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二人の白夜狐
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白夜狐は、あの日から順調に仕事をこなしていった。確実に霊力をつけていき、獣神の封印もお手のもので、眷属達の中でも、一目置かれる様になっていた。だが、あの日から、巫女に会う事は無くなっていた。どんなに、待っても、巫女が現れる事はなかった。異変に気付いたのも、真冬だった。いつもの通り、神殿の屋根の上で、白夜狐は、一人で、酒を嗜んでいた。そんなに、飲むつもりはない。少しずつ、口に含んでは、喉に押し込む。使える八百万の神々に献杯し、酒を推める。飲んでいると、自分が憂いている事を忘れることができた。
コトッと音がして、白夜狐は、顔を上げた。巫女が来るはずはない。そうおもっちても、期待してしまう。
「待っているのね」
「別に、誰も、待ってなんかいない」
「そんな嘘言って・・・」
そう言って真冬は、言葉を噤んだ。
「何か、俺に隠している?」
「柊雨・・・黙っているつもりだった」
「なら、黙っていてよ」
誰の話をするのかは、わかっていた。
「聞かない」
「聞いてほしい。そして、諦めて欲しい」
「聞いたら、諦められない。でも、話さないと、一生、恨む」
白夜狐は、酒杯を、遠くへ投げ捨てた。
「お鏡様の事だろう。」
白夜狐の声は、怒りを含めていた。
「もう、二度と会えない。神女になる日が決まった」
「そう・・・」
思ったより、反応は薄かった。
「巫女なんだから、そのまま、供物になってしまうのか、神女として生きるのか、わからなかったけど。行き先が決まったの。供物として、終わるよりは、いいわよね」
「神女として生きるのがいい?誰が、そう言った?」
白夜狐の剣幕に、真冬は、驚いたと同時に、悲嘆した。彼は、本気なのだ。
「柊雨。わかっているの?私達には、どうする事もできないのよ」
「眷属だからな」
真冬は、悪くないのに、白夜狐は、彼女を睨みつけた。
「黙って見ていろと?」
「逢ってはいけない。今は、禊の時間で」
真冬が、止めようとする間もなく、白夜狐は、闇の中に飛び出して行こうとした。が、
「!」
風を切る音が、耳を掠め、一本の矢が、白夜狐の肩を射抜いていった。
「誰?」
真冬が、闇を見つめる間に、白夜狐は、地面へと落ちていく。
「誰なの?」
目の前に現れたのは、弓矢を手にした。フードを目深に被った男だった。表情は、計り知れないが、容姿は、白夜狐によく似ている。
「嘘でしょう?あなた」
男は、フードを外した。中から、現れたのは、先ほどまで、ここに居た白夜狐、本人であった。
「まさか・・・」
真冬は、口を覆った。眷属達は、時間を遡る事はできるが、自分に関わる事は禁じられている。それが、罰せられると灰になって消されてしまう。
「そうだよ。俺だ」
フードの中から、顔を出したのは、もう一人の白夜狐だった。
コトッと音がして、白夜狐は、顔を上げた。巫女が来るはずはない。そうおもっちても、期待してしまう。
「待っているのね」
「別に、誰も、待ってなんかいない」
「そんな嘘言って・・・」
そう言って真冬は、言葉を噤んだ。
「何か、俺に隠している?」
「柊雨・・・黙っているつもりだった」
「なら、黙っていてよ」
誰の話をするのかは、わかっていた。
「聞かない」
「聞いてほしい。そして、諦めて欲しい」
「聞いたら、諦められない。でも、話さないと、一生、恨む」
白夜狐は、酒杯を、遠くへ投げ捨てた。
「お鏡様の事だろう。」
白夜狐の声は、怒りを含めていた。
「もう、二度と会えない。神女になる日が決まった」
「そう・・・」
思ったより、反応は薄かった。
「巫女なんだから、そのまま、供物になってしまうのか、神女として生きるのか、わからなかったけど。行き先が決まったの。供物として、終わるよりは、いいわよね」
「神女として生きるのがいい?誰が、そう言った?」
白夜狐の剣幕に、真冬は、驚いたと同時に、悲嘆した。彼は、本気なのだ。
「柊雨。わかっているの?私達には、どうする事もできないのよ」
「眷属だからな」
真冬は、悪くないのに、白夜狐は、彼女を睨みつけた。
「黙って見ていろと?」
「逢ってはいけない。今は、禊の時間で」
真冬が、止めようとする間もなく、白夜狐は、闇の中に飛び出して行こうとした。が、
「!」
風を切る音が、耳を掠め、一本の矢が、白夜狐の肩を射抜いていった。
「誰?」
真冬が、闇を見つめる間に、白夜狐は、地面へと落ちていく。
「誰なの?」
目の前に現れたのは、弓矢を手にした。フードを目深に被った男だった。表情は、計り知れないが、容姿は、白夜狐によく似ている。
「嘘でしょう?あなた」
男は、フードを外した。中から、現れたのは、先ほどまで、ここに居た白夜狐、本人であった。
「まさか・・・」
真冬は、口を覆った。眷属達は、時間を遡る事はできるが、自分に関わる事は禁じられている。それが、罰せられると灰になって消されてしまう。
「そうだよ。俺だ」
フードの中から、顔を出したのは、もう一人の白夜狐だった。
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