皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

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籠の中の嵐

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青嵐は、風蘭の皇帝服を身に付けると、寝台の上に座した。
「君は、こちらに・・・」
遠慮気味に、風蘭を一段低い位置にある長椅子へと案内した。部屋の隅々は、くまなく浄化した。青嵐の目にも、どこが、怪しいのかは、わからなかったが、風蘭の様子から見えて、どこかに蛟になるきっかけがあった筈だった。青嵐と紗々姫、瑠璃光の霊力で、完全なる蛟化になるのは、防げたが、まだ、完璧でないと瑠璃光は、言った。
「疑わしいのは、術だけではない。術が発動し、人が動く。成徳は、風蘭を最後まで、守る気はないだろう。風蘭を蛟として、打ち取り、自分が、その座に座る気であろう」
真剣な眼差しで、青藍に向き直る。
「いいか?よく聞くんだ。青嵐。寝所を浄化し、風蘭になり澄ますんだ。お前の匂いの着いた衣服を風蘭に着せるといい。蛟は、目が不自由だ。が、鼻が効く。今回の敵は、蛟の大本と。人間だ」
「人間?蛟の反乱軍では?」
「成徳は、利用されたに過ぎない。冥国には、珍しい薬や蔵書も多い。皇宮が襲われれば、宝物庫から、貴重な物が流れ出てしまう」
瑠璃光は、蛟や反乱軍から、風蘭を守れと言った。おそらく、瑠璃光達も、アルタイ国が攻めて来たと言うのは、そのまま、亡き者にしようとする企みで、瑠璃光が亡くならなくても、アルタイ国の王族が傷つけられれば、瑠璃光が責任をとる事になる。まして、冥刻の中であれば、尚更だ。戦さだろうと、階段だろうと、どちらの王族も狙われている。
「ここは、お前にまかた」
青嵐は、泣きそうになった。もう、会えなくなった気がした。
「まだ、泣くのは、早い。全てわかった時に、泣くがいい」
青嵐は、髪を結い、化粧を施した。最後に、紅を差すと、気持ちが落ち着いた。
「中にいて」
風蘭を寝台ごと、結界を張った。その一角だけ、誰からも、見えなくなる。きっと、瑠璃光達は、帰ってくる。それまで、結界が持ち堪えればいい。部屋の中は、どこが原因か、わからないほど、蛟の精でいっぱいだった。成徳は、何度、ここに来ていたのか。少しずつ、風蘭を蝕んでいたに違いない。蛟の痕跡を追いながら、青嵐は、飾り棚の上にある花の挿して無い花瓶に気づいた。
「何だ、これは?」
花のない花瓶なんて?青嵐は、触れてみようと、花瓶の口を持ち上げようとした。
「あ!」
結界の中にいる風蘭が、短く声を上げた様な気がした。壁に掛かった大きな絵画が、横に移動し、地下に降りていく階段が、目に入った。
「どこまで、この皇宮は、隠し部屋があるんだよ」
青嵐は、掌に息を吹き替えると、青白い炎が上がった。降りようと足を踏み出すと、外で、叫ぶ兵士達の声が耳に入った。
「討死にされた。アルタイ国王と国王様が、亡くなられた」
「国王様?って?」
瑠璃光が?そんなバカな?青嵐は、外で、騒ぐ兵士達の声を気にせず、地下へと降りていった。
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