皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

文字の大きさ
上 下
47 / 82

生まれながらの穢れなき姫

しおりを挟む
風蘭の着てる衣服を剥ごうとした紗々姫は、ハッとして瑠璃光の顔を見下ろした。
「これは、どういう事?」
衣服を剥がなくても、その体つきを見ればわかる。術に侵された身体からは、鬱々とした邪気が、流れ出ているが、丸みを帯びた体つきや、こんこんと眠り続ける横顔は、どこにでもいる若い娘のそれだった。
「女性」
そう呟くと、振り向いた顔は、怒りに満ちていた。
「じょ・・・・女性が絡んでいた?私がいない間に、女のせいで?死にそうになった」
瑠璃光は首を振った。
「殺すな。まだ、死んでいない」
「だけど・・・この子は」
紗々姫は、言いかけて首を振った。
「長い間、邪気を植え付けられていて、元に戻れないかもしれない」
「その為に、君を呼んだ」
「私でも、できない事はある」
紗々姫は、紫鳳を、床に座るように、手で合図を送ると、背中から幾つもの羽を抜いていった。
「元々、蛟の精は、大陸から来たものと聞いているけど、陽の元の国と、大陸の蛟の対処法が合うか、どうかはわからないの。どこにでも、龍神がいるように、蛟も、存在する。だけど、現れる形が違うように、対処方法は、変わる」
何本か、抜き出した羽の中から、より細く長い物を選び出し、瑠璃光の身体の経絡に沿って、刺していく。
「瑠璃光なら、わかるわね。私の知っている方法は、陽の元のやり方だって」
瑠璃光は、頷いた。
「解毒方を処した漢薬書は、未だ、行方がわからない。対処療法で、やってみるしかない」
紫鳳の羽は、針の様に、瑠璃光の経絡に沿って、刺さっている。
「次に何をするのか、わかる?」
青嵐は、皆の目線が自分に集まったのを感じ、前に進み出た。
「出番か」
「そうだ。。。頼んだぞ、青嵐」
青嵐の操る炎は、勢いはなく、静かに燃え上がる炎だ。掌で、細く渦巻き、天井まで、上がり、やがて、瑠璃光の経絡に刺さった羽根へと燃え移る。激しさは、なく、静かに、燃え上がるというより、氷結していくかのように、羽先から、先端へ。静かに身体の中へと入っていく。
「うっ」
苦しいだろう。瑠璃光は、言葉を発する事なく、表情は、歪んだ。下を向き、堪える姿に耐えきれず、紗々姫は、顔を背ける。
「お前のせいだ」
耳まで、口が裂け、憎々しく、風蘭に向かい呟く。
「何故、こんな目に合わせた」
「紗々姫!」
紫鳳が、怒りをぶつける紗々姫を宥める。
「瑠璃光が選んだ。俺と変わる事も拒んでいる」
瑠璃光の経絡からは、紫の細い煙が上がっていく。額に粒の汗が浮かんだかと、思うと、瑠璃光は力つき、床に倒れてしまった。
「瑠璃光!」
青嵐も紫鳳も慌てて、抱き上げ、寝台に、横にする。
「忌々しい」
風蘭と同じ寝台に横たわるのを、紗々姫は、嫉妬の目で見つめる。
「しばらく、ここで様子を見よう」
紗々姫を宥めるように、紫鳳は、言うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち

鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。 心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。 悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。 辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。 それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。 社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ! 食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて…… 神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...