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血塗られた女神

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食事に出かけると聞いた亜黄は、ハッとして振り返った。
「待って!食事って」
亜黄を見つめる犀花の顔が恐ろしい。
「何を慌てている?」
ハワードを従え、犀花は、騎馬用の長い鞭を手にしていた。
「しばらくぶりに、食事をしたい。止めるのか?」
「普通の食事であれば」
犀花に手を貸しはしたが、眷属として、人を殺める事に手を貸すことは出来ない。跪き頭を下げながら、亜黄は、考えを巡らせた。何とか、犠牲を出さずに済む方を考えなくては。本物の体の持ち主、犀花も、キリアスが、食事をする事を望んではいないだろう。ハワードは、見た目通り、頭のない体で、自分の乗ってきた黒馬の鼻を取っていた。光のない所で、初めて見た時は、黒々とした美しい馬だと思っていたが、ランプの中の炎が、キリアスの体内に宿った今、改めてみる黒馬は、痩せた骨だけの状態になっていた。白く輝く骨だけの体で、キリアスを乗せ、外に出ようとしている。
「待って!」
亜黄は、引き止める。
「外には、白夜狐や仲間達が見張っている。おいらが、外で、何か、とって来るよ」
「外に、眷属達がいても、構わん」
キリアスは、騎馬用の鞭で、空気を切っている。
「眷属達の血は、どんな味がするのだろうな」
「あ・・・あの、いい場所。知っています。そこに行けば、眷属達が出て・・」
鞭先で、そっと、亜黄の顔を持ち上げる。
「お腹が空いてるって、言ってるの。イライラするから、ごちゃごちゃ言わない。自分で、行くわ」
キリアスは、亜黄の丸い頭を床に落とすと、骨だけになった騎馬に、ハワードと跨った。
「腹を満たしたら、すぐ、戻ってくる。話があるから、逃げるでない」
そういいい放つと、キリアスとハワードは、夜の闇へと消えて行った。
「あぁ・・」
亜黄は、ため息をついた。
「一体、どうしたらいいんです?」
亜黄の先の尖った耳は、あちこち四方をくるくる向いた。どこか、遠くから、何かが聞こえたのか、一方向を向くと、その動きは、止まった。
「はい。わかりました」
誰かに、何を言われたのか、声を発すると、急に亜黄は元気を失ってきた。
「はぁ・・・早く、終わってくれ」
亜黄が呟くと、頭から、深くマントを被った少年の姿が現れた。白夜狐だった。
「俺・・・こういうの、苦手です」
「もう少しの辛抱だ。キリアスが、現れたんだろう?」
「ですけど。怖くて、怖くて」
「大丈夫だ。この辺りに結界を準備した。奴らは、我らの術の中にある」
そう言い放つと亜黄を宥めるかのように、肩を叩くと外へと飛び出して行った。
「二重スパイの役をやれって言ったのは、白夜狐様ですからね。俺は、そんな器ないのに」
不満げに、白夜狐の後ろ姿を見つめていた。

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