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太古の月は、赤く燃えて

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不本意ながら、犀花に助けを求めた真冬が向かったのは、皇族の始祖が眠るという墓陵だった。始祖が眠れるという伝説が巷に流れ入るが、実際は、始祖が眷属達も同時に祀った墓陵だった。始祖と眷属達は、共にあり、死しても、眷属達は、変わる事のない存在だった。代々の始祖達は、そこに眠れている。ただ、一人を除いては。それは、太古に、占星術と呪いとで、国を統一しようとした、かの姫。あらぬ事で、死してしまい、白夜狐が、見送った女皇。かの姫の行方のみ、未だにしれないという。真冬は、その経緯を悟っては、いたが、それを他の誰かに、話す事はしなかった。眷属が、一線を越える事など、あってはいけないのだ。かの姫が、死して安心したのは、真冬であり、墓陵に、入る事を、認めなかったのも、真冬だった。荒ぶれる魂となったかの姫は、安住の地を求めた彷徨った。
「一番、頼みたくない人が誰か。私の気持ちをわかって欲しい」
犀花は、黙って、真冬の後について行った。幸いにも、キリアスは、犀花の中で、眠っている。白夜狐が、自分の額に触れた唇が、花の印となって、キリアスの人格を封印している。
「白夜狐をあなたに逢わせたのがたのが、失敗だったと思ってる」
まだ、真新しい棺が、最前列に、置かれていた。真冬が、右手を挙げると、石の棺は、真横にずれ地に落ちていった。
「中を見るがいい」
恐る恐る、中を除いた犀花は、小さく叫び口を塞いだ。中で、眠るのは、硬く目を閉じ、右手を胸に置いたまま、眠り続ける柊雨の姿だった。
「彼は?」
真冬は、うなづいた。
「知っていたかと、思った。そのままの姿でいた時もあったから」
柊雨の髪を撫でる真冬の仕草が、真冬の思いを現していた。新月の夜にあった時の姿とは、また、異なり、教室でよく見る冴えない姿の柊雨の姿だった。
「私の頼みとは?」
どうして、自分に真冬が助けを求めるのか、理解できなかった。眷属達が、自分に敵意を抱いているのは、わかってる。自分の中の魔女が原因なのかとも思ったが、真冬の感情は、それとも違っていた。
「元にもどしてほしい」
「誰を?」
真冬は、柊雨を指差す。それは、白夜狐。こと、柊雨だった。
「あなたなら、できるでしょ。以前も、時間を止めてしまった白夜狐を引き戻した」
「待って、前にもって。私は、知らない。キリアスなら、知っているのでは?」
思い返しても、自分は、事故以前の記憶はないのだ。あるとしたら、悪代の魔女。キリアスしか行えないと思った。
「キリアスではない。もっと、前よ。この墓陵も全て、あなたが作った」
「私は、何も覚えていない」
「だから、今、思い出させてあげる」
真冬は、両手を交差し、左右に開いていく。指と指の間から、青い光が迸り、やがて、1本の剣となって現れる。
「あなたが、彼を迷わせなければ、何も、始まらなかった。キリアスもね」
光となった剣が、突き刺さったのは、犀花の白夜狐の触れた唇の痕だった。
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