57 / 82
陽の元の王妃の名前は、紗々姫
しおりを挟む
紗々姫の機嫌は、最悪な程悪い。目の前で、
「この人なら」
と決めていた瑠璃光は、いかつい男に囚われの身となり、髪を引かれ、頬を汚されている。抵抗できないように、術枷をはめられ、屈辱に染まっている。これも、それも、あの風蘭とかいう、女のせいで。なんでも、瑠璃光の代わりに、男装して皇帝になり座っていたそうだ。こんな馬鹿げた事があろうか?瑠璃光と風蘭の命、どちらが重いか?本物の皇帝と偽物。かたや、本物の龍神だ。この場合、瑠璃光の命を優先するのが先決であろう。皇帝の座に、瑠璃光がつけば、我が国共、友好がうまくいくではないか。紗々姫は、皇族の姫である。確かに、妖ではあるが、列記とした皇女なのだ。以前からは、大陸に進出し、海賊として、海を渡っていた火の元の軍は、紗々姫の命で、海を渡ってきていた。このまま、瑠璃光が、味方ならば、友好を築くつもりだったが、そうではなく、戦いになりそうだった。それでも、構わない。瑠璃光が、女を庇うのなら、このまま、戦うまでだ。
「どうでも、いいけど。瑠璃光。私、イライラするのよ」
胸の前で、両手首を固定され、術を起動できない瑠璃光は、笑った。
「イライラは、いつもの事だろう?」
「じゃなくて!あんな女の為に、こんなばっちい男の言いなりになるなんて、腹が立つ!」
「おっと!」
瑠璃光は、後ろにのけぞり、瑠璃光を背後から抑えていた聚周も、つられる。次第に、怒りが高まってきた紗々姫は、髪の毛先から、変色が始まり、次第に逆立っていく。大きな声で、喚く口元は、耳まで、裂けそうだ。
「どうも、陽の元の国の蛟は、強そうだ。それとも、女性は、また、別なのかな」
成徳は、冗談のつもりだったが、機嫌の悪い紗々姫には、そうは伝わらず、恐ろし顔した紗々姫が、目の前にいた。
「紗々姫!」
紫鳳が止めなければ、紗々姫の首は、伸び放題に伸び、成徳を頭から咥えそうだった。紗々姫の怒りは、止まらない。頭を紗々姫に、咥えられそうになりながら、成徳は、聚周に、アルタイ国の鎮圧を命令するが、聚周は、頑として、聞こうとしない。
「それなら、風蘭を出せば良い」
聚周は、そう言うが、成徳と入れ替わった風蘭は、おそらく皇宮内で、倒れているだろう。護衛をつけて、戦場に出すことも、通常ならできるが、今の状況では無理だ。
「それなら、こいつに行かせれば良いだろう」
聚周の指し示す方向には、紫鳳が立っている。
「紫鳳を出したのでは、後々、厄介な事になる。他国だろう?」
瑠璃光が言う。
「それなら、私が行こう。心配なら、付いてくるがいい」
「人の争いに、首は、挟まないのでは?」
「半分は、人だからな」
瑠璃光は、聚周の顔を覗き込む。
「星暦寮に少しでも、居たならわかるはずだ。我らは、この国の民を守る為に、存在すると。私に認められたいなら、一緒に戦え」
聚周は、瑠璃光に真っ直ぐに見つめられ、心臓が、止まりそうだった。ずっと、前から、こんな風に、真正面から、見つめられたいと思っていた。
「この人なら」
と決めていた瑠璃光は、いかつい男に囚われの身となり、髪を引かれ、頬を汚されている。抵抗できないように、術枷をはめられ、屈辱に染まっている。これも、それも、あの風蘭とかいう、女のせいで。なんでも、瑠璃光の代わりに、男装して皇帝になり座っていたそうだ。こんな馬鹿げた事があろうか?瑠璃光と風蘭の命、どちらが重いか?本物の皇帝と偽物。かたや、本物の龍神だ。この場合、瑠璃光の命を優先するのが先決であろう。皇帝の座に、瑠璃光がつけば、我が国共、友好がうまくいくではないか。紗々姫は、皇族の姫である。確かに、妖ではあるが、列記とした皇女なのだ。以前からは、大陸に進出し、海賊として、海を渡っていた火の元の軍は、紗々姫の命で、海を渡ってきていた。このまま、瑠璃光が、味方ならば、友好を築くつもりだったが、そうではなく、戦いになりそうだった。それでも、構わない。瑠璃光が、女を庇うのなら、このまま、戦うまでだ。
「どうでも、いいけど。瑠璃光。私、イライラするのよ」
胸の前で、両手首を固定され、術を起動できない瑠璃光は、笑った。
「イライラは、いつもの事だろう?」
「じゃなくて!あんな女の為に、こんなばっちい男の言いなりになるなんて、腹が立つ!」
「おっと!」
瑠璃光は、後ろにのけぞり、瑠璃光を背後から抑えていた聚周も、つられる。次第に、怒りが高まってきた紗々姫は、髪の毛先から、変色が始まり、次第に逆立っていく。大きな声で、喚く口元は、耳まで、裂けそうだ。
「どうも、陽の元の国の蛟は、強そうだ。それとも、女性は、また、別なのかな」
成徳は、冗談のつもりだったが、機嫌の悪い紗々姫には、そうは伝わらず、恐ろし顔した紗々姫が、目の前にいた。
「紗々姫!」
紫鳳が止めなければ、紗々姫の首は、伸び放題に伸び、成徳を頭から咥えそうだった。紗々姫の怒りは、止まらない。頭を紗々姫に、咥えられそうになりながら、成徳は、聚周に、アルタイ国の鎮圧を命令するが、聚周は、頑として、聞こうとしない。
「それなら、風蘭を出せば良い」
聚周は、そう言うが、成徳と入れ替わった風蘭は、おそらく皇宮内で、倒れているだろう。護衛をつけて、戦場に出すことも、通常ならできるが、今の状況では無理だ。
「それなら、こいつに行かせれば良いだろう」
聚周の指し示す方向には、紫鳳が立っている。
「紫鳳を出したのでは、後々、厄介な事になる。他国だろう?」
瑠璃光が言う。
「それなら、私が行こう。心配なら、付いてくるがいい」
「人の争いに、首は、挟まないのでは?」
「半分は、人だからな」
瑠璃光は、聚周の顔を覗き込む。
「星暦寮に少しでも、居たならわかるはずだ。我らは、この国の民を守る為に、存在すると。私に認められたいなら、一緒に戦え」
聚周は、瑠璃光に真っ直ぐに見つめられ、心臓が、止まりそうだった。ずっと、前から、こんな風に、真正面から、見つめられたいと思っていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
寒がりな氷結眼鏡魔導士は、七匹のウサギとほっこり令嬢の温もりに癒され、愛を知る
ウサギテイマーTK
恋愛
伯爵家のミーヤは、動物の飼育と編み物が好きな、ちょっとおっとりした女の子である。婚約者のブルーノは、地味なミーヤが気に入らず、ミーヤの義姉ロアナと恋に落ちたため、ミーヤに婚約破棄を言い渡す。その件も含め、実の父親から邸を追い出されたミーヤは、吹雪のため遭難したフィーザを助けることになる。眼鏡をかけた魔導士フィーザは氷結魔法の使い手で、魔導士団の副団長を務まる男だった。ミーヤはフィーザと徐々に心を通わすようになるが、ミーヤを追い出した実家では、不穏な出来事が起こるようになる。ミーヤの隠れた能力は、次第に花開いていく。
☆9月1日にHotランキングに載せていただき感謝です!!
☆「なろう」様にも投稿していますが、こちらは加筆してあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる