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始まりを告げる鉾のかけら

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犀花と白夜狐が出会うその少し前、真冬達、眷属は、九州にある鷹地穂にいた。その中に、当然、白夜狐もおり、山奥の石棺の眠る崖の前に、呆然として立ち尽くしていた。
「どうして。。。こんな」
切り立った崖を見上げると、そこに大きな矛がつく刺さっている筈だったが、そこに、矛は、微塵もなく、あるのは、同士の屍だった。あるべき筈だった鉾は、どこにも、見当たらず、代わりに、鉾の柄だけが、真っ二つに折れ、深々と突き刺さっていた。
「鉾が、ない」
亜黄も、オロオロと辺りを見回した。
「何度見ても、ない」
真冬が、亜黄にあきらめる様に促した。
「これは。。」
「嫌な予感がする」
白夜狐は、鉾の柄を片手で、抜き取り同士の屍を地面に置いた。
「さほど、時間は、経っていない。」
「始祖達が、この国を作った鉾を誰が、持ち去り、代わりに、我ら眷属の殺めたのでしょうか?」
亜黄は、おずおずと、真冬と白夜狐の顔を見比べた。
「ここが、始祖の地と知って、故意に置いていったのであろう」
真冬は、答える。
「赤森の石棺に、亀裂が入ったと知らせがあったのは、昨日だな」
白夜狐が、もう、一人の眷属に言う。
「はい。亀裂と同時に、、、、その」
「そのって?」
答えた者は、言うべきか、迷っている様だった。
「早く、言え」
亜黄は、苛立った。
「赤森だけではなく、その他でも、亀裂が入り、そこから、夥しい鮮血が流れていると聞きました」
「本当なのか?」
真冬の顔色が変わった。
「何故、早く言わなかった」
「悪戯かと、思いまして。。。何度か、人間の子供が入り込むことがありましたので。まさか、ここで、こんな」
「石棺の亀裂は、ともかく。。。矛先がない」
白夜狐は、そこにあったであろう柄を見上げていた。
「今まで、誰も、持ち去ることなんて、できなかったのは、そこに鉾の意志がなかったから。こうして、ないのを見ると」
「自分の意志で、消えたってこと?」
「我ら以外に。。。」
白夜狐が、両手を合わせて、印を結ぶと、青白い炎が、両掌に生まれた。炎は、同士の屍の上に降りると、細く円を描き、何かを白夜狐に告げていた。
「白雲は、何と?」
死した同士は、白雲と言う。
「本人も、よく、覚えていない。巡回の時に、不意に襲われたらしい」
白夜狐は、残念そうに言った。
「明日は、朔日。何も、動きがないといいけど」
国作りをしたという伝説の矛先。鷹地穂の地で、崖に刺さったままの状態で、眷属達が、守っていたが、何者かに奪われ、巡回していた者の命は奪われてしまった。始まりと再生を司る鉾の紛失は、朔日の前日と言う事もあり、ただならぬ不吉な匂いを感じ取っていた。その後、白夜狐達は、各、地域の眷属達と連絡をとり、石棺のある森へと向かうが、どこの石棺にも、亀裂が入り、どこからなのか、紅い血を流し続けていたのだった。
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