酒涙雨で終わりにしようか?君の心臓を天に捧ぐから。

蘇 陶華

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八百万の神の乗る錦雲

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白夜狐は、犀花を抱きしめ夜の街を跳んでいた。正しく言えば、飛び跳ねていたに近いが、犀花にとっては、柔らかな雲に乗っている様な、ふわふわした気持ちだった。
「起きてるね」
途中で、気づいた白夜狐が声をかけた。
「何も、覚えていないとはいえ。。。失礼な事をさせてしまった」
白夜狐は、呟く様に言った。
「庇うわけではないけど。真面目なんだ。本当に」
「いろんな世界に連れて行かれたり、私の身にもなってほしい」
この白夜狐と呼ばれる少年にあってから、幾つもの、世界を垣間見ている。
「うん。僕が、悪い訳ではないんだ」
犀花の心の中を見抜いた様に、言った。
「君がね。どうして、この国に来たのか?って事で、僕らは、ざわついている」
犀花をそっと、そばに建つ古いビルの屋上へと座らせる。
「あなた達は、何なの?」
「僕ら?」
白夜狐は、笑った。
「そうだね。。。見た目は、何に見える?」
「そう。。ね」
犀花は、まじまじと白夜狐を見つめた。
「狐」
「そう!」
と言ってから、首を振った。
「ではないんだ。。。眷属と言って、使い魔かな。。。君にも、いるよね」
「あぁ。。。」
ナチャの事を言っていると気づいて、犀花は、うなづいた。
「でも、私は、神ではないわ」
「そうだね。。それよりも、厄介な者らしい」
白夜狐は、犀花の顔をじっと見つめた。
「この地に、来ては、いけなかった」
ため息混じりに言う。
「ここはさ。。。遠い昔に渡ってきたある大神の墓を祀ってあるんだ。僕らは、その人を守っている」
「それって、私に知られていいの?」
「知らない筈は、ないよ。君が気づいていないだけ」
「ど。。どおいう?」
白夜狐は、また、笑うと、犀花の手を取った。
「この日本て国にも、君みたいな古い神がいたんだ。自分から、閉じこもってしまった神がね」
「私は、神なんかじゃない」
「ん。。。そうだね」
白夜狐は、夜空を、渡り始めた。
「君が気づかない方が、いいんじゃないかと思って、僕は、こうして、送っている。もう二度と、僕らと会わない事を願っているよ」
別れを告げられたようで、犀花は、白夜狐を見上げた。
「いつも、帰れって言う」
「関わらないで、欲しいから」
白夜狐は、犀花を支えていた手をそっと話した。犀花の手が空を掴み、2人の間が、離れていく。
「もう、会わない事を祈るよ」
「どうして?」
「僕が、声を掛けたから、始まった事。今なら、まだ、戻れる。お休み」
犀花の体が、宙に浮き、木立に吸い込まれていく。
「待って!」
犀花は、白夜狐を追おうとするが、木立に阻まれ、追う事ができなかった。
「ナチャ!」
犀花は、叫んだ。今、ナチャは、自分から、離れてどこにいるのか、わからない。それでも、叫ばずにいられなかった。
「どこにいるの?迎えにきて!」
白い糸が、宙に舞、木立が、2つに分かれたかと思うと、紅い目を持つ、ナチャが現れた。
「マスター。どうしたんです?」
「何か。。なんか、悲しい」
「どうしたんす?」
「どうして、私は、こんなに、非力なの。どうして、何もわからないの」
「それは。。」
ナチャの目が悲しく伏せていった。
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