていった。
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