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誰の花嫁?

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桂華は、しばらくして意識を取り戻していた。目の前にいるのが、陸鳳だと思っていたが、陸羽だと気付いたのは、しばらくしてからだった。
「確か、あなたは・・」
何度も、危ない目に会う度に、助けてくれたのは、この人だったのか?薄い緑の瞳が、好奇心に満ちていて、惹きつけられる。
「何度も、ありがとう」
海外に旅行に行ってから、危ない目に何度も遭っている。その都度、彼に助けられた。
「いや・・」
陸羽は、少し、照れた。桂華の前に姿を現すつもりはなかった。遠くから、見守るつもりだったが、海外から妖気を纏って帰国したので、見過ごす事ができなかった。
「あの・・」
桂華は、覚えていないかもしれない。本当は、自分の許嫁として、お披露目される筈だった。あんな事がなければ。兄の陸鳳の方が、桂華に相応しいと誰もが思っていた。が、陸鳳は、帰って来なかった。桂華の気持ちを確認する事もなく、互いに、すれ違い、桂華は、過去を捨てて、杜の都の大学に進学していった。桂華の気持ちが知りたい。
「桂華。聞きたい事がある」
桂華を連れ出した、社から、遠く離れた場所で、聞いた。
「今、こんな事を聞くのは、間違っているかもしれないけど・・」
「お願い」
桂華は、聞いていなかった。
「お願い。希望を助けて」
希望は、桂華の親友で、エルタカーゼに囚われている。
「T国から来た奴らに捕まったままなの」
「どうしても、助けないとダメか?」
「大事な友人なの」
陸羽は、ためらった。陸鳳が犠牲となって、逃げられたのだ、戻って、また、厄介な事に巻き込まれたくない。
「友人なんて、また、作ればいい。今、戻ったら、危険だ」
「そう言う事でなくて」
桂華は、陸羽の瞳をじっと見つめた。
「きっと、あなたに私の気持ちはわからない。似ているけど、違う」
「似ているって、誰に?」
陸羽の心が震えた。陸鳳に似てるけど、やっぱり、あなたは、違う。母親が、人間だからね・・・。よく、幼い日に言われた言葉だ。
「陸鳳に似ているけど、違うって言いたいのか?」
「そうは、言っていないけど」
陸羽の様子に、桂華は、少し、怯んだ。目を伏せ、小さく震えている。
「そう言っているだろう?陸鳳とは、違うって」
「そんな事は、言っていないけど」
桂華は、否定した。
「言っているよ。だけど、お前は、俺の許嫁だったんだ。陸鳳じゃない。どうして、みんな陸鳳ばかり」
「私が、あなたの許嫁?誰も、そんな事は言っていないわ」
「忘れているんだ。記憶を失くしている。君も陸鳳も忘れる事で、逃げているんだ」
「陸鳳?って」
「思いだせよ。山神の陸鳳に逢った時の事を。何に巻き込まれ、あんな深い傷を負わせたのか、思い出してくれ」
「そんなわからない。わからないの」
突然、現れた狼の獣神、陸羽に問い詰められ、桂華は、混乱するのだった。
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