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紗々姫の思惑
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陽の元の国にいるときは、ひっそりと生きていくのが常だった。どこにでも、権力を手にしたい側近はいるようで、幼ないうちに、後妻として迎えられた紗々姫も同じで、権力闘争の道具として扱われていた。心を落ち着かせ慰めてくれたのは、三華の塔の妖達だった。側近の腹黒い臣下達より、妖の者達の方が、欲求に素直に生きており、人を疑う事に慣れていた紗々姫にとっては、信じるに値する存在だった。山河の多い陽の元の国と比べ、草原の国は、視界が広く、何処までも、広く続く空の下で、動ける事が紗々姫にとっては、嬉しかった。初めて、瑠璃光に逢った時、人並外れた容貌に気を惹かれたが、何よりも、自分を特別扱いしない事に、気を引かれた。瑠璃光自身が、半妖という事もあるが、自分の姿をありのまま、さらけ出せる事が楽だった。
「うわぁ!」
紗々姫の姿を見つけた、アルタイ国の兵士が声を上げた。構わず、接近し片足を加えると、恐怖に歪み戦意を喪失している様子なので、草原に投げ放つ。
「化け物!」
言われることに慣れている。自分は、いつしか蛟の化け物になっていた。軍の先頭に立ち、鱗で地を這う。他国にいるせいか、人の目を気にせず、戦える事、瑠璃光の役に立てる事が、紗々姫の闘心を駆り立てた。瑠璃光の様な、龍神にはなれないが、十分に役に立てる。そんな思いが、紗々姫の行動を後押ししていた。だんだんと行動は、エスカレートしていき、もはや、人とは、かけ離れた姿になっていた。口は、耳まで裂け、他の民が見たら、草原に現れた蛇の化け物退治に、軍が出ている様にしか見えない。
「紗々姫様!」
陽の元の軍、将軍 桜丸が紗々姫を嗜めた。
「少しは、抑えてください」
常軌を逸した行動に桜丸は、舌打ちした。
「我々は、あくまでも援軍です。姫様の様子ですと、後からの仕打ちが心配されます」
「妾は、人を殺してはおらぬ」
確かに、紗々姫の姿に、敵軍は逃げ去る兵士が多かった。だが、やはり、草原の兵士だけあって、騎馬術に優れており、何人かのアルタイ国の騎士が、陽の元の軍をすり抜け、冥國へと馬を走らせていた。
「ここを食い止めるには、やはり、討ち取っていかなければ」
桜丸は、騎馬上で弓を構える。桜丸は、瑠璃光に恋慕する紗々姫の為に、国中を探した見目麗しい軍師の1人である。弓の腕前に、右に出る物はおらず、三華の妖達の姿にも、動じなかった。
「元の姿に戻ってください。自分の弱点を晒す事になるのですから」
桜丸に言われて、紗々姫は、おとなしく鎧姿の女戦士の姿に戻った。
「ふん。あれこれとうるさい」
呟く紗々姫と桜丸の前に、地平線が黒く盛り上がってくるのが、見えた。
「来ましたよ。今までの、雑魚達とは、違います」
紗々姫と桜丸は、陣形を取り直し、地平線を黒く塗りつぶす一軍を見つめていた。
「桜丸。ギリギリまでは、我慢するが、人である事を忘れそうだ」
紗々姫が、弓矢を構え始めた。
「うわぁ!」
紗々姫の姿を見つけた、アルタイ国の兵士が声を上げた。構わず、接近し片足を加えると、恐怖に歪み戦意を喪失している様子なので、草原に投げ放つ。
「化け物!」
言われることに慣れている。自分は、いつしか蛟の化け物になっていた。軍の先頭に立ち、鱗で地を這う。他国にいるせいか、人の目を気にせず、戦える事、瑠璃光の役に立てる事が、紗々姫の闘心を駆り立てた。瑠璃光の様な、龍神にはなれないが、十分に役に立てる。そんな思いが、紗々姫の行動を後押ししていた。だんだんと行動は、エスカレートしていき、もはや、人とは、かけ離れた姿になっていた。口は、耳まで裂け、他の民が見たら、草原に現れた蛇の化け物退治に、軍が出ている様にしか見えない。
「紗々姫様!」
陽の元の軍、将軍 桜丸が紗々姫を嗜めた。
「少しは、抑えてください」
常軌を逸した行動に桜丸は、舌打ちした。
「我々は、あくまでも援軍です。姫様の様子ですと、後からの仕打ちが心配されます」
「妾は、人を殺してはおらぬ」
確かに、紗々姫の姿に、敵軍は逃げ去る兵士が多かった。だが、やはり、草原の兵士だけあって、騎馬術に優れており、何人かのアルタイ国の騎士が、陽の元の軍をすり抜け、冥國へと馬を走らせていた。
「ここを食い止めるには、やはり、討ち取っていかなければ」
桜丸は、騎馬上で弓を構える。桜丸は、瑠璃光に恋慕する紗々姫の為に、国中を探した見目麗しい軍師の1人である。弓の腕前に、右に出る物はおらず、三華の妖達の姿にも、動じなかった。
「元の姿に戻ってください。自分の弱点を晒す事になるのですから」
桜丸に言われて、紗々姫は、おとなしく鎧姿の女戦士の姿に戻った。
「ふん。あれこれとうるさい」
呟く紗々姫と桜丸の前に、地平線が黒く盛り上がってくるのが、見えた。
「来ましたよ。今までの、雑魚達とは、違います」
紗々姫と桜丸は、陣形を取り直し、地平線を黒く塗りつぶす一軍を見つめていた。
「桜丸。ギリギリまでは、我慢するが、人である事を忘れそうだ」
紗々姫が、弓矢を構え始めた。
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