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風の悪戯に、巫女は顔を覗かせる
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神殿は、長い階段の先にある。眷属達が、神に祈りを捧げる末端の巫女に会う事はないが、その日は、別だった。白夜狐は、まだ、眷属に成り立てて、真冬と共に、仕える神の元に来ていた。諸用が済んで真冬と共に、民達の暮らしぶりを見て回っていた。どこにも、巫女達はおり、神々と民との間を繋いでいたが、とりわけここの巫女は、評判が悪かった。あまり、お役目を果たせていないと聞いた。霊力が低いのか、民の不満は、堆積しており、日照りで、限界を迎えていた。
「人の力では、どうにもならない事がある」
真冬は、そう言っていた。自分達に判断する事はできない。悪い事も、神が決めたのなら、従うまでだ。時として、人の都合の悪い事も起きてしまう。真冬は、さっさと、立ち去ろうと、白夜狐の袖を引いたが、白夜狐は動かなかった。彼の顔を見上げると、お鏡様と呼ばれる巫女が、階段の最上段から1歩踏み出すところだった。一陣の風が吹き上がり、顔を包んでいたベールが舞い上がった。
「あ!」
お鏡様は、慌ててベールを引っ張り顔を隠した。顔を見られてはいけない。そう思い、誰かに見られていまいかと、顔を上げると、階下から見上げる目線に気づいた。
「あれ?」
慌てて、白夜狐は、目を逸らした。が、一瞬、二人は、見つめあっていた。
「どうしたの?」
異様な空気に気付き、真冬は、白夜狐に尋ねた。
「いや。なんでもない。行こう」
白夜狐は、頭を振ると、真冬の手を引いた。何も、見ていない。白夜狐は、そう思い込む様にした。お鏡様は、目深にベールで顔を覆い、誰にも、素性がわからない様にしている。まして、男の目に触れる事があってはいけない。眷属達なら、尚更。彼女らは、自分達の供物なのだから。お鏡様は、顔を見られたとは、思っていなかった。階下のただならぬ空気は、察したが、自分の責務の重さに、項垂れ、階段を降りてくのだった。
「このまま、雨が降らなければ、どうなるんだ?」
先を急ぎながら、白夜狐は聞いた。
「差し出せって、事よね。供物になるのね。水の神か、火の神か、私達は、逆らえない。どうして?」
「別に」
「世事が気になるなんて、珍しいわね」
ベールの下の顔は、まだ、幼い少女の面影が、残っていた。あんな年端のいかない子が、そのまま供物になるのは、忍びない。
「白夜狐。何か、考えている?」
真冬は、先ほどから、話しかけていたのだが、白夜狐の耳には、届かなかった。
「あぁ・・・えっと、異民族の事だった?」
「聞いていたのね」
真冬は、笑った。
「地の果てから、多くの異民族が移動している。この地の民族の祖先が変わるかもしれない事態なのよ。どこから、来ているのか?探さないと」
遠い一説に、日本民族の祖先は、イシュメール人との話があった。地を移動してるのではなく、霊力の溜まった地を空間移動してきている。支配する神のバランスが崩れてしまう為、眷属達は、その地を巡回していた。
「エネルギーの歪みが必ずある。匂いが、変わるの。よく、用心して」
白夜狐は、先ほどの巫女が気になったが、今は、忘れる事にした。
「人の力では、どうにもならない事がある」
真冬は、そう言っていた。自分達に判断する事はできない。悪い事も、神が決めたのなら、従うまでだ。時として、人の都合の悪い事も起きてしまう。真冬は、さっさと、立ち去ろうと、白夜狐の袖を引いたが、白夜狐は動かなかった。彼の顔を見上げると、お鏡様と呼ばれる巫女が、階段の最上段から1歩踏み出すところだった。一陣の風が吹き上がり、顔を包んでいたベールが舞い上がった。
「あ!」
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「あれ?」
慌てて、白夜狐は、目を逸らした。が、一瞬、二人は、見つめあっていた。
「どうしたの?」
異様な空気に気付き、真冬は、白夜狐に尋ねた。
「いや。なんでもない。行こう」
白夜狐は、頭を振ると、真冬の手を引いた。何も、見ていない。白夜狐は、そう思い込む様にした。お鏡様は、目深にベールで顔を覆い、誰にも、素性がわからない様にしている。まして、男の目に触れる事があってはいけない。眷属達なら、尚更。彼女らは、自分達の供物なのだから。お鏡様は、顔を見られたとは、思っていなかった。階下のただならぬ空気は、察したが、自分の責務の重さに、項垂れ、階段を降りてくのだった。
「このまま、雨が降らなければ、どうなるんだ?」
先を急ぎながら、白夜狐は聞いた。
「差し出せって、事よね。供物になるのね。水の神か、火の神か、私達は、逆らえない。どうして?」
「別に」
「世事が気になるなんて、珍しいわね」
ベールの下の顔は、まだ、幼い少女の面影が、残っていた。あんな年端のいかない子が、そのまま供物になるのは、忍びない。
「白夜狐。何か、考えている?」
真冬は、先ほどから、話しかけていたのだが、白夜狐の耳には、届かなかった。
「あぁ・・・えっと、異民族の事だった?」
「聞いていたのね」
真冬は、笑った。
「地の果てから、多くの異民族が移動している。この地の民族の祖先が変わるかもしれない事態なのよ。どこから、来ているのか?探さないと」
遠い一説に、日本民族の祖先は、イシュメール人との話があった。地を移動してるのではなく、霊力の溜まった地を空間移動してきている。支配する神のバランスが崩れてしまう為、眷属達は、その地を巡回していた。
「エネルギーの歪みが必ずある。匂いが、変わるの。よく、用心して」
白夜狐は、先ほどの巫女が気になったが、今は、忘れる事にした。
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