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風車は、回る西から雨
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「ごめん・・」
亜黄は、小さく呟いた。
「だから・・・犀花には、近づいて欲しくなかった」
「いつから?」
白夜狐は、信じられない顔で見つめている。
「それは・・・」
「由々しき事よ。こんな事、自分の立場をわかっているの」
真冬がヒステリックに叫んだ。
「眷属として、この地を守る事をどう考えているの!」
「だから・・・なんだ」
「どういう事」
「ずいぶん、揉めているのね」
犀花は、掌に載せた青い炎に息を吹きかけた。炎は、次第に、赤くなり、大きくなっていく。
「誰を守るのか?って事よ」
犀花の、髪は、次第に銀色に染まり、見開く瞳は、左右の色が変わっていく。
「この小さな体に収められて、どんなに窮屈か。わかるか?かの地を追い出され、やっとこの地にたどり着いたら、お前達に沈められた」
犀花の掌で、育った炎は、犀花が、息を吹きかけると、花びらの様にあたりに飛び散り、火を放っていく。
「私の体を取り戻す為には、この犠牲はかまわない」
犀花の背には、大輪の花の様に、炎の輪が広がっていく。
「犀花、やめろ!」
白夜狐は、両手首を合わせ、印を結ぶと、炎に向けて放つ。
「もう、終わっているんだ。遠い時代の事だ」
「終わってはない。また、始めるんだ」
地に響く声が、降り注ぎ、黒馬に跨った騎士が姿を現せた。声は、聞こえるが、深く被ったフードからは、顔が見えず、生きている者の気配はない。
「随分と景色に合わない黒馬だな!」
白夜狐は、叫んだ。
「景色が、私達に合う様になる」
騎士は、長い槍を犀花に差し出すと、軽々と、馬の背に飛び載せた。
「思うようにさせない」
白夜狐は、犀花を、馬上から、降ろそうと飛びついた。
「ええい!離せ!」
犀花は、両手から、炎の花を投げつけるが、白夜狐は、負けない。結んだ印の中に炎は、吸い込まれる。黒騎士にしがみつく犀花の手を、白夜狐は、振り解く。
「行ったらだめだ。今までの、人達の苦労が無駄になる」
「離せ!」
もがく犀花の、額が裂け、中から、もう一つの目が、現れた。
「犀花!」
「邪魔するな」
見開く目は、白夜狐を青い光で、縛り付けた。
「待て!」
体が動かず、地面に転落する白夜狐。額の瞳は、両目より激しく憎悪の炎を、周りの者に向けていた。
「憎しみが止まらんな」
騎士は、嬉しそうに笑った。
「さあ、行くぞ」
馬に鞭を打つ黒騎士の後ろで、犀花は、意識を失いかけていた。見開いた両目は、力を失っていき、額の目は、閉じていた。
「犀花!」
後を追うように、亜黄は、黒騎士の後を追いかけ、白夜狐は、地面に沈んでいった。
「助けて・・・・」
意識を失いながら、小さく呟く犀花の声が、白夜狐に聞こえていた。
亜黄は、小さく呟いた。
「だから・・・犀花には、近づいて欲しくなかった」
「いつから?」
白夜狐は、信じられない顔で見つめている。
「それは・・・」
「由々しき事よ。こんな事、自分の立場をわかっているの」
真冬がヒステリックに叫んだ。
「眷属として、この地を守る事をどう考えているの!」
「だから・・・なんだ」
「どういう事」
「ずいぶん、揉めているのね」
犀花は、掌に載せた青い炎に息を吹きかけた。炎は、次第に、赤くなり、大きくなっていく。
「誰を守るのか?って事よ」
犀花の、髪は、次第に銀色に染まり、見開く瞳は、左右の色が変わっていく。
「この小さな体に収められて、どんなに窮屈か。わかるか?かの地を追い出され、やっとこの地にたどり着いたら、お前達に沈められた」
犀花の掌で、育った炎は、犀花が、息を吹きかけると、花びらの様にあたりに飛び散り、火を放っていく。
「私の体を取り戻す為には、この犠牲はかまわない」
犀花の背には、大輪の花の様に、炎の輪が広がっていく。
「犀花、やめろ!」
白夜狐は、両手首を合わせ、印を結ぶと、炎に向けて放つ。
「もう、終わっているんだ。遠い時代の事だ」
「終わってはない。また、始めるんだ」
地に響く声が、降り注ぎ、黒馬に跨った騎士が姿を現せた。声は、聞こえるが、深く被ったフードからは、顔が見えず、生きている者の気配はない。
「随分と景色に合わない黒馬だな!」
白夜狐は、叫んだ。
「景色が、私達に合う様になる」
騎士は、長い槍を犀花に差し出すと、軽々と、馬の背に飛び載せた。
「思うようにさせない」
白夜狐は、犀花を、馬上から、降ろそうと飛びついた。
「ええい!離せ!」
犀花は、両手から、炎の花を投げつけるが、白夜狐は、負けない。結んだ印の中に炎は、吸い込まれる。黒騎士にしがみつく犀花の手を、白夜狐は、振り解く。
「行ったらだめだ。今までの、人達の苦労が無駄になる」
「離せ!」
もがく犀花の、額が裂け、中から、もう一つの目が、現れた。
「犀花!」
「邪魔するな」
見開く目は、白夜狐を青い光で、縛り付けた。
「待て!」
体が動かず、地面に転落する白夜狐。額の瞳は、両目より激しく憎悪の炎を、周りの者に向けていた。
「憎しみが止まらんな」
騎士は、嬉しそうに笑った。
「さあ、行くぞ」
馬に鞭を打つ黒騎士の後ろで、犀花は、意識を失いかけていた。見開いた両目は、力を失っていき、額の目は、閉じていた。
「犀花!」
後を追うように、亜黄は、黒騎士の後を追いかけ、白夜狐は、地面に沈んでいった。
「助けて・・・・」
意識を失いながら、小さく呟く犀花の声が、白夜狐に聞こえていた。
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